革小物

皮のなめし方とは?革の性質に影響する「鞣し工程」って一体なに?

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革製品って素晴らしいですよね。

いきなりテンション高めですみません。

革の話をするとテンション高めになってしまう、サイト運営者の一路です。

古くから人類に愛されてきた革ですが、その便利さは現代でも通用するものです。

そんな革の魅力は種々あります。

丈夫さ、しなやかさ、通気性…。

なぜそのような特性が表れるのか…。

ご存知ですか?

その秘密は「皮」から「革」へ生まれ変わるために必要ななめし(鞣し)という処理にあります。

本記事ではなめしとはどんな工程なのか、なめし工程が革にどのような影響を与えるのかを解説しています。

なめしは「皮」を「革」へと変える作業

「なめし」ってそもそも何?

そんなわけで、まずは「なめし」という言葉の解説から見ていきます。

なめしとは以下の通り、作業工程の1つです。

動物の原皮から皮革をつくる工程の一つ。動物の皮はそのままでは腐敗しやすく、水につけると膨張し、乾くと硬い板状になってしまうので、原皮を水洗し、ついている脂肪や肉片を除去し、なめし剤を作用させて、それぞれの利用目的に適するように加工する必要がある。同時に腐敗、脆弱化、油焼け、虫害、かびの発生を防ぐ作業を行う。最も一般的に行われている方法は、タンニン物質 (渋ともいう) を使用するタンニンなめしとクロム化合物を使うクロムなめしである。
※出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

上記を見ると、複雑な工程であることが分かりますが、あえて一言でいえば、

  • 皮を革にする工程

のことをなめしといいます。

というのは原皮のことを指し、皮を動物からいだそのままの状態のものです。

皮は時間がたつと徐々に腐敗が進んだり、性質が変わってしまったりします。

いわば、の状態なのです。

食べ物をイメージしていただければわかりやすいかと思います。

例えば生魚は足が早いですが、干物など、手を加えてあげると長持ちしますよね?

皮も同じ。

そのままではすぐに腐ってしまうをなめすことで、腐らないにしているのです。

なめしの歴史は古く、

  • 天日で干す
  • 草から出る液に漬ける
  • 揉んで叩く
  • 煙でいぶす

など。

人類は様々な工夫をらし、皮から革へと加工してきた歴史があります。

時代が進むにつれ、なめしのメカニズムの科学的理解が深まり、工程の効率化がなされてきました。

現代の「なめし」とは、

  • 「皮」のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ、腐らない物質に変性させて「革」を作り出すこと

であると説明できます。

なめし剤とは、皮などのコラーゲン繊維に作用する薬剤のことをいい、皮のコラーゲン繊維間を化学的に繋げます。

かつ繊維間を充填することによって、コラーゲン線維を安定させる効果があります。

それにより、防腐性を高め、乾燥による硬化や変形の少ない「革」に変化させることができるのです。

なめしの種類

革を作り出すためには、

  • 皮になめし剤を結合させる

ことが必要です。

つまり、なめし剤は革を作る上で非常に重要な成分となります。

重要ななめし剤ですが、複数の種類があり、それぞれ皮繊維との反応の仕方が異なります。

代表的なものを下記に示します。

なめし剤の種類
  • 植物タンニン系なめし剤
  • 鉱物系なめし剤
  • 合成なめし剤

植物タンニン系なめし剤のタンニンとは植物中に含まれる水溶性の化合物で、タンパク質中のコラーゲン(主にペプチドや水酸基)に作用して、結合構造をとります。

鉱物系なめし剤はクロム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩などがあり、中でも最もメジャーどころのなめし剤は硫酸クロムです。

クロム化合物が皮タンパクを構成するコラーゲン(主にカルボキシ基)と結合して皮の繊維構造を安定化させます。

合成なめし剤は植物タンニンの代替品として人工的に開発された背景があります。

スルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物や脂肪族系あるいは合成樹脂系といった、コラーゲンの官能基と反応して皮をなめす作用のあるものです。

これらなめし剤の種類が異なると、コラーゲンとの結合の仕方も異なってくるため、革の性質が異なってくるのです。

そのため、なめし剤の種類によって皮のなめし方法も分類分けされています。

メジャーなのは、タンニンなめし剤を使った、

  • タンニンなめし

クロムなめし剤を使った、

  • クロムなめし

そして、タンニンなめしとクロムなめしを組み合わせた、

  • コンビネーション(コンビ)なめし

が挙げられます。

なめし方法の違いによる革の性質の違い

なめし方法が異なるという事はコラーゲンとなめし剤との反応が異なり、できてくる革の性質もそれぞれの方法で異なってくる、と先ほど述べました。

ここで主ななめし方法による革の性質を見てみましょう。

なめし方法の種類
  • タンニンなめし
  • クロムなめし
  • コンビなめし

タンニンなめし

タンニンなめしで作られた革は繊維同士の結合が安定しているため、非常に丈夫です。

それに加えて、伸びにくく磨耗に強い特性があります。

また、革の繊維間にタンニンが多く含まれているため、太陽光(紫外線)に照らされたり、徐々に酸化することで顕著な色の変化が見られます。

エイジングしやすく、革の風合いをより楽しめる革、ということです。

ヌメ革はタンニンでなめした革を染色せずにそのままの状態にしているもので、余計な染料や顔料が含まれていません。

純粋なタンニンの色味の変化を楽しめるということなんですね。

特に、化学薬品を一切使用せず自然な樹木のタンニンを使った、

  • ベジタブルタンニンなめし

で作られる、

  • バケッタレザー

の風合いは大変素晴らしいものがあります。

クロムなめし

クロムなめしでできた革は柔らかく、伸びが良いという特徴を持ちます。

柔らかいため加工しやすく、また、染色も容易。

広い範囲の革製品で使用されています。

製造コストもタンニンなめしよりも安価であるため、比較的リーズナブルな価格で販売されることが多いです。

汎用性の高い革が作れることが売りの手法。

鉱物を使用しているため、耐熱性もあります。

コンビなめし

コンビなめしとはタンニンなめしとクロムなめしを組み合わせたなめし方法です。

タンニンなめしの風合いとクロムなめしの強度というそれぞれの良い特徴を合わせ持つ革を作れます。

良いとこどりといっても、タンニンなめし単体で仕上げた革の風合いの変化や、クロムなめし単体で仕上げた革の強度にはかないません。

コンビなめしで仕上げた革は、プロフェッショナルというよりはオールラウンダーな性質を持っています。

なめし工程の前後では何をする?

なめしは皮から革へと変えるために必要な作業です。

ただ、なめし工程だけで革が出来上がるわけではありません。

なめしはあくまでも革製法の中間作業。

なめしの前後で作業が発生しています。

この項目で解説しますね。

なめし前の作業

まず、なめし前には、なめしのための準備作業が存在します。

具体的には以下の作業です。

なめし前の作業
  1. 水漬け
  2. 脱毛
  3. 裏打ち

裏打ち後になめし工程へと進むわけですが、皮をなめす前には、はじめに「水漬け」をします。

皮に付いた血液や汚物を取り除く意味を持つ作業です。

その後、石灰乳に漬けてコラーゲン繊維をほぐして毛を取り除く「脱毛」工程へ。

さらには、皮の裏面に付いた肉片や脂肪を除去する「裏打ち」をて、なめし工程へ進んでいくのです。

なめし中の作業

続いて、なめし中の作業。

この工程では、本題のなめしの他に、「シェービング」と「縁断ち」をします。

なめし中の作業
  1. なめし
  2. シェービング
  3. 縁断ち

なめした後は「シェービング」。

シェービングとは革の暑さを調整する作業。

そして、トリミングする「縁断ち」をして、なめし後の工程へ進みます。

なめし後の作業

なめし後の作業
  1. 染色
  2. 水絞り
  3. 乾燥

なめし作業後は革を染める「染色」工程。

ここで革に色を入れます。

その後は「水絞り」で水気を切り、熱風や空気にさらして「乾燥」させます。

乾燥後は、もうひと手間加わる場合があります。

色を乗せたり、ツヤを出したり。

その場合、さらにそれぞれの仕上げを。

そうして革の出来上がり。

原皮から革へ。

複数の工程で成り立ち、それぞれの作業には熟練の職人の方々の匠の技があるのです。

一路
一路
だからこそ、革ってすばらしい!

革の性質の違いはなめし工程から生まれる

本記事では、なめしの工程となめすことで革がどのような状態になるのかについて書きました。

革の性質はもともとの動物の種類だけで決まるわけではなく、原皮をなめす工程も非常に重要な意味を持つものなのです。

  • 経年変化(エイジング)が楽しめるタンニンなめし
  • 丈夫で色の選択肢も多様なクロムなめし
  • タンニンなめしとクロムなめしの良いとこどりのコンビなめし

その他にもなめし方法はまだまだあり、そこから得られる革の性質は種々あります。

それぞれの特徴を知ることで、ますます愛用の革製品を楽しめるような気がしてきませんか?

革の製造工程に興味を持つキッカケになれば幸いです。

それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。

ご覧いただき、ありがとうございました!

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