やってしまいました…。
というか、やられました…。
コードバンの靴に水染みができてしまいました…。
家を出た時は快晴だったのに……。
突然の通り雨…。
慌てて避難したものの、時すでに遅く…。
せっかくの美しいコードバンの革靴に、無数の水シミが出来てしまいました…。
痛恨の極み…。
ですが、悲しんでいる暇はありません。
本記事では雨に降られて水シミが付いてしまったコードバン靴のお手入れ、もとい復活の儀式を行います。
コードバンは水に弱い
コードバンの革は、非常に水の付着に敏感です。
それはなぜかと言いますと、コードバン革の構造にその原因があります。
コードバンは馬のお尻の皮をなめして作られていますが、その皮の繊維は非常に緻密に敷き詰められ、縦に並んだ状態になっています。
いわば毛羽立った状態というわけです。
その繊維を強引に寝かせて、あの美しいコードバン革は作られています。
それが水に濡れてしまうとどうなるか。
強引に寝かせていた革の繊維が水を含むことで膨張。
革が元の状態に、つまりは、毛羽立った状態に戻ってしまうのです。
- 毛羽立ってしまったところは他の箇所に比べて革が隆起した状態になり、シミのような形で残ってしまう
というわけなんです。
水に濡れてもケアすれば問題なし
コードバンは確かに水に弱いです。
しかし前述の通り、水に濡れたとしても革の繊維が立つだけで、なにも繊維が破壊されてしまうわけではありません。
毛羽立った繊維を再び寝かせてあげれば、コードバンは再度美しさを取り戻します。
- 繊維を押し込む
これです。
力を込めて革を押すことで繊維を強制的に寝かせれば良いのです。
すごく単純なことですね。
しっかりと革を押し込んでやれば、コードバンはちゃんとよみがえります。
実際にコードバンの水シミを解消してみる
ここからは実際に雨に濡れてしまったコードバンの水シミを解消するための手順をご紹介します。
ホコリ落とし
何はともあれ、まずは馬毛でのブラッシングでホコリを落とします。
靴ひもを外してから…
ブラッシングします。
ホコリを落とすためのブラッシングは基本中の基本であり、普段のお手入れでも最重要工程です。
クリーナーで汚れ落とし
続いて、アッパーについた汚れをクリーナーを使って落とします。
靴が雨に濡れると、その水滴が空気中の汚れを吸ってしまう事があります。
また、歩いた際の地面からの水跳ねなども、靴に水汚れが付着するきっかけとなります。
以上のように、雨に日に革靴を履いて出かけると、晴れの日よりも汚れがつきやすい環境になっています。
そのため、僕は雨に日に履いた靴は普段よりも念入りに汚れ落としを行うようにしています。
念入りにとはいっても、
- 「力を入れてゴシゴシこする」というわけではない
のであしからず。
あくまで、
- 優しくじっくり
という感じです。
そして、今回クリーナーとして用いるのは、サフィールノワールのレザーバームローションです。
ビーズワックスベースのマイルドなローションです。
汚れ落としだけでなく、保湿や柔軟性の付与効果もある優れもの。
これをクロスに少量取って、靴を拭いていきます。
アッパー全体を優しく拭いたら、汚れ落とし終了です。
靴クリームを塗布
汚れ落とし後は靴クリームを塗布して保革します。
今回使うのはこちらのクリーム。
M.モゥブレィのコードバンクリームレノベイターです。
こちらのクリームはクリーム中の水分が少ないことが特徴で、水に弱いコードバンに適した配合になっています。
そのような特殊な溶剤配合によって、コードバンの色を鮮やかによみがえらせるとともに、保革効果や光沢感を出せるクリームです。
水気が少ないので、クリームが「靴の上に乗る」という感じの使用感。
着色力が強く、革に色が良く乗ります。
そのため、ガラスレザーのような通常の乳化性のクリームが浸透しにくい革の補色にも使用することができます。
コードバンクリームレノベイターの使用用途を下記にまとめてみます。
- コードバンのツヤ出し
- ガラスレザーの着色
- 傷隠し
いずれもコードバンクリームレノベイターの特徴である、油分が多いことによる、定着力の強さがあるからこそ。
コードバンとガラスレザーの共通項として、特徴ある光沢感がある一方で、傷にはデリケートということがありますよね。
そのため、コードバンやガラスレザーの革靴には、水気の少ないこのクリームを靴表面に乗せるイメージを持って塗布していきましょう。
では、早速クリームをペネトレイトブラシに取ります。
この時、使用するペネトレイトブラシは馬毛がおススメです。
豚毛の場合、毛が比較的固いので、コードバンの革を傷つけてしまう恐れがあります。
靴にクリームを塗るときは、優しく円を描くように塗っていくと、革の繊維を乱さずに塗れます。
塗布が終わったら、次に工程へ。
革の繊維を寝かせる
ここではコードバンの繊維を寝かせていきます。
雨に濡れてシミが出来てしまったコードバンの復活には、この工程が欠かせません。
コードバンクリームレノベイターをアッパーに満遍なく塗り込んだら…。
水牛の角から作られた、表面が非常に滑らかなスティックです。
これでアッパーを力を入れて押し込んでいきます。
この、
- スティックで革を押し込む
ということが水シミ解消には必須です。
なぜなら、
- コードバンのシミ = コードバン繊維の毛羽立ち
ですから、毛羽立ちを寝かせることが重要なのです。
レザースティックでコードバンを押し込んで繊維を再び寝かせてあげましょう。
アビィ・レザースティックを使用した後は、上の写真のようにいたるところに筋が入ります。
ですが、心配ご無用。
ブラッシングでクリームを馴染ませ、過剰分を除去する
次の工程として、塗布したコードバンクリームレノベイターをブラシでなじませると同時に、付けすぎたクリームを取り除きます。
馬毛ブラシでブラッシングしていきましょう。
こちらもクリーム塗布時のように、ブラシを円を描くように優しくブラッシング。
コードバンの靴磨きを行う際の意識として、
- 短時間で豪快に
というよりも、
- 時間をかけて優しく
ということを心掛けると、コードバンに刺激を与えずにすむのでオススメです。
山羊毛ブラシでツヤだし
最後の工程は山羊毛ブラシを使用してのブラッシングです。
この工程を経ることで、靴の輝きが一層増し、ヌメリ感のある深いツヤを出せます。
ブラシにごくごく少量の水を付けてブラッシング。
水を付けすぎると、逆に靴の表面がくもり、せっかくのツヤが失われてしまいます。
コードバンの水シミが消えた!
靴磨き終了後の靴がこちらです。
あれだけ無数にあったアッパーの水シミが跡形も無く、コードバン特有の美しいツヤを放っています。
もっと拡大してみましょう。
ツヤツヤです。
雨に濡れたなんて感じさせない仕上がり。
こころなしか、革が活き活きとしているように見えます。
靴磨き前後の写真を比較してみます。
あえて説明する必要もなく、一目瞭然ですが、
- 左が靴磨き「前」
- 右が靴磨き「後」
です。
光の反射の仕方が、
と思ってしまうほど違いますよね。
サイドの様子。
- 上が靴磨き「前」
- 下が靴磨き「後」
です。
サイドにもあった水玉模様が消えています。
白くくすんだコードバンはお手入れしてツヤをよみがえらせよう
以上、濡れて白いシミができてしまったコードバン靴の光沢をよみがえらせる方法を実践解説しました。
濡れてしまってシミができてしまったコードバンは…、
- 靴クリームを塗る
- レザースティックで革を押し込む
- ブラッシングする
このような工程を踏むことで解消できます。
そんな靴が下駄箱に眠っているのであれば、ぜひ試してみてください。
では、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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