靴磨きの醍醐味の1つ、鏡面磨き。
革靴があたかも鏡のような輝きを放つようになる手法。
ハイシャイン仕上げとも呼ばれます。
革靴にハイシャイン仕上げを施すときに使うのは、もっぱら靴用ワックス(シューポリッシュ)です。
各シューケア用品メーカーがそれぞれ特徴ある靴用ワックスを展開している中で、ひときわ存在感を放つのがサフィールノワールのミラーグロス。
ミラーグロスは通常のワックスよりも短時間で、かつ光沢が強い鏡面を作れるのが魅力。
ただ、1点気になるのが、
ということ。
そんなわけで比較してみました。
ミラーグロスと比べるのは、同じくサフィールノワールの定番ワックスであるビーズワックスポリッシュです。
本記事ではミラーグロスとビーズワックスポリッシュでそれぞれ鏡面磨きをした場合の違いについて書きました。
結論からいうと、ミラーグロスは素早く鏡面を作れます。
その過程を紹介していきますよ。
- ミラーグロスと通常のワックスって何が違うの?
- 鏡面の仕上がりに差はある?
ミラーグロスの詳細
ミラーグロスはシューケアブランドのサフィールノワール(SAPHIR NOIR)にラインナップされている鏡面磨きに特化した靴用ワックス(シューポリッシュ)です。
通常のワックスに比べて、簡単に早く光沢を出すことが可能です。
- ロウ(高級天然ワックス)
- 油脂
- 有機溶剤
ミラーグロスは、含まれているロウ分の配合が他のワックスと大きく異なります。
ミラーグロスに配合されているロウ分は、カルナバワックスやモンタンワックスをはじめとした、高級天然ワックスが多く配合されているのです。
- カルナバヤシの葉から採取されるワックス
- 硬く光沢付与効果が高い
- 乳化性と分散性に優れる
- 褐炭から抽出されるワックス
- 鉱物系ワックスながら植物性ワックスに近い性状を持つ
- 硬く粘着性が高い
- 溶剤保持特性や光沢性に優れる
それらをふんだんに使用することで、鏡面を簡単に早く作れるというわけ。
その分、価格が高めですが、そこはご愛嬌。
ミラーグロスは簡単に鏡面仕上げを施せるので、初心者でも扱いやすい靴用ワックスです。
ツヤが現れるのが早いので、鏡面磨きになじみがない方でも手軽に鏡面磨きが楽しめる優れもの。
鏡面磨きの間口を広く設けた逸品です。
ビーズワックスポリッシュの詳細
一方のビーズワックスポリッシュは、サフィールノワールが誇る靴用ワックスの定番品というべき存在。
厳選された各種ワックスが光沢・保革の最適な配合率で処方されています。
- ロウ(みつろう、カルナバワックス)
- 油脂
- 有機溶剤
ビーズワックスポリッシュはその名に関したビーズワックス(みつろう)をベースとして、カルナバワックス、テレビン油などの天然原料にこだわって作られたワックス。
革靴に光沢を与えるためのツヤ出し効果だけでなく、革に栄養も与える効果もあるので、保革も同時にできます。
ミラーグロスにもカルナバワックスが含まれていますが、ビーズワックスポリッシュはミラーグロスと比べて配合比が少なく調整されています。
ビーズワックスポリッシュはビーズワックスがメインです。
ミラーグロスとビーズワックスポリッシュを比較する
サフィールノワールのミラーグロスとビーズワックスポリッシュを実際に鏡面仕上げに使い、違いを見極めてみます。
色はどちらもニュートラル(無色)を使います。
磨くのはこちらの靴。
スコッチグレインのアシュランス。
ご覧の通り、つま先は鏡面になっていません。
左右の片方の靴にミラーグロス、もう片方の靴にビーズワックスポリッシュを使って鏡面磨きを施します。
違いが分かりやすいように、磨きクロスもそれぞれ違うものを用意しました。
ミラーグロスとビーズワックスポリッシュは成分が異なるだけに、見た目の色や柔らかさが異なります。
ミラーグロスの方が白っぽく、硬めの感触です。
早速、磨いていきましょう。
ミラーグロスを使った鏡面磨き
まずはミラーグロスで鏡面づくりをしていきます。
工程は以下の通り。
- ミラーグロスを塗る
- ミラーグロスを乾燥させる
- 水研ぎする
ミラーグロスを塗る
手始めに、ミラーグロスを指にとります。
ミラーグロスは硬さがあり、指にとるときに少し取りづらさを感じます。
この硬さが強い輝きを生み出す秘密です。
ミラーグロスを革靴に塗っていきます。
鏡面層のベースを作っていく工程です。
光沢を与えたい箇所に隙間なく、厚く塗っていきます。
ミラーグロスを乾燥させる
ミラーグロスやワックスは乾燥させて下地を固化させることが輝きを生み出すコツです。
上の図はミラーグロスの乾燥を待っている間に、ビーズワックスポリッシュを塗った状態の様子。
ビーズワックスポリッシュで鏡面磨きをする様子は次の項目で詳しく紹介していきます。
水研ぎする
ミラーグロスを乾燥させたら、水研ぎします。
ハンドラップでクロスに水を付けて…
ミラーグロスをほんの少し、気持ち程度クロスに乗せます。
そして、優しく磨き上げていきます。
こちらのミラーグロス、使ってみると一般的なワックスとは明らかに違いが感じられます。
光り出すのが圧倒的に早いです。
磨き始めて間もないにもかかわらず、すでにウロコ状の筋が見えています。
ウロコ模様は鏡面が現れる前兆です。
磨き始めてすぐに確認できるとは驚き。
鏡面の仕上がりがかなり早いです。
ものの2、3分で鏡面仕上げを施せました。
仕上がりが早く、光沢も申し分なし。
ミラーグロスは鏡面磨きに革命を起こした優れものです。
ビーズワックスポリッシュを使った鏡面磨き
ここからは、ビーズワックスポリッシュで鏡面磨きをする様子を見ていきます。
作業手順はミラーグロスのときと同様です。
- ビーズワックスポリッシュを塗る
- ビーズワックスポリッシュを乾燥させる
- 水研ぎする
ビーズワックスポリッシュを塗る
まずはワックスを指に付けて靴に塗ります。
ビーズワックスポリッシュはかなり柔らかいワックスで伸ばしやすいです。
ミラーグロスと比べると明らかに塗りやすいですよ。
ビーズワックスポリッシュを乾燥させる
光らせたい部分にビーズワックスポリッシュを満遍なく塗ったら乾燥させます。
ビーズワックスポリッシュを塗ったのは向かって右側。
左側はミラーグロスを塗って乾燥待ちの靴です。
この状態ではそれぞれで大きな違いはありませんね。
水研ぎする
ワックスが乾いたあとは、先程のミラーグロスの作業と同じように水研ぎします。
水を付けたクロスに、ほんの少しのワックスを付けて…
ワックスを乾燥させた面を磨きます。
円を描くようにクルクルと。
ミラーグロスは磨き始めてすぐにウロコ模様があらわれましたが、ビーズワックスポリッシュは少し時間がかかります。
磨き続けて5分程度でウロコ模様が見られるようになりました。
ウロコ模様ができてきたら、あと少しの合図。
きっちりと磨き上げましょう。
仕上がりはこんな感じ。
ビーズワックスポリッシュで仕上げた鏡面も曇りない輝きを放っています。
満足のいく仕上がりになりました。
鏡面の仕上がりに違いは?
さて、ここからが本題です。
ミラーグロスとビーズワックスポリッシュ、それぞれで仕上がりに違いがあるのかを確認してみましょう。
向かって左側がミラーグロスで磨いた靴。
向かって右側がビーズワックスポリッシュで磨いた靴です。
どちらも美しい輝きを放っています。
もっと近づいて見てみましょう。
ミラーグロスで作られた鏡面はギラリと光る強いツヤが特徴です。
鏡面がとても均一に作られ、光の反射が一様に安定している印象。
一方のビーズワックスポリッシュはというと…
こちらも美しい光沢。
ミラーグロスの鏡面と違うのは、輝きに奥行きが感じられること。
近づいてみて初めてわかる程度の差であるものの、革の黒色がより黒く感じられるような、深みのあるツヤが出ています。
テクスチャーはそれぞれミラーグロスは硬く、ビーズワックスポリッシュは柔らかいです。
上記が形成される鏡面のモルフォロジーに影響を与えているのかもしれません。
含まれる成分によって、鏡面の仕上がりが異なることを実感できる検証になりました。
最後に、鏡面磨き前と後で比較してみます。
上の図が磨く前、下が磨いた後。
ミラーグロスとビーズワックスポリッシュ、どちらの仕上がりも素晴らしく、甲乙つけがたいです。
ミラーグロスとビーズワックスポリッシュの特徴を踏まえて、自分の好みに合わせて選ぶのがおすすめです。
どちらも持っておいて、気分で使い分けるのもオススメです。
- 仕上がりが早い
- 強く鋭いツヤ
- 比較的高価
- 塗りやすい
- しっとりと深いツヤ
- 比較的安価
ミラーグロスは鏡面を素早く簡単に作れる
本記事では、サフィールノワールのミラーグロスとビーズワックスポリッシュの鏡面の仕上がりについて比較してみました。
ミラーグロスは鏡面磨きに特化したワックスだけあって光沢が出やすく、短時間で革靴を鏡面に仕上げることができます。
サフィールノワールのビーズワックスポリッシュも他ブランドのものと比べて光沢を出しやすいワックスですが、ミラーグロスはさらにその上を行きます。
一方で、ミラーグロスは比較的価格が高いのがネック…。
どちらかを選ぶ場合は以下のように、
- 鏡面磨きを時短で気軽に楽しみたい方 ミラーグロス
- コストをかけずにじっくりと鏡面磨きを楽しみたい方 ビーズワックスポリッシュ
をそれぞれ選ぶことをオススメします。
ツヤの出方も違いますので、どちらも入手して間近で比較しても良しです。
ワックスに限らず、どのような使い方で靴磨きを楽しむかによっても適したシューケアアイテムは違ってきます。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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