馬のお尻の革であるコードバン。
革を削り出す工程が宝石と似ていることから「革の宝石」とも呼ばれ、その美しさも宝石に勝るとも劣らない佇まいを持っています。
美しく深いツヤがコードバンの魅力の一つ。
その美しさゆえに愛好家が多く、靴や財布などコードバンが使われた沢山の製品が世に出回っています。
一方で、コードバンは繊細であり、水シミや傷ができやすい革でもあります。
そういった革のトラブルを防いだり、リカバリーするために、普段のお手入れや「靴磨き」が大事になってきます。
今回も定期的な靴磨きを行ったのですが、靴クリームの一種である「アーティストパレット」でコードバンを磨いたら、ほんの短時間でビカビカのツヤが出て驚きました。
その驚きをお伝えしたいと思います。
コードバンの革靴を紹介
今回、靴磨きの対象となるのはこちらの革靴です。
「シェットランドフォックス(SHETLAND FOX)」の「ウィンストン(Winston)」という靴です。
シェットランドフォックスは、リーガルコーポレーションが展開するブランドの一つで、世界で通じる高級自社ブランドとして立ち上がったのだそう。
シェットランドフォックスの革靴の特長として、日本人の足形を蓄積したデータやこれまでの経験から分析し、靴の外見からではわかりにくい「リーガルコーポレーションならではの仕掛け」を盛り込んでいることがあります。
それによって、フィッティングと履き心地の良さを高い次元で実現することを可能にしているブランドがシェットランドフォックス。
そして、シェットランドフォックスの革靴ラインナップの中にあって、馬革である「コードバン」を使用した革靴がウィンストンなのです。
この「ウィンストン」、革への染色をコードバン本来のナチュラルな表情と風合いを活かした「水染め」で行っているため、独特のツヤ感があり、とても美しいです。
コードバンはカーフなどの牛革とは異なったシワの入り方をするので、履きこんでいくと牛革の靴とはまた異なった経年変化が楽しめます。
靴クリーム「アーティストパレット」
そして、このコードバン靴を磨く際に使う靴クリーム。
それがこちら。
「ブートブラック(Boot Black)」の「アーティストパレット」。
このブログではちょいちょい登場している油性の靴クリームです。
アーティストパレットの特長として、油分が主成分の「油性クリーム」であるという事があります。
革に浸透するというよりも、革の上にとどまることで革靴の光沢を引き立てるのが油性クリーム。
これから磨こうとしている靴はコードバンです。
コードバンは水に弱い特徴があるので、水を含まない油性クリームは相性バッチリ!
油性クリームは、水分が多めの乳化性クリームに比べて伸ばしにくいことが多いのですが、アーティストパレットは伸びが良いアルガンオイルが配合されているため、使いやすいさも抜群です。
アルガンオイルは度々、高級化粧品にも使われることからもお分かりのように、抗酸化作用と保革効果も持っています。
アーティストパレットには20種類の色のバリエーションがありますが、今回使用するのは無色である「ナチュラル」です。
アーティストパレットに限ったことではないですが、無色のクリームはどんな色の革靴にも使い回せるので持っておいて損はありませんよ。
今回はこのアーティストパレットのナチュラルを使って靴磨きをしていきます。
実践:コードバン靴を磨く手順
ここからはコードバンの靴を磨く手順を、実際に行いながらご説明していきます。
ここでは以下の手順で磨くこととします。
- ホコリ落とし
- 汚れ落とし
- コードバンの繊維を寝かせる
- アーティストパレットを革靴へ塗る
- アーティストパレットを革へ馴染ませる
- 磨き上げてツヤ出し
通常の靴磨きの工程とほぼ変わりませんね。
靴クリームにアーティストパレットを使うところが異なる点です。
ホコリ落とし
まずはホコリ落としから。
馬毛ブラシでブラッシングすることで革靴に付いたホコリやチリ、砂を落とします。
馬毛ブラシは毛が柔らかく、ホコリを優しく落とすことができます。
ホコリは革の油分を奪ってしまう大敵。
汚れ落とし
続いて、靴に付いた汚れを靴クリーナーで落とします。
使用するのはサフィールノワール(SAPHIR NOIR)の「レザーバームローション」です。
レザーバームローションはスムースレザー全般に使用できる保革ローションです。
蜜ロウ(ビーズワックス)ベースのクリームで、汚れを落としながら栄養成分が皮革に浸透して柔軟性を保ち、劣化やひび割れから皮革を守ることができます。
効果からもお分かりの通り、これ一つで汚れ落としから保革までカバーできるため、ぶっちゃけ、これ一つで靴磨きを完結できます。
ですが、より強いツヤや光沢を出したい場合は別途、靴クリームやシューワックスでさらに磨き上げると良いです。
使い方としては、レザーバームローションをクロスに取って靴を拭きます。
アッパー(甲革)全体を満遍なく拭きます。
靴ひもを外して行うと、なお良しです。
レザーバームローションは一度に大量に出さず、少量ずつ様子を見ながらローションが足りないと思ったら継ぎ足して使うようにしましょう。
コードバンの繊維を寝かせる
次はコードバンの靴を磨くときに行う、少し特殊な作業を行います。
コードバンに力を加えて革の繊維を寝かせる工程です。
コードバンは、革の繊維を無理やり押し込んで繊維を強制的に寝かせている革。
だからこそ「宝石」とまで表現されるような美しいツヤを放つわけですが…。
無理やり繊維を寝かせているため、水に濡れたり、何らかの刺激が革へ加わると、その繊維が毛羽立ってくることがあります。
そうすると、水染みのような跡が革にできてしまうのです。
それを解消するためにコードバンに力を加えて、再度、革の繊維を寝かせます。
使用するのはアビィ・レザースティックという水牛の角で作られたスティック。
スティックを使ってコードバンを押し込むように擦ることで繊維を寝かせていきます。
クリームで革の繊維を柔らかくした後なので、繊維を寝かせる効果をより高めることができます。
水牛の角を使う理由としては、表面がものすごく滑らかで、繊細なコードバンの革を傷つけずに力を加えられるため。
ただし、アビィ・レザースティックは価格が結構高め…。
気軽に手が出せる金額ではないと個人的には感じています。
ですが心配ご無用。
表面が滑らかな代用品として「かっさ棒」があります。
スティックで甲革を全体的に擦った後の革靴の様子がこちら。
表面を擦った跡が見えますが、心配はありません。
靴クリームを塗って磨き上げることで、この擦り跡は完全に消えます。
アーティストパレットを革靴へ塗る
続いて、いよいよアーティストパレットの登場です。
靴クリームをコードバンへと塗って保革とツヤ出しのベースづくりを行います。
クリーム塗布用ブラシにアーティストパレットを取りまして…
革靴のアッパーへと塗り込みます。
塗布用ブラシを使うと靴の隅々までクリームを塗ることができるのでおススメです。
指では塗りにくいコバ部分へもスイスイ塗れます。
クリーム瓶の裏側にはアーティストパレットの正式な使用方法として、指で塗るということが記載されていますが、僕の場合、気分次第で指で塗ったり、今回のようにブラシで塗ったり…。
アーティストパレットを革へなじませる
靴クリームを塗った後は、そのクリームをより革へと馴染ませるためにブラッシングします。
ブラッシングすることで先ほど塗った靴クリームを除去すると同時に、クリームを革靴全体へと均一に塗り広げることができます。
使用するのは馬毛ブラシです。
通常、靴クリームを馴染ませるためのブラシには豚毛を使うのですが、コードバンは繊細な革。
比較的柔らかな馬毛でブラッシングすることでコードバンが傷ついてしまうことを防ぐことができます。
磨き上げてツヤ出し
ここが最後の工程です。
山羊毛ブラシで革靴を磨き上げ、革にツヤを出します。
クロスで磨く方法もありますが、今回はアーティストパレットのツヤ出し効果を最大限活かすため、山羊毛ブラシだけで仕上げてみます。
クロスを使うとクロスがクリームを吸い取ってしまいますが、あえて山羊毛ブラシを使うことである程度アーティストパレットを革の上に残します。
それによって、革靴がどのように仕上がるかを見てみようと思うのです。
山羊毛ブラシはブートブラックのフィニッシングブラシを使用。
まずはハンドラップでブラシにごく少量の水を付けます。
ブラシに水を付けるのは靴クリームをより均一に伸ばしやすいようにするため。
シューワックスで磨き上げるときと同じ理由です。
水を付けたブラシで靴をブラッシングしていきましょう。
円を描くようにクルクルと優しくブラシ掛けします。
水を付けすぎると、コードバンの革が毛羽立ってしまうことがあります。
ブラシに付ける水の量は1、2滴の水で充分です。
ブラッシングを続けていくと、1分もしないうちに革靴が輝いていきます。
これにて靴磨きは終了です。
ツヤの出方が半端じゃない!
では、肝心のコードバン靴の仕上がりを見てみましょう。
靴磨きによって、このようになりました。
この光沢感はアーティストパレットならではです。
シューワックスで磨きあげたわけではないのにも関わらずこのツヤ感、圧巻です。
かといって、鏡面のように明らかな光沢ではなく、あくまで自然に。
近くで見るとそれが良く分かります。
いつも通りの靴磨きの工程、いつも使っている靴クリームをアーティストパレットに置き換えるだけでこれほど上品な輝きを手に入れることができました。
コードバンはもともと光沢があるとはいえ、これまで以上にツヤ感が増したのはアーティストパレットの力だと思います。
しかも、短時間で。
シューワックスで磨き上げるときとは所要時間が全然違います。
靴磨きに驚きと楽しさ、そして時間的余裕を与えてくれる…。
コードバン×アーティストパレット=「圧倒的ツヤ感」
今回はコードバンの革靴であるシェットランドフォックスのウィンストンをアーティストパレットで磨く様子を紹介しました。
本来、美しい光沢があるコードバンですが、油性クリームであるアーティストパレットで磨くことで、その美しさにより磨きをかけることができます。
コードバンとアーティストパレットが交われば、
- 「ツヤ」×「ツヤ」=「圧倒的ツヤ」
が生み出されます。
おまけに鏡面磨きとは異なり、時間をかけずに短時間でそのツヤを楽しめるのです。
- コードバンをより輝かせたいけど鏡面のようにはしたくない
- 革靴全体に控えめなツヤを与えたい
- 忙しくて靴磨きに時間を取れないけどツヤは出したい
そんな人は是非ともお試しを。
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。