靴用ワックスでの鏡面磨き、されますでしょうか?
革靴にワックスの層をつくり、通常では得られない光沢を靴に与える「鏡面磨き」。
その光沢を作り上げた達成感と、革靴がいつもと違う表情で輝いている様を見たときの幸福感…。
筆舌に尽くしがたい魔性の体験、これを味わってしまったが最後。
靴磨きの世界から抜け出すことはできなくなります(体験談)。
それほど素晴らしい鏡面磨きの世界ですが、革靴を常に鏡面仕上げに保っているというわけにもいきません。
ワックスの層は革への栄養補給を阻害してしまうので、定期的な鏡面落としが必要です。
また、お葬式への出席時などTPOによって鏡面仕上げが不適切な場面もあります。
はたまた、「今日は鏡面の気分じゃないな、革靴の表情を変えたい」と思う日もあるでしょう。
そういったときに鏡面仕上げを落とすということが必要になります。
ということで本記事では、鏡面落としを行うための便利グッズである「ハイシャインクリーナー」を使ってみた様子をご紹介しています。
鏡面仕上げを落とさなければいけない理由
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
それにはいくつかの理由があります。
鏡面仕上げを落とす理由について、僕が思い当たるところを挙げてみますと…、
- 水分・油分の補給阻害効果がある
- 華美な仕上げが不適切な場面がある
- 鏡面仕上げに飽きたから革靴の表情を変えたい
3つ目に関しては気分の問題なのであまり緊急性は高くないです。
しかし一つ目と二つ目に関して
- 水分・油分の補給阻害効果がある
- 華美な仕上げが不適切な場面がある
というのは気を付けるべき、とても重要なポイントです。
水分・油分の補給阻害効果がある
まず一つ目、革への「水分・油分補給阻害効果」について。
鏡面磨きでワックスの層を革靴の表面に形成すると、輝きが出て見た目が大変美しくなります。
その一方で、いわゆる「革の呼吸」を阻害するということが生じます。
「革の呼吸」というのは、革への水分の出入りのこと。
革に適度な水分は必須。
革の性質として、適度な水分が含まれていると柔軟性が与えられ、革自体の強度が高まるという点があります。
逆に、水分が多すぎるとカビの原因に、少なすぎると革の乾燥によるひび割れが起きてしまいます。
鏡面磨きによって靴表面に乗せられたワックス層は、革の水分調節機能を阻害してしまうのです。
また、ワックス層が革表面に形成されていることで、靴クリームを塗った時に油分がワックス層に邪魔されて革へ行き届かないということも起こってしまうのです。
華美な仕上げが不適切な場面がある
TPO(時間・場所、場面)によって、鏡面仕上げが不適切な場面もあります。
僕が思い当たるところで言いますと、お葬式です。
お葬式は故人を弔う厳かな場。
そういった場では、鏡面にしたピカピカの革靴を履くのではなく、礼節をわきまえて目立たない靴を履く・華美な服装は避けることが筋だと思います。
TPOに適した履き方を心掛ければ革靴ライフはより充実したものになるのではないかと、個人的には思います。
鏡面仕上げに飽きたから革靴の表情を変えたい
3つ目は、「鏡面に飽きたからここらでいっちょ、革靴の雰囲気を変えてみるか!」、というとき。
要は、気分を変えたいときに鏡面落としを行います。
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。
でも、マンネリを避けるためには大事なこと。
たまには気分を変えて鏡面を落とせば、革靴がこれまでと違った表情を見せてくれます。
その靴を履くのが楽しみになりますよね。
鏡面を落とすのは大変…そんなときは!
しかし、そうはいっても鏡面を落とすのって結構大変です。
ワックスの層が厚ければなおさら。
一般的な「靴用クリーナー」と呼ばれるもの、代表的なステインリムーバーなどの汚れ落とし溶液ではワックスの層を除去するのにはかなりの時間を要します。
…っていう方もいらっしゃるでしょう。
少なくとも僕はそう思います。
でも、今の世の中、ホント便利なんですね〜。
それがこちら。
ブートブラック(Boot Black)の「ハイシャインクリーナー」。
その名の通り、鏡面仕上げのワックス層を除去するために作られたクリーナーです。
成分は有機溶剤とロウ。
油性のクリーナーなので水性クリーナーとは違った効果を発揮します。
ワックス層はロウ、つまり油性の成分です。
油性のワックス層を水性クリーナーで落とそうとしてもなかなか落ちません。
何故なら、油は水に溶けないからです。
油性のワックス層には油性のクリーナーで対処することが必要。
油性であるハイシャインクリーナーは、油性のロウを溶かしこむことでワックス層を除去する、というわけなんです。
ハイシャインクリーナーでワックスを落とします!
今回、鏡面仕上げのワックス層を除去したいのがこちらの靴。
カステルバジャック(CASTELBAJAC)のレザースニーカーです。
かれこれ5年以上前に購入した靴で、かかとの補修など行いながら履き続けている愛着の強い一足。
スニーカーといえども、レザーですので鏡面仕上げをほどこしています。
光を反射しているのがおわかりでしょうか。
傷が多いのはご容赦ください。
鏡面にしているのですがそろそろ気分を変えて、「よりカジュアルに履きたい」。
そう思ってきましたので、鏡面を落としてカジュアルダウンさせようと思います。
工程は以下の通り。
- ホコリ落とし
- ハイシャインクリーナーでワックス落とし
- クロスで拭き上げ
ホコリ落とし
まずは靴紐を外してホコリ落としです。
鏡面にしている部分だけでいいかなぁ、と思いつつも全体をブラッシングしました。
お手入れ、楽しいので。
タンの細かな隙間もついでにホコリを落としてしまいます。
ハイシャインクリーナーでワックス落とし
続いて、今回の主役の登場。
ハイシャインクリーナーを使ってワックスを落とします。
ハイシャインクリーナーを少量、クロスに取って…
ワックスを乗せている箇所に塗っていきます。
鏡面仕上げ時と同じように力を加えず、円を描くようにクロスを滑らせる感じです。
ハイシャインクリーナーにワックスを溶かし込んでいくイメージを持つとやりやすいと思います。
この靴はつま先だけでなく、かかと部分にも鏡面仕上げをほどこしていますので、そちらも同じようにハイシャインクリーナーでワックス落としを行いました。
左足(画面向かって右側)のみハイシャインクリーナを使った図です。
つま先のツヤが明らかに違っているのがわかります。
ハイシャインクリーナー、効果絶大です。
ちなみにワックスの層が厚いと、一度の拭き上げでは完全にはワックスが落としきれないこともあります。
そんな時は、ワックスが落ちるまで数回に分けてクリーナー掛けを行いましょう。
両足ともハイシャインクリーナーでワックスを落としたら、次の工程に進みます。
クロスで拭き上げ
仕上げにクロスで拭き上げて、ハイシャインクリーナーとそれに溶け込んだ古いワックスをクロスで拭き取ります。
最後に靴ひもを付けたら…
完成。
つま先のツヤが消えているのがわかりますでしょうか?
かといって、乾燥している状態とはまた違う、革の控えめな輝き…。
思わずウットリしてしまいます。
お手入れした箇所を拡大して見てみます。
ワックスのツヤではなく、革そのもののツヤが現れていて、これまでとは違った表情を見せてくれました。
といっても、とても簡単な工程でしたけどね。
ハイシャインクリーナーは簡単にワックスを落とせる!
鏡面に仕上げた革靴のワックス層をハイシャインクリーナーで簡単に落とす手法をご紹介しました。
最後にハイシャインクリーナー使用前後での比較画像を見てみます。
並べてみると全然違いますね。
どちらも違った革の表情を見せてくれて甲乙つけがたいです。
これからも鏡面仕上げと革本来の銀面、どちらも楽しんでいきたいと改めて感じました。
ハイシャインクリーナーはとてもお手軽に鏡面を落とすことができるため、これからも大活躍してくれることでしょう。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました。
それでは!
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大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。