靴磨きに使用するシューケア用品には多くの種類がありますよね?
ブラシにクリーナー、靴クリーム、そしてワックス。色々なメーカーが各社自慢のケア用品を作っています。
同じカテゴリーでも、メーカーによって成分や製法が異なり、各社の特色が出た効果をもたらします。
あるメーカーの靴クリームは、
- 光沢感をより重視した仕上がりを提供する
一方で、あるメーカーは、
- 徹底的に保革することを目的とする
といったように…。
そんな中で、メーカーが同じでもラインが異なるという製品もあります。
その一例がサフィールとサフィールノワール。
どちらもフランスはアベル社が手がけるシューケアブランドですが、クリームやワックス等、それぞれのブランドで販売しています。
それはなぜなのか。
また、実際に使ってみて仕上がりに違いはあるのかを検証してみます。
ということで、本記事ではサフィールのワックスとサフィールノワールのワックスで実際に靴を磨いて、仕上がりの様子を比較していきます。
サフィールとサフィールノワールの違い
サフィール(SAPHIR)といえば、フランスはアベル社が手掛けるシューケアブランド。
ですが、サフィールはサフィールでも2つのラインがあります。
それは、
- サフィール(SAPHIR)
と、
- サフィールノワール(SAPHIR NOIR)
です。
シューケア用品売り場に行くと、サフィールと記載された靴クリームやワックスが並んでいます。
その中でも青地に白文字でSAPHIRと書いてあるものと、黒地に金文字でSAPHIRと書かれたものを見たことがある人も多いはず。
というか、シューケア売り場に足を運んでいる人にはもう当たり前かもしれません。
そうです。
サフィールブランドには2つのラインがあるのです。
青地に白文字のSAPHIRは、現代の需要に応える形で開発されたサフィールの通常ライン。
黒地に金文字のSAPHIRはサフィールノワールといって、伝統的な配合比で作られる、トラディショナルラインなのです。
サフィールの特長
サフィールは、より現代的な要望に応える形でレシピを配合して製品化を行っているシリーズ。
比較的ロウ分や油分を抑えた仕様になっています。
そのため、革への馴染みやすさはサフィールノワールに分があるものの、ガラスレザーのような、あまりクリームの浸透性が期待できない革には、サフィールシリーズはかなり向いています。
クリームが浸透しない革にロウや油分がたくさん配合されたクリームを塗ると、過度なギラつきの原因となったり、クリームの酸化による劣化の影響もより表れやすくなりますからね。
サフィールノワールの特長
一方で、サフィールノワールは1925年のパリ万博で金賞を獲得したものとほぼ同じ、歴史にならった伝統的なレシピで作られているシリーズです。
このシリーズは油分の浸透性が格段に優れていることから、しっかりと革へ栄養を与えることができます。
加えて、効率良く革へクリームが浸透していくことから、少量で十分効果を発揮するという特長を持ちます。
それぞれ上記のような特性があるため、
- どのような靴を磨くか
- 靴をどのように仕上げたいか
で使用するラインを選ぶと良いでしょう。
目的に応じて使い分けると、靴磨きがより楽しくなりますよ。
サフィールとサフィールノワールのシューワックスを比較
そんな2つのブランド。
商品ラインナップの中にそれぞれシューワックス(ポリッシュ)があります。
違いとしては先ほど述べた、成分の配合比。
どちらのラインも厳選された天然成分を使用していますが、サフィールノワールは伝統ある配合比で、ワックスでありながら革の保革効果が期待できます。
一方のサフィールは、ロウや油分を抑えた配合で、より自然なツヤ感を表現することが可能。
あくまで個人的な意見ですが、
- 「サフィールノワール」のワックスはガッツリ靴を光らせたいとき用
- 「サフィール」のワックスはガラスレザー靴の傷隠しや保護層を作りたいけどギラつかせたくないとき用
上記の使い分けをすると、靴磨きの仕上げのバリエーションが増えて面白いです。
追加情報として、価格はサフィールよりもサフィールノワールの方が若干高めです。
ワックスだけでなく、他のシューケア用品もその傾向があります。
手を出しやすいほうはサフィールですね。
実践編:靴磨き後の仕上がりを比較する
実際に使ってみてどうなんだ!?
…ってことで、実際に靴磨きに使ってみて仕上がりに差はあるのかどうか、検証します。
例によって、磨く靴に登場してもらいましょう。
スコッチグレイン(SCOTCH GRAIN)のアシュランス選手です。
この靴を片足づつ、それぞれ、
- サフィール
- サフィールノワール
のワックスを使用して、どのような仕上がりになるかを確認してみます。
ワックスを比較するための下準備
…と、その前に、この靴は以前塗ったワックスが残っていて、靴のトゥが若干光っている状態です。
この状態だと純粋な比較が出来ないので、下準備として古いワックスを落とします。
ワックスを落とすために使用するのはこちらのケア用品。
ブートブラック(Boot Black)のハイシャインクリーナーです。
ハイシャインクリーナーは、簡単に靴に乗ったワックスを落とすことができる優れもの。
ハイシャインクリーナーをクロスに取って、靴のトゥ部分に乗っている古いワックスを落とします。
今回はブランドラインの異なる2つのワックスの比較が目的。
そのため、比較するワックスの効果だけを観察できるよう、革がすっぴん状態になるまで完全にワックスを落とし切ります。
落とし始めは古いワックスがゴッソリ取れますが、徐々にクロスに付くワックスが少なくなっていきます。
古いワックスが落ちている証拠ですね。
クロスが下の写真のようになるまで、ガッツリワックスを落としました。
ワックスを落とした後は、革の表面に残ったハイシャインクリーナーのクリームを、同じくブートブラックのツーフェイスローションで落とします。
汚れを落とした状態がこちらです。
ハイシャインクリーナー使用前に比べて、トゥ部分の光の反射がかなり弱まりました。
革がすっぴんの状態に戻った証拠です。
これにて準備完了。
いよいよ、本題のシューワックス比較に移ります。
2種類のワックスでそれぞれ靴のつま先を磨く
では、靴にワックスを塗ってみましょう。
右足(向かって左側)にはサフィール。
左足(向かって右側)にはサフィールノワールのワックスを使用します。
色はどちらも無色のニュートラルを選択しました。
更に、公正を期すため、磨き用のポリッシュクロスもそれぞれ新品を使用します。
「サフィール」のワックス
では、まずは右足、サフィールのワックスを使用して磨いてみましょう。
早速、ベースづくりから始めます。
指にワックスを取り、靴のトゥ部分に塗り込んでいきます。
ベースをしっかりと作ることで表面をより滑らかに、均一に仕上げることができます。
何事も土台は大事です。
ワックスの感触としては柔らかく、伸びが良いです。
はい。
塗れました。
この状態で3分程度待ちます。
そうすると、上の写真のようにワックスが乾燥してマットな質感になります。
乾燥が不十分だと、ベースをしっかり作ることができずに仕上がり不良の原因となるので、しっかりと待ち時間を確保するようにしましょう。
ワックスの乾燥を確認したところで、さらにもう1層、ワックスを塗ります。
よりベースを強固なものとするためです。
今回は、サフィールノワールとの比較を行うのが目的なので、どちらもワックスのベース形成も2層とすることにしました。
先ほどと同様に乾燥するのを待ち、クロスを用いた磨き上げ工程に移ります。
ハンドラップに少量の水を付けて、ワックスをほんの気持ち程度クロスに付けます。
そして、クロスで小さな円を描くようにクルクルと優しく滑らせていきます。
この作業をワックスのマットな質感が無くなり、ツヤが出るまでひたすら繰り返していきます。
クロスで磨ことおよそ10分、仕上がりました。
靴磨き前の革本来の控えめな状態から一変、鏡面チックに仕上がりました。
以上、こちらがサフィールのシューワックスの仕上がりです。
これに対抗するは、サフィールノワール。
一体どうなるのでしょうか?
「サフィールノワール」のワックス
続いて、もう片方の靴のトゥをサフィールノワールのワックスを使って磨いていきます。
こちらの靴も先ほどと同様にベースづくりから。
指に取ったワックスを靴に塗り込み、乾燥させます。
- ワックスを塗って乾燥させる
この操作を2回繰り返してベースを2層形成しました。
ワックスの感触はサフィールのワックスとほぼ同様で、伸びやすいです。
強いて言えば、ワックスが指の体温で若干溶けやすいと思った程度。
どちらのワックスも使いやすい印象を持ちました。
続いて、クロスに水とワックスを付けて磨き上げます。
比較ということで、水の量や追加ワックスの量も、サフィールのワックスを使って磨いた時の条件に可能な限り近づけるようにしています。
続いて、ツヤが出るまでひたすら磨きます。
ここで1点気付いたことが。
わずかではありますが、サフィールのワックスとの違いが感じられました。
その違いとは、
- 光りだすタイミングが若干早い
ことです。
サフィールのワックスは10分程度でしたが、こちらは7~8分程度。
正確に時間を計っていたわけではないのですが、そのような印象を持ちました。
サフィールノワールの方が、ロウ分が多いために光らせやすいのかもしれません。
仕上がりは以下の通り。
こちらもしっかりと光沢が出て、美しい仕上がりとなっています。
これにてサフィール、サフィールノワールのワックスを使用した靴磨きは終了です。
いよいよ本題。
仕上がりの比較をしてみましょう。
各ワックスの仕上がりを比較する
それぞれのシューワックスで仕上げた革靴を並べてみます。
右足(向かって左側)がサフィールのワックスで磨いた靴。
左足(向かって右)がサフィールノワールのワックスで磨いた靴です。
並べてみると、どちらも美しいですね。
しかし、比較という点においては、上の写真でも分かる通り、
- どちらかがより光っている
- ツヤが深いのはどっち
という違いは見受けられませんでした。
もっと近づいて見てみましょう。
まずは、サフィールで磨いた靴から。
きらびやかですね。
ベースをより厚くしっかり塗れば、もっと光沢が出そうな感があります。
まだまだポテンシャルを秘めていそうな感じです。
一方で、サフィールノワールで磨いた靴は…
こちらも上品なツヤが出ていて、大変美しい仕上がり。
輝き出すまでの時間がサフィールのものより若干早かったことを除いて、仕上がりに大きな差異はありません。
比較結果としては、どちらのワックスを使用してもしっかり光らせられますし、ツヤの質感が異なるということもありませんでした。
サフィールとサフィールノワールのワックス比較まとめ
今回は、サフィールとサフィールノワールという、2つのブランドラインでシューワックスを使用した際の仕上がりを比較してみました。
結果としては、2つのワックス共に大変良い仕上がりとなり、どちらか一方が優れている、というようなことはまったく感じなかったです。
使用感もサフィールとサフィールノワール、どちらも伸びが良く使いやすい感触を持ちました。
靴が光り出すタイミングは、サフィールノワールが若干早かったですが、最終的な靴の状態はどちらも美しく、満足のいくものとなりました。
比較という点においては正直、
- どちらも素晴らしい
という結論です。
どちらを使っても、ケアの目的はバッチリ果たすことができるでしょう。
ただ、配合比が異なっているため、
- ガラスレザーのような油分があまり浸透しない靴へは、サフィールを使用してギラつきを防ぐ
また、
- 革本来の美しい銀面を持つ革靴へは、革質をより引き立たせ、油分補給もしっかり行えるサフィールノワールを使う
そんな使い分けを楽しむことができます。
革靴の種類や用途によって、使用するシューケア用品を模索するのも靴磨きの一つの楽しみとなりえるのではないでしょうか?
ということで、今回の比較記事。
結論としては、
- どちらも大変素晴らしい
- みんな違ってみんな良い
です。
お後がよろしいようで。
これにて失礼します。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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