今回はガラスレザーで作られた革靴のお話です。
ガラスレザーの靴でよく見聞きするのが、
- ひび割れ
が気になるというお悩み。
購入したばかりの新品のガラスレザーの革靴は、ピカピカで革にもハリがあり、とても美しい状態です。
光沢があって高級感と上品さを感じられる佇まいには、ついつい見とれてしまう魅力があります。
そして、意気揚々とその革靴を履いて出かける…。
帰宅して脱いだ革靴にふと目をやると…。
な…、なんと…。
さらにそのシワをよく見ると…。
あれ?
…。
……。
革割れてね?
…。
…大ショック!!
…ということ、ご経験ないでしょうか?
実はこれ、ガラスレザーで作られた革靴では、当然起こることなのです。
ガラスレザーの特性を踏まえれば、避けようがないことを気にしていても精神衛生上、好ましくありません。
それよりも、ガラスレザーの特徴を理解し受け入れた上で、ガラスレザー靴を全力で楽しむことを考えた方がポジティブだと思いませんか?
本記事では、ガラスレザーのひび割れはさほど気にする必要はない理由を綴っていきます。
ガラスレザーの作り方
ガラスレザーの性質を把握するには、作り方を知ることが理解の助けになります。
というわけで、まずはガラスレザーの作り方から説明しますね。
ガラスレザーは以下の手順で作ります。
- 原皮(動物から採取した生の皮)
をなめした後の革をガラスやホーロー加工された鉄板に張り付けて乾燥。
その後、革の表面である銀面を少しだけ削り、その面を合成樹脂でコーティング。
それがガラスレザーです。
表面に樹脂の層が形成された革を、
- ガラスレザー
といいます。
ガラスレザーという名前の由来は、革の乾燥中にガラスを使うため。
ガラスのような見た目の革だから、ということではありませんので注意です。
ガラスレザーは表面に樹脂の膜が張られている革。
そのため、ガラスレザー特有のあのツルっとした質感は革由来のものではなく、樹脂層のものなのです。
- ガラスレザーの性質を理解するための最大のポイントは「樹脂層」
ガラスレザーの特徴
表面に樹脂層があるガラスレザー。
露出しているのが革ではなく樹脂層であるために、他の革種とは異なる性質や特徴があります。
ガラスレザーの特徴は樹脂層の特徴といっても過言ではありません。
- 強い光沢を持つ
- 樹脂層が革を周囲の環境からシャットアウトする
- 割れやすい
これらの特徴について詳しく見ていきます。
強い光沢を持つ
まず、ガラスレザー1つ目の特徴、
- ガラスレザーは強い光沢を持つ
ことです。
銀付き革(いわゆる一般的な革)と異なり、ガラスレザーの表面には樹脂層が形成されています。
光沢の秘密はこの樹脂層です。
「樹脂」というと、少しイメージしづらい人もいるかもしれません。
いわゆる、プラスチックです。
厳密には合成樹脂=プラスチックですが、ほぼ同義なので樹脂=プラスチックとしてお話します。
革の上にプラスチックが塗られているのがガラスレザー。
プラスチックを想像してもらえると分かりやすいですが、ペットボトルやクリアファイルなど、プラスチック製品って光沢があるものも多々ありますよね。
なめらかな表面を持つプラスチックは光を反射しやすく、それが光沢や輝きを放つ原因となります。
そんなプラスチックが革の上に塗られているのですから、ガラスレザーが他の革種では出せない光沢を持っていることは不思議なことでありません。
ガラスレザーの美しい光沢は、樹脂層が光を反射しているためなのです。
樹脂層が革を周囲の環境からシャットアウトする
ガラスレザーの特徴、2つ目は、
- 樹脂層が革を周囲の環境からシャットアウトする
ことです。
簡潔にいえば、樹脂層が革を守る働きをするということ。
樹脂層は空気や水分を通しません。
樹脂からできたレジ袋を頭からかぶると息ができませんよね?
空気を通さない証拠です。
もちろん水も通しません。
つまり、樹脂層の下にある革は、外気と触れることがないのです。
それはつまり、
- 水やホコリが樹脂層を通り越して革に行きつくことがない
ということ。
すべて樹脂層がブロックします。
ガラスレザーは革自体へのダメージが入りにくい革種なのです。
割れやすい
3つ目の特徴として、
- ガラスレザーは割れやすい
ということがあげられます。
本来、革は繊維質であるため柔軟性があり、外から加わる力に対して強いです。
ですが、ガラスレザーの場合、革の上に樹脂層があることでその柔軟性を発揮できない状態となっています。
革自体はしなやかでも、その上の樹脂は固まっている状態。
そのため、何らかの強い力が加わった際に、その力を受け流すことができずにモロに影響を受けてしまいます。
例えば、ガラスレザーを折り曲げたとき、革自体はそのしなやかさで自身をグニャッ
一方で、その上の樹脂層はというと…。
力をまともに受けて割れてしまいます。
ガラスレザーは樹脂層が硬くてもろいことで、割れやすい構造になっているのです。
ガラスレザーの革靴のメリット・デメリット
ガラスレザーの特徴の説明が終わったところで、ここからはガラスレザーで作られた革靴のお話を。
革としては非常に特徴的なガラスレザーですが、そのガラスレザーからできた革靴はとても魅力的。
かつ特殊な特性を持ちます。
当然、メリット・デメリットも存在します。
まずはメリットから見てみましょう。
ガラスレザー靴のメリット
ガラスレザー靴のメリットとしては以下があげられます。
- 見た目が美しい
- 汚れがこびり付きにくい
- 雨の日でも気負わず履くことができる
見た目が美しい
ガラスレザーはそれ自身が放つ光沢によって、革靴全体が輝いて見えます。
その輝きは他の一般的な革種で表現することはできない、非常に強い光沢。
見る者を魅了します。
足元をガラスレザーの靴で彩ることによって、ファッション全体の雰囲気を上品なものへと変えることができるのです。
汚れがこびり付きにくい
ガラスレザーはその表面が樹脂によって覆われているために、汚れが革へたどり着きません。
また、樹脂層自体も水や汚れが浸透しない性質を持つため、汚れが樹脂の上に乗っているだけの状態。
そのため、汚れがこびりつきにくいです。
たとえガラスレザーに汚れが付いたとしても、水を含ませた布地でサッと一拭きしてあげれば、キレイに取り除けることがほとんどです。
雨の日でも気負わず履くことができる
加えて、ガラスレザーは雨の日でも気負わず履けます。
一般的な他の革種の靴の場合、革に水が触れると、その水が革の内部へと浸透。
水シミとなってしまうことがあります。
そうなると、せっかくの革の風合いが台無しに…。
また、水に濡れた革はその水が蒸発する際、革に必要な潤いや油分まで出て行ってしまい、革の乾燥が進みます。
雨の日に革靴を履くことは、革にとって不都合なことが目立つためにためらってしまうものです。
実際に、
というルールを定めている人もいるのでは?
ですが、ガラスレザーの靴であれば表面の樹脂が雨をブロックしてくれます。
そのため、その下の革まで雨水が浸透することがありません。
晴れの日だろうが雨の日だろうが、気負わずに気軽に履ける…。
ガラスレザーの革靴にはそんな魅力があるのです。
ガラスレザー靴のデメリット
反対に、ガラスレザーのデメリットをあげてみます。
- ひび割れが発生しやすく、見映えが悪くなる
- 経年変化(エイジング)が分かりにくい
ひび割れが発生しやすく、見映えが悪くなる
ガラスレザーのデメリット1つ目は、
- ひび割れが発生する
ということ。
先ほど、ガラスレザーの特徴の項目でも説明したように、ガラスレザーの樹脂層は固くて脆いもの。
ガラスレザーを折り曲げたり、強い力をかけた場合、樹脂層が割れてしまうことがあります。
これが靴となると、その影響が顕著に表れます。
人間は歩く際、足のつま先を使って体を前へと押し出します。
そのとき、足の指の付け根部分が曲がりますよね?
革靴を履いているとその足の動きにともなって、革靴の甲部分が曲がります。
曲がった部分に強い力がかかるのです。
一般的な革靴であれば、曲がった部分が革靴の履きジワとして表れ、革靴の味になっていくわけです。
ですが、ガラスレザーの場合は樹脂層があるために、革靴の甲部分に加わった力が樹脂層の割れを引き起こしてしまいます。
割れの程度にもよりますが、割れた樹脂層が光を乱反射してしまうことで、革の風合いが損なわれることに…。
新品の革靴に比べると、見映えが良くない状態となってしまうのです。
気になる人は当然いるでしょう。
経年変化が分かりにくい
また、使用していくうちに革の風合いが変化していく、
- 経年変化(エイジング)
があまり見られず、革の状態が変化していく様子が分かりづらいというのもガラスレザーの性質です。
これはデメリットと感じる人、感じられない人、双方いるでしょうね。
個人的に、経年変化は革の楽しみ方の1つですが、この記事ではデメリットとしてあげました。
やはり、これも樹脂層が影響しています。
革の風合いの変化は光や湿気、油分など周囲の環境に触れることで徐々に起こるもの。
ですが、ガラスレザーの場合、革の上に樹脂の膜があるため、周囲の環境から遮断されています。
そのため、革の変化が起きにくいというわけなんです。
ガラスレザーは樹脂自体に着色されている場合もあるので、視覚的にもその下の革の状態を把握しづらいということも関係しています。
革の状態が変わらないことが良いことと捉えるか、悪いことと捉えるかはあなた次第です。
ガラスレザーの革靴は割れる?それは経年変化です
遅くなりましたが、いよいよここからが本題。
冒頭で述べた、
- ガラスレザーの革靴の割れが気になる
というお悩み。
ガラスレザーの特徴を理解すれば、それがごく自然のことなのだとお分かりかと。
現に、僕が普段履いているコールハーンのペニーローファー。
これもガラスレザーの靴ですが、甲部分は履きジワが入るとともに、樹脂割れを起こしています。
サイドの履きジワもこのように。
右足の靴の外側の図です。
くっきりと縦にラインが入っていますね。
左足の方も。
いくつか縦にガッツリとシワのラインが入り、樹脂層割れが見られます。
細かいシワもちょこちょこ入っていますね。
ガラスレザーの革靴は履いていれば割れるものです。
特に、負荷がかかりやすい、つま先の付け根部分の甲革は割れて当然。
避けようがありません。
ガラスレザーの革靴を履いていて、
- 必然的に起こる現象のひび割れを気にしていてもしょうがない
とは思いませんか?
もちろん、革靴が折れ曲がらないようにそろりそろりと歩けば、ひび割れを抑えることができるかもしれません。
でも、こう思うのです。
- それって楽しいですか?
- 革靴を履く楽しみや気分の高揚を存分に味わえていますか?
と。
恐らく僕だったら、その革靴を心底楽しむことはできないです。
僕にとって、革靴は日常をより楽しむための糧というか、日々の生活に彩りと刺激を与えてくれる起爆剤のようなもの。
いわば、
- 心の栄養
です。
革靴のひび割れを気にして、その革靴を楽しめないことはもったいないです。
ガラスレザーの革靴はヒビ割れるものと受け入れた上で、ガラスレザーを思う存分楽しむほうが精神衛生的に良いのでは、と思うわけですよ。
ひび割れを起こすデメリットを補って余りある魅力がガラスレザー靴にはあると感じています。
注意!ガラスレザー靴のケアは怠るべからず
ただ、ガラスレザー靴は割れるということを受け入れたからといって、何のケアもせずにガシガシ履いていると、靴の寿命を縮める原因となってしまいます。
いくらガラスレザー靴が樹脂層に保護されているからといっても、他の革種の靴と同様にお手入れは必要です。
というのも、ガラスレザーの樹脂層が割れると、その下にある革が露出しますよね。
その状態で、例えば雨に濡れたりすると、どうなるでしょうか?
割れた樹脂の隙間から雨水が入り込み、下の革が濡れます。
先ほど、濡れた革はそれが乾く時に革の潤いや油分が抜け、濡れる前以上に乾燥が進んでしまうと述べました。
乾燥が進んだ革はしなやかさが失われ、革自体のひび割れや破れが発生しやすくなります。
つまり、樹脂層が割れるだけでなく、その下の革まで破れてしまう可能性があるのです。
大部分が樹脂に覆われているため、革への悪影響は小さいものと感じがち。
ですが、革靴を履いていくうち、確実に革へのダメージが蓄積されていきます。
そして、最終的には革自体が破れてしまう…。
上記の悲劇からガラスレザー靴を守るために、定期的なケアで靴の保革をしてあげる必要があるのです。
ガラスレザーとはいえ、革。
定期的な靴磨きで革への栄養を補給してあげるのは、他の革靴と何ら違いはありません。
お手入れはしっかりするのが吉。
汚れを落として靴クリームを塗れば、ガラスレザーであってもきれいに履けます。
愛着もわきますから、末永く履き続けたいならケアするのがおすすめです。
割れても良いじゃん!経年変化を楽しもう
本記事はガラスレザーのひび割れについて詳細と付き合い方を書きました。
この記事で最も伝えたいことは、
- 割れても良いじゃないですか
- 革靴ライフを心底楽しみましょうよ
ということです。
飾って眺めるという楽しみ方もありますが、やはり靴ですから履いてナンボ。
そう考えれば、もっともっとその靴を好きになれるはず。
今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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