シューツリーにはさまざまな種類がありますよね?
材質 | プラスチック製タイプ |
木製タイプ |
負荷の掛け方 | バネタイプ |
ネジタイプ |
構造 | シングルチューブ |
ダブルチューブ |
上の表のような分類があります。
さらに、つま先の形状も。
つま先の形状 | サイドスプリット |
プレーン |
上記もまた、型の違ったシューツリーの分類です。
サイドスプリットは、シューツリーのつま先が縦に割れてスプリングが内蔵されているタイプ。
一方のプレーンは、甲部分が1つの木材から丸々切り出されたタイプ。
サイドスプリットとプレーンの違いを簡単にいうと、
- つま先部分が縦に割れているか否か
です。
当然、シューツリーとしての効果に違いがあってそれぞれのタイプが存在しているのですが…。
それらの違いが何なのか、あいまいな人も一定数いるでしょう。
違いはズバリ、
- 横方向へのテンションの掛かり方
です。
革靴に入れたとき、サイドスプリットは内蔵されたスプリングの力で横方向へのテンションが加わりますが、プレーン型はスプリング由来の負荷はかかりません。
つまり、サイドスプリット型に比べ、プレーン型は縦方向への力が緩やかということ。
一見、
なんて思ってしまいますが、プレーン型の方が価格は高く、高級品として扱われることが多いです。
実は、プレーン型は横方向への力を掛けないことで革靴の型崩れを起こしにくい設計になっており、革靴にピッタリ合った形であればシューツリーとしては最良の型式。
革靴にピッタリ合う形状ならば、プレーン型のシューツリーの方が型崩れを発生させにくいということですね。
一方のサイドスプリットタイプは横方向への伸縮性が高いため、プレーンタイプよりも多くの革靴に適用でき、汎用性が高いのが特徴です。
本記事では、サイドスプリットタイプとプレーンタイプ、それぞれのシューツリーの特徴と違いを詳しく解説します。
- シューツリーのつま先が割れているタイプと割れていないタイプは何が違う?
- サイドスプリット型とプレーン型の特徴を比較したい
- サイドスプリットタイプとプレーンタイプってどっちがおすすめ?
安定感がある
- 甲部分にスプリングが内蔵され、横方向へのテンションがかかる
- 革靴の形状問わず合わせやすく、汎用性が高い
相性のムラがある
- 甲部分に過度な力を掛けることなく形状保持できる
- 木型が合った革靴を一切の型崩れなく美しくキープできる
- さまざまな靴を1つのシューツリーで幅広くカバーしたい
- 細身の革靴の美しいフォルムを崩したくない
シューツリーの種類は多様
革靴を型崩れから守ってくれるシューツリーは、革靴管理の必需品です。
人の足を模ったシューツリーを革靴の内側に投入すると、縦・横・高さ方向から立体的に革靴の形状を保持。
履き続けてよれた靴の形を整えます。
シューキーパーともいいますが、木製のシューキーパーをシューツリーと呼びます。
木製のものは革靴が吸った足の汗を吸収する調湿機能を合わせ持ち、革靴の内部環境を整えてくれる効果もあります。
革靴を美しい状態で長く履き続けたいなら、シューツリーは欠かせません。
便利ゆえにシューツリーの種類は多様。
- 安価なプラスチック製
- 高価ではあるものの、優れた調湿機能や防臭作用を持つ木製
上記の材質の違いや…
- 革靴にテンションを掛けやすいバネ型
- 革靴のサイズにピッタリ調節できるネジ型
上にあげたように、構造の違いもあります。
プラスチック製は木製ではないため、厳密にいえばシューツリーではなく、シューキーパーですね。
価格や求める機能によってシューツリーを選ぶ必要があるのです。
シューツリーのつま先割れの有無
多様なシューツリーの中の違いの1つとして、
の違いがあります。
この記事では便宜上、つま先が割れているタイプをサイドスプリットと呼び、つま先が割れていないタイプをプレーンと呼びます。
上記の構造の違いは革靴の形状維持機能に大きく影響を及ぼし、革靴の保管状態にも効いてくる項目です。
それぞれのシューツリーの特徴を見ていきましょう。
サイドスプリット型シューツリーの特徴
サイドスプリット型のシューツリーは、つま先部分に構造上の特徴があります。
シューツリーのつま先の中央から中心に、さらに外側へ向け割れ目が入っています。
スプリットタイプのシューツリーには、真ん中で分かれているセンタースプリットと、アウトサイドをえぐるように割れたサイドスプリットがあります。
そして、その割れ目の中にはスプリングが内蔵。
横方向に伸縮する構造を持ちます。
なぜスプリング機能を備えているかといいますと…。
サイドスプリットタイプのシューツリーを革靴に入れたとき、内蔵スプリングが威力を発揮。
バネの力で内側から革靴にテンションを掛けて革を伸ばすのです。
左右均等に力が掛かり、スプリング由来のテンションを掛け続けながら靴の形状をキープできます。
基本的にサイドスプリットのシューツリーはシングルチューブ、またはダブルチューブ構造によって縦方向の伸縮が効くように設計。
サイドスプリット型はさらに横方向へのバネの力が加わり、縦と横の2方向のテンションを強く掛けられるようになっています。
革を内側から伸ばし、履きジワや反り返りをしっかり矯正できるのがサイドスプリット型シューツリーの特徴。
木製シューツリーのため重量があり、プラスチック製に比べて価格高めです。
プレーン型シューツリーの特徴
一方のプレーン型シューツリーは、つま先に割れ目がないタイプ。
サイドスプリット型のような横方向へのスプリングの力がありません。
一見、
- プレーン型はサイドスプリット型の下位互換では…
なんて考えがよぎりますが、まったくそんなことはなく。
明確に差別化されています。
プレーン型は横方向への過度なテンションがかからないため、革靴の美しい形状をよりキープしやすいのです。
プレーン型のシューツリーは革靴の木型(ラスト)を忠実に再現した構造になっているタイプがほとんど。
左右への伸縮によって横方向への負荷に融通が利くサイドスプリットとは異なり、プレーン型はピッタリの革靴に活用することで真の威力を発揮するのです。
スプリングの力に頼らずとも革靴の形状をバッチリキープしてくれるため、余計な力を掛けずに革靴の形状を保ちます。
スプリングよりも弱い力で、というよりも、シューツリーの形状そのものの作用で革靴を保持するからですね。
シューズブランドの純正シューツリーにプレーン型が採用されることが多いのはそのためです。
純正品はそのブランド・メーカーの木型に使うためにあるので、ピッタリのシューツリーが作れるのですから、当然っちゃ当然。
その分、革靴のラスト形状にピッタリ沿うように切り出さなければならず、精巧な製造技術が必要です。
プレーン型はサイドスプリット型よりも高価なアイテムが多いのも納得の理由。
プレーン型のシューツリーには高級品のイメージがありますよね。
切れ目のない美しいつま先は見た目もエレガント。
スッキリとした、スタイリッシュな高級感が漂います。
プレーン型のシューツリーはサイズピッタリな革靴を最高の状態でキープできますが、反面、形が合っていない靴に投入しても効果が薄れる特徴があります。
サイドスプリットとプレーンを比較
では、サイドスプリットとプレーンを並べて比較してみましょう。
左がサイドスプリット。
右がプレーン。
まったく違った雰囲気ですね。
先ほども述べた通り、割れ目がなく曲線美が強く表れたプレーン型のシューツリーには高級感があります。
一方のサイドスプリット型シューツリーは、見ただけで機能性の高さを感じる仕上がり。
前から見てみましょう。
サイドスプリット型は真ん中に切れ目があるため、革靴に入れたときにどうしても革靴内部に縦方向の隙間ができます。
靴クリームを塗ったりブラッシングしたりする際、隙間部分が空洞になっているため、力を加えにくいという欠点があるのです。
ただし、隙間はほんのわずか。
明らかにお手入れしにくい、という事態にはなりません。
かたやプレーン型のシューツリーは切れ目がないため、靴に投入した際にも革を全面で支えます。
隙間なく革を伸ばし、お手入れの際にも少しの違和感もありません。
サイドスプリットが入ったタイプなら横方向の伸縮機能が働き、前後だけでなく左右へのシワ伸ばしにも効きます。
甲幅が広いタイプは革靴の形状維持に効果抜群なのはもちろん、伸縮幅の融通が利くため、多くの形状の靴に柔軟に対応できるところが魅力です。
プレーンタイプは、革靴にピッタリ沿うことで真価を発揮。
足長(レングス)だけでなく、足囲(ワイズ)を考慮すると、より満足度の高い最適なシューツリーを選べます。
とはいえ、市販のプレーンタイプのシューツリーは革靴の定番モデルをベースとしたラスト形状を採用していることが多く、ある程度汎用性が確保されたモデルも多いです。
安定のサイドスプリット|ハマると化けるプレーン
サイドスプリットとプレーンの特徴をまとめると、
という分類がしっくりきます。
多様な形状の革靴に対応できるサイドスプリットに対して、相性の差が激しいものの最適な靴には抜群の形状保持機能を発揮するプレーン。
サイドスプリットタイプのシューツリーは気軽に買えますが、プレーンタイプは適した靴の形状をよく確認することをおすすめします。
サイドスプリットとプレーンのシューツリーを革靴に装着して比較
シューツリーは使ってなんぼ。
実際に革靴に装着してみて、サイドスプリット型とプレーン型のシューツリーの違いを比較します。
違いが分かりやすいように、片方ずつ革靴に投入することに。
サントーニのダブルモンクの革靴に投入してみます。
左足にはサイドスプリット型のシューツリー。
右足にはプレーン型のシューツリーを投入。
サイドスプリットはディプロマットシダーシューツリーでサイズ40。
革靴の適用サイズは24.5cm~25.0cmです。
プレーンはブリガのオックスフォードタイプシューツリーでサイズM。
革靴の適用サイズとして、25.5cm~26.0cmに対応するシューツリーです。
まずは真横のショットから。
これだけだと違いは分かりにくいですが…。
画角を靴の正面に寄せていくと…
甲の高さが異なるのが明らかに。
上から見ると革靴の輪郭が違っているのが分かりますね。
向かって左側、プレーンタイプのシューツリーを装着した靴は細身に仕上がっています。
向かって右側のサイドスプリット型を入れた靴は、どっしりとした安定感のある印象です。
どちらも甲革が張っていますが、プレーン型はより顕著。
高さ方向への引っ張りが強く、立体的な形状になっています。
かたや、サイドスプリットのシューツリーは左右へのテンションが加わり、横方向への力を掛けて形状を保持しているのが感じられます。
左右への負荷をスプリングの力に頼らないプレーン型シューツリーは、もともと甲の高さをしっかりと設けています。
そのため、サイドスプリット型と比べ、履き口から見たときに隙間が少ないです。
各シューツリーにそれぞれ適している靴のタイプを再認識できる結果となりました。
もうひとつ、リーガルの内羽根ストレートチップの革靴でも検証してみましょう。
いざ投入すると、こんな感じ。
向かって左にはプレーン型シューツリーを。
右側にはサイドスプリット型のシューツリーを投入。
やはり甲の高さが違います。
内羽根ストレートチップはフォーマル度合いが強く、細身のスタイリッシュなフォルムの靴が多いです。
そのため、左右にテンションを掛けず、その分、高さ方向で力を加えるプレーン型のシューツリーがマッチします。
実際、プレーン型のシューツリーを入れた靴は、甲に高さがあるために革靴の美しい丸みのあるフォルムが際立っています。
サイドスプリット型シューツリーは横に広がり、形状をキープ。
革靴の型崩れ防止という点では甲乙つけがたいですが、内羽根ストレートチップの上品な印象をより的確に保っているのはプレーン型のシューツリーですね。
とはいえ、サイドスプリット型の汎用性の高さも見逃せない便利ポイントです。
好みで選ぶと良いでしょう。
汎用性の高さが魅力のサイドスプリットと美しい形状をキープするプレーン
本記事ではサイドスプリット型のシューツリーとプレーン型のシューツリーを比較して、それぞれの特徴を抽出しました。
革靴を美しく保管・管理したいならシューツリーは欠かせません。
靴の形状を維持する上で高い機能を発揮するのがサイドスプリット型とプレーン型のシューツリー。
サイドスプリット型のシューツリーは、割れ目に内蔵されたスプリングの働きで横方向への伸縮が可能。
前後だけでなく左右へのテンションを掛け、革靴の形状をしっかり保持します。
一方のプレーン型のシューツリーは、つま先に割れ目はなく、横方向へのスプリングもありません。
サイドスプリット型に比べて左右へのテンションが弱め。
その分、スタイリッシュなドレスシューズの美しい形状を保持しやすい特徴があります。
各タイプのシューツリーの魅力を箇条書きすると以下の通り。
- 前後左右への負荷を掛けられるサイドスプリットは汎用性が高い
- 左右への過度な負荷がかかりにくいプレーンは細身の靴にベストマッチ
シューツリーをいくつかの靴に使い回すのならサイドスプリットタイプのシューツリーを。
1つのドレスシューズ専用ツリーとして、美しい形状を維持するならプレーンタイプのシューツリーを。
それぞれ選ぶと靴の管理が捗ります。
お気に入りの一足に合うシューツリーを見つけてみてください。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
靴磨きを始めたい。けれど道具をそろえるのが面倒…。
そこでおすすめしたいのが靴磨きセット。1セット買うだけで必要な道具がまるっと揃います。道具選びの手間が不要。今すぐ靴磨き可能に。
大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。