山羊毛ブラシ、使ってますか?
靴磨きにブラシはつきもの。
革靴に付いたホコリを落とすのに適した馬毛ブラシ。
靴クリームを塗り広げるのが得意な豚毛ブラシ。
それぞれの毛の特性によって、ブラシを使い分けることも、靴を磨く際には意識すべきことです。
山羊毛ブラシも靴磨きの幅を広げてくれる大事な道具。
山羊の毛は馬や豚に比べてとても細く、また、柔らかいのが特徴。
繊細な山羊毛は革靴に塗られた靴クリームや、ワックスの表面をミクロなレベルで均一にすることができます。
そのため、靴磨きの仕上げとして、靴に光沢を与える用途に使われることが多いブラシです。
そんな山羊毛ブラシですが、巷では「使っても靴が光らない」という声も度々聞こえてきます。
それもそのはず。
山羊毛ブラシは使い込むことでその真価を発揮するブラシなのです。
購入したばかりの山羊毛ブラシでブラッシングしても、光らないことはあります。
むしろ逆に、輝きが曇ってしまうことも…。
ただ、革靴が輝かないからといって、そこで見切りをつけるにはまだ早いです。
山羊毛ブラシを靴磨きで何度も使っていると、徐々に光沢を与えられるようになってきます。
これを俗にブラシが育つと表現するわけです。
本記事では「育った」ブラシがどれだけ革靴を光らせる効果があるのかを紹介します。
山羊毛ブラシの効果
靴磨きにおいて、山羊毛ブラシの役割とは革靴の表面を整えてツヤや光沢を与えるというものです。
山羊毛は毛先が細く、柔らかい特徴を持っています。
また、1本1本が細いため、高密度に毛を密集させることができるのです。
靴磨きで使用する馬毛や豚毛よりも繊細であるため、革靴上のクリームやワックスなどを均一にならす効果があります。
山羊毛ブラシでブラッシングすると革靴がみずみずしい輝きを放つのは、
- 山羊の細やかで繊細な毛によって革靴の表面がより平滑になるから
なのですね。
ブラシが育つってどういうこと?
革靴に光沢を与えられる山羊毛ブラシですが、こんな声も…。
- 効果が感じられない
- 輝かない
- むしろ光沢がなくなる
光沢を出すために山羊毛でブラッシングしているのに、逆に光沢がなくなるということは僕も体験しています。
それはなぜなのか。
大きな原因は、
- 山羊毛のブラッシング跡が付いてしまうから
です。
革に山羊毛の跡が付いてしまう
購入したばかりの山羊毛ブラシ靴をブラッシングすると、山羊毛の跡が付いてしまうことがあります。
それが、ブラッシングすると逆に光沢が失われてしまうことの正体です。
つまり、ブラッシングすることで革面を均一にするどころか、よりでこぼこした状態にしてしまっているということ。
購入したばかりで毛先がまっさらな状態の山羊毛は、革面を均一にする力があまりないのです。
というのも、まっさらな毛先は革靴に乗っている靴クリームやワックスを吸収してしまいます。
それにより、ブラッシングすると毛先の跡が付くというわけ。
ですが、ここで、
- ブラシが育つ
という概念が登場します。
ブラシは「育つ」
ブラシが「育つ」というのは、ブラシの毛先に靴クリームやワックスの油分が付着した状態になっていくことを指します。
育つのは何も山羊毛ブラシだけでなく、馬毛ブラシや豚毛ブラシもそうです。
ですが、山羊毛ブラシは毛が細く密集しているため、油分が付く影響が馬毛や豚毛よりも大きいのです。
山羊毛ブラシで「育つ」という表現が多用されるのは、毛先に油分が付く影響や効果が大きいため。
つまり、購入したばかりの山羊毛ブラシでツヤが出なかったとしても、そのブラシを使い込むことによって徐々に「育って」いき、光沢が出せるブラシに成長していくということなのです。
育った山羊毛ブラシで靴に光沢を与える
僕はある程度の期間にわたって使い込んだ、いわゆる「育った」山羊毛ブラシを2本所有しています。
- ブートブラックのフィニッシングブラシ
- ハンズ×コロンブスのデリケートブラシ
これらの山羊毛ブラシを使って革靴をブラッシングし、靴がどのような変化をするのかを確認していきます。
各ブラシの現在の状態と、ブラッシングの様子を一緒に見ていきましょう。
ブートブラックのフィニッシングブラシ
まずはブートブラック(Boot Black)のフィニッシングブラシから。
持ち手は高級感のあるヒノキ。
毛がびっしりと植えられています。
今回、フィニッシングブラシは山羊毛ブラシとして紹介していますが、実は上質な「山羊の産毛」と「馬の尾先」を1:1の割合で混ぜた混合毛。
山羊の産毛は柔らかすぎるため、馬毛を混ぜて靴磨きに適したコシを与えているのです。
それにより、柔らかさと適度なコシを生み出してます。
毛先を見てみると…
毛先に着色が見られますね。
靴磨きの際には毎回のように使っているので、毛先に靴クリームやワックスが付着しているのです。
購入してから9か月程度たち、だいぶ育ってきました。
そんなフィニッシングブラシの効果検証として、ブラッシングするのはこちらの革靴。
オールデンのコードバン靴です。
品番は975、ロングウィングチップ。
コードバンだけに、山羊毛でブラッシングする前から上品な光沢が現れています。
この靴を、育ったフィニッシングブラシでブラッシングするとどうなるのか、見ていきましょう。
早速、ブラシに少量の水を付けて…
力をかけず、円を描くように優しくブラッシングします。
ブラシに水を付けるのは、革靴上の靴クリームやブラシに付着したクリームを伸ばしやすくするため。
革靴表面を均一に仕上げやすくする狙いがあります。
フィニッシングブラシでブラッシングした後の革靴はこのような仕上がりに。
サイドショット。
トゥ部分も。
ブラッシング前後での状態比較をしてみます。
ブラッシング後(アフター)では革靴の光沢がより深くなっているのが分かります。
山羊毛ブラシでブラッシングすることで、輝きがヌラリとした質感を帯び、より上品な印象へと昇華しました。
画像だとどうしても肉眼の印象とは変わってしまいますが、実際に見るとブラッシング前後での変化は明らかです。
ハンズ×コロンブスのデリケートブラシ
僕が所持するもう1本のブラシはこちら。
ハンズとコロンブスがコラボレートして生まれた、デリケートブラシです。
山羊毛100%。
持ち手はブナでできています。
ブートブラックのフィニッシングブラシを購入してからというもの、めっきり出番が減ってしまった古参ブラシですが、育ち方は十分。
何せ、4年間ほど使い倒した山羊毛ブラシ。
毛先も黒ずみ、往年の靴クリームやワックスが付着しています。
さぁ、そして磨くのはこちらの革靴。
シェットランドフォックスのウィンストン。
こちらもコードバンの美しい光沢が魅力的な靴です。
まずはブラッシング前の状態を確認しておきます。
つま先に装飾がないプレーントゥの革靴なので、光沢の変化が見やすい靴です。
山羊毛ブラシを使った後にどうなるか、検証。
先ほどと同様、山羊毛ブラシに水を付けます。
そしてブラッシング。
くどいですが、優しく・円を描くように。
革表面を均一にならすようなイメージで。
ブラッシング後の革靴はこのようになりました。
良い感じに光沢が出ましたね。
こちらの靴でも山羊毛ブラシでのブラッシング前後の状態比較をしてみます。
トゥ部分の比較画像が分かりやすいですね。
ツヤが増しました。
プレーントゥであることが幸いして、ツヤの変化をより感じられます。
ツヤもみずみずしく、あたかも革が濡れたような質感になっています。
山羊毛ブラシで革靴に光沢を与えよう!
本記事では山羊毛ブラシの効果を確認すべく、実際に「育った」山羊毛ブラシで革靴をブラッシングした様子を紹介しました。
購入したばかりの山羊毛ブラシは正直、
と思ってしまうくらい、ツヤが出ないことがあります。
でもそれは、山羊毛が育っていないだけ。
使い込むことで、徐々に山羊毛ブラシは真の実力を発揮してきます。
とすぐに使うのをやめてしまうのではなく、根気強く使いづ付けることが大事。
山羊毛ブラシを育成する気持ちで使っていれば、必ずブラシは応えてくれます。
美しくみずみずしいツヤを革へ提供。
育った山羊毛ブラシがあれば靴磨きの幅が広がり、より楽しく靴を磨くことができますよ。
ぜひ使い込んでみてください。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。