ハイシャイン(鏡面)仕上げは、革靴を鏡のような光沢を放つ美しい状態にする手法です。
ハイシャイン仕上げを施した革靴はエレガントな雰囲気をまとい、ワンランク上の装いに。
手間はかかるものの、磨き上げられたピカピカの革靴を見るとそれ以上の満足感が得られます。
ハイシャイン仕上げは、革の上に滑らかなワックスの層が形成されることで光を反射しやすくなり、それが強い光沢を生み出しています。
ただ、そこで問題が2つほど。
靴の上に作られたワックスの層は割れたり、傷が入ってしまうことがあります。
そうなると、せっかくの美しさが台無し。
また、革に栄養補給を行うとき、ワックスの層が保革クリームの革への浸透を妨げてしまいます。
ワックスが保革の邪魔をしてしまうのです。
そのため、ハイシャイン仕上げは定期的に落として革をスッピンの状態に戻してあげることが重要になってきます。
ですが、ハイシャイン仕上げのワックス層は落とそうとしてもなかなか頑固。
通常の靴クリーナーで落とすことは無理ではないにしろ、相当な手間がかかります。
そこでハイシャイン仕上げを落とすための道具が必要になるわけです。
ハイシャイン落とし専用のクリーナーや強力な洗浄作用を持つリムーバー、油性の靴クリームなどを活用すれば、簡単にハイシャイン仕上げのワックスを落とせます。
本記事では鏡面仕上げを効率良く簡単に落とせる道具5点を紹介します。
アイテム名 | 特徴 |
ハイシャインクリーナー |
ペースト状でしっかりとハイシャイン層に乗り作用する |
ワックスクリーナー |
液状で使いやすい |
レノマットリムーバー |
カビ取りにも応用可能 |
ナチュラルクリーナー |
天然成分のみ配合で革への負担が少ない |
クレム1925 |
ワックス落としにも使える靴クリーム |
いずれも優秀なワックス除去効果を持つケアアイテムです。
ハイシャイン仕上げを落とす必要性
革靴を美しく魅せるハイシャイン仕上げ。
革靴の雰囲気を上品に格上げしてくれる手法で、多くの革靴好きの方が嗜んでいます。
そんなハイシャイン仕上げ、定期的に落とす必要があります。
それは以下の理由があるからです。
- 割れた鏡面を落として新たな鏡面を作るため
- 保革クリームを革へしっかりと浸透させるため
割れた鏡面を落として新たな鏡面を作るため
革靴に仕上げた鏡面は、ワックスが硬く固まって滑らかな表面を形成しています。
ハイシャイン仕上げの鏡面は外部からの衝撃から革を守ってくれますが、革自体を守ることと引き換えに鏡面にはダメージが入ります。
強い衝撃がかかった鏡面層はその固さゆえに、ヒビ割れが起こってしまうことがあるのです。
ひとたびワックスの層が割れれば光沢が美しい鏡面が一変、革靴のスタイリッシュな雰囲気を損ねることに…。
常に美しい鏡面を保つためには、定期的にお手入れをして輝きを維持する必要があります。
保革クリームを革へしっかりと浸透させるため
ハイシャイン仕上げを落とす必要性はもう1つ。
ハイシャイン仕上げは革靴の美しさを向上させることと引き換えに、水分・油分補給を阻害する弊害があります。
ハイシャイン仕上げを施すことにより、ワックス層が革表面に形成されますが、それがあると、靴クリームを塗った時に不都合なことが…。
それは靴クリームの水分や油分がワックス層に邪魔されて革へ行き届かない点。
ハイシャイン仕上げを落とすアイテム5選
鏡面を落とすのは結構大変です。
ワックスの層が厚ければなおさら。
一般的な「靴用クリーナー」と呼ばれる道具、例えばステインリムーバーなどの汚れ落とし溶液ではワックスの層を除去するのにはかなりの時間を要します。
面倒ですよね?
少なくとも僕はそう思います。
でも、今の世の中便利なもの。
簡単にワックスを落とせるシューケア用品があるのです。
それが以下のシューケア用品。
これら5つの便利アイテムを紹介していきます。
ハイシャインクリーナー
ハイシャイン仕上げを落とすためのアイテム、1つ目はハイシャインクリーナーです。
ハイシャインクリーナーはシューケアブランド「ブートブラック(Boot Black)」が展開しているワックス用のクリーナー。
成分は有機溶剤とロウ。
油性のクリーナーなので水性クリーナーとは違い、油性のワックスをきれいに除去できます。
光が反射し、光沢を帯びた革靴です。
こちらのハイシャイン仕上げをハイシャインクリーナーで落としていきます。
鏡面仕上げ時と同じように力を加えず、円を描くようにクロスを滑らせます。
ハイシャインクリーナーにワックスを溶かし込んでいくイメージを持つと良いです。
ハイシャインクリーナー使用後の革靴はこんな感じ。
ハイシャインクリーナーはとてもお手軽に鏡面を落とせます。
- ペースト状でしっかりとハイシャイン層に乗り作用する
ワックスクリーナー
M.モゥブレィのワックスクリーナーは液状のハイシャイン落とし用クリーナー。
ワックスの層を除去するアイテムは各シューケアブランドから各種販売されていますが、ワックスクリーナーは液体タイプのワックス専用クリーナーです。
そのため、使いやすく洗浄効果も抜群。
鏡面にヒビが入ってしまったときや、鏡面の下地の革に栄養補給したいときなど、そんなときにワックスを落とす手段として使えるシューケア用品です。
ワックスクリーナーは強力な洗浄作用があり、一般の靴クリーナーでは落としにくいワックスもキッチリ落とせます。
ワックスクリーナーの効果を確かめるべく実際に使ってみます。
ハイシャイン仕上げのワックスが割れてしまった鏡面層を取り除くために使いますね。
ワックスクリーナーを汚れ落とし用のクロスに染み込ませて…
鏡面部分を拭きます。
ワックスクリーナーで鏡面仕上げを落とした状態がこちら。
鏡のような光沢を持つ鏡面が、ワックスクリーナーを使うことでマットな革本来の表情に戻っていることが分かります。
バッキバキに割れていた鏡面をリセットできました。
ワックスクリーナーの強力な洗浄効果は鏡面に仕上げたワックスの層にも効果抜群です。
見事にハイシャイン仕上げのワックス層を落とせます。
液状クリーナーはクロスにも染み込みやすく、使い勝手もよし。
ワックスクリーナーは手軽に鏡面落としができる使いやすいクリーナーです。
- 液状で使いやすい
レノマットリムーバー
フランスのシューケアブランドであるサフィール(SAPHIR)の製品ラインナップの中に、レノマットリムーバーなるケア用品があります。
レノマットリムーバーは革靴の汚れを落とすための靴クリーナーで、その特徴は何といっても強力な洗浄作用。
革靴についた水汚れ・油汚れはもちろん、靴に形成した鏡面層のワックスでさえゴッソリ除去するほどの洗浄力を持ちます。
レノマットリムーバーの溶液は2層に分離し、有機溶剤が含まれていることを如実に感じる外観。
こちらのレノマットリムーバーはワックス専用のクリーナーではありませんが、強力な洗浄効果ゆえに、ハイシャイン仕上げのシューワックス層を落とすことが可能です。
その様子を少し紹介します。
鏡面磨きを施した、ブラウンのストレートチップ靴。
この靴の鏡面層のワックスを落とすためにレノマットリムーバーを使います。
汚れ落とし用のクロスにレノマットリムーバーを付けます。
そして、クロスで汚れを落とす箇所を拭いていきます。
ここでのポイントは、力を入れずになでるように拭くということ。
レノマットリムーバーは含まれる有機溶剤が汚れやワックスを浮き上がらせ、浮いた汚れをクロスで拭き取るという仕組み。
力を加えずとも、汚れは落ちます。
仕上がりはこのように。
靴がスッピンになり、サッパリした印象になりました。
レノマットリムーバーでクリーニングすることでハイシャイン仕上げ由来の革の光沢が消え、ワックス層を除去できていることが分かります。
- カビ取りにも応用可能
ナチュラルクリーナー
サフィールノワール(SAPHIR NOIR)のナチュラルクリーナーはワックスや汚れをキッチリ落としたいときに大活躍のクリーナーです。
ナチュラルクリーナーは名前の印象からは想像できないほど、
- 強力でパワフルなクリーニング効果
を持つ革靴用汚れ落とし。
ナチュラルクリーナーの「ナチュラル」とは自然由来の成分を使っているからであって、自然な汚れ落としという意味合いではありません。
100%植物由来の成分でできている靴クリーナーで環境に配慮したアイテム。
溶剤系のクリーナーは革に必要な油分を奪ってしまいますが、溶剤フリーのナチュラルクリーナーなら過度に革を乾燥させることがありません。
革に優しい強力クリーナーに仕上がっています。
ということで。
実践でナチュラルクリーナーの実力を見ていきます。
ナチュラルクリーナーを含ませたクロスで革靴を拭きます。
汚れやワックスを落としたいところをなでるように拭いていきます。
軽くなでただけでクロスはこんな感じに。
ごっそりワックスが落ちています。
ナチュラルクリーナーで拭いた後は、しっかり時間をおいて乾燥。
さらにその後、クロスで仕上げの乾拭きをします。
仕上がりはこちらです。
革がマットな質感になっています。
ナチュラルクリーナーで見事にスッピンに戻せました。
触ってみると…
革にカサつきがなく、しなやかさは健在。
自然由来のナチュラルクリーナーならではの上質な仕上がりです。
- 天然成分のみ配合で革への負担が少ない
クレム1925(ニュートラル)
サフィールノワール(SAPHIR NOIR)のクレム1925は、言わずと知れた靴クリームの名品です。
そんなクレム1925、ハイシャイン仕上げのワックス層を落とすことにも応用できます。
ハイシャイン仕上げに使うワックスは油性。
クレム1925は油性クリームのため、油性のワックスを落とすためのクリーナー代わりに使えるのです。
クリーナーとして使うのはクレムの中でも、
- ニュートラル(無色)
を使います。
理由としては染料が含まれておらず、何色の靴にも使用することが可能なためです。
実際に、クレムでワックス層を除去してみます。
ワックスを落とすのはこちらの靴。
鏡面に仕上げたトゥ、ここのワックスを落としていきます。
まずはクレムを指に取り、ワックスが乗っている箇所に塗っていきます。
クレムでワックスを溶かしこんで除去するため、通常の靴のお手入れ時よりも多めにクリームを塗っていきます。
円を描くようにクルクルと、ワックスをクレムに溶かすイメージを持って行いましょう。
その後、クロスでワックスを拭き取りましょう。
すると、こんな感じに。
光沢のムラがなくなり、全体的にマットな革本来の質感が現れました。
クレムを塗るだけでワックスを除去できる、超簡単なワックス落とし方法です。
本来、クレム1925は革へ栄養と光沢を与えるための靴クリームですが、油性のクリームであればその特性上、ワックスを溶かして除去することが可能です。
通常の靴磨き時に使用するだけでなく、クリーナーとしても使用することができるため、汎用性が高いと言えます。
- ワックス落としにも使える靴クリーム
鏡面仕上げを落として見た目と革のコンディションを整えよう
本記事では鏡面仕上げのワックスを効率よく落とせる道具5点を紹介しました。
- ブートブラック:ハイシャインクリーナー
- M.モゥブレィ:ワックスクリーナー
- サフィール:レノマットリムーバー
- サフィールノワール:ナチュラルクリーナー
- サフィールノワール:クレム1925(ニュートラル)
いずれもハイシャイン仕上げのワックス層をごっそり落とせます。
ハイシャインのワックスを落とすのに苦労している方はぜひお試しを。
- ハイシャインクリーナーはペースト状でしっかりとハイシャイン層に乗り作用する
- ワックスクリーナーは液状で使いやすい
- レノマットリムーバーはカビ取りにも応用可能
- ナチュラルクリーナーは天然成分で革への負担が少ない
- クレム1925を既に持っている方はワックス落としにも使える
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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