革靴を美しく仕上げる鏡面磨き。
ワックスを塗り重ねて革表面を均し、鏡のように光を反射する面を作り上げる手法です。
革靴の美しさをさらに引き上げます。
鏡面磨きを施す部分は、主に革靴のつま先とかかとの部分。
ストレートチップやプレーントゥの革靴ならば、鏡面磨きを施す部位はわかりやすいですが、Uチップの場合はどうでしょうか?
つま先にU字の縫いつけ跡が付いているため、つま先のデザインが分断されていますよね。
迷ってしまいます。
結論、Uチップの先芯が入っている部分を鏡面に仕上げるのがおすすめ。
というのも、Uチップの「U」の内側には先芯が入っていません。
Uチップの内側を鏡面にしない理由は、履いて歩いたときにシワが入りやすく、仮に鏡面を作り上げたとしてもすぐに割れてしまうから。
割れた鏡面はかえって美しさを損ねます。
また、Uチップの内側を鏡面にするとなんだか違和感が…。
ストレートチップやプレーントゥを鏡面仕上げしたときの満足感とは違う感覚になります。
なんというか、くどい印象に。
この感覚は個人差があるとは思いますが…。
実際に「U」の内側を鏡面磨きした図を後ほど示しますので、参考に見てみてください。
そんなわけで、本記事ではUチップの革靴はUの外側を鏡面に仕上げるのがおすすめの理由を解説します。
- Uチップの革靴を鏡面磨きしたい
- Uチップの革靴のエレガントさを高めたい
- Uチップを鏡面に仕上げるとどんな見た目になる?
革靴のデザインは多様
革靴にはさまざまなデザインがあります。
違いは主につま先(トゥ)部分。
- ストレートチップ
- プレーントゥ
- パンチドキャップトゥ
- ウィングチップ
- フルブローグ
など。
デザインが変わると、印象も変化。
もっともフォーマル度が高いストレートチップは冠婚葬祭の場に履いて行けますが、カジュアルな服装には合わせづらいです。
逆に、例えば、装飾が派手なフルブローグは厳かな場面には似つかわしくありませんが、ワークスタイルなどのラフな格好にバッチリ合います。
この記事の主役、
- Uチップ
も革靴のデザインの1種です。
Uチップはカジュアルな革靴
Uチップはその名の通り、チップ(つま先部分)がU字になっているデザインの革靴です。
タンからつま先にかけてのびた革がヴァンプにU字型に縫い合わされた革靴を指します。
Uチップはアッパーにモカシン縫いが施されています。
革の縫い目がアッパーの上にあるため水が浸み込みにくいのが特徴。
ノルウェーの猟師の方々のために作られた靴であるとの説があることから、
- ノルウェージャン
と呼ばれることもあります。
別の切り口として、U字の部分がエプロンに見えるため、
- エプロンフロント
という表現もあり、様々な呼び名があるのが特徴のデザインです。
Uチップの革靴は先芯が入っている部分が少なく、靴内部の空間に比較的余裕があるため、長時間の歩行に向いている特性を持ちます。
フォーマルさは低く冠婚葬祭には不向きですが、その分、カジュアルに履ける靴です。
Uチップは休日使いに便利なデザインで、コーディネートをラフすぎない雰囲気にまとめてくれます。
1足持っていると頼れる存在。
それがUチップの革靴です。
Uチップの鏡面磨き
革靴といえば靴磨き。
靴磨きといえば鏡面磨きです。
鏡面磨きは革靴にワックスを塗り重ねて革表面を均し、鏡のような光沢を与える手法。
革靴を美しくエレガントに演出します。
革靴を履いていると、
なんて願望がわいてきますよね?
それはUチップの革靴であっても同じです。
ただ、
という疑問が浮かびます。
たとえば、こちらのサントーニのダブルモンク。
つま先がUチップデザインです。
通常、鏡面磨きは靴のつま先部分やかかとに施す場合が多いです。
ストレートチップの革靴はわかりやすく境目があるので、そこを基準につま先側を鏡面にしますが…。
その考えに基づけば、Uチップもつま先全体を鏡面磨きすることになります。
しかし、Uチップは先ほど述べた通り、つま先部分にU字の縫い目があるため、ストレートチップの要領で鏡面にしようとすると縫い目を含めることになります。
ワックスを塗ったり、磨いたりするのがやりづらいわけです。
Uチップの鏡面磨きは「U」の境目で区切る
結論、Uチップの革靴はU字を境界として、より外側の部分に鏡面磨きを施すのがおすすめ。
この部分ですね。
もちろん、Uのつま先、要は外側のみを鏡面磨きするのには理由があります。
- 機能的な面
- 見た目の美しさ
上記2つの側面からです。
次の項目で詳しく解説しますね。
Uチップの鏡面磨きでは「U」の外側を磨くのがおすすめの理由
Uチップの革靴を鏡面磨きする部分はU字の外側がおすすめの理由は以下の2点です。
先芯が入っているので鏡面が割れにくい
Uチップのつま先部分に鏡面を施すのがおすすめの理由の1つは、先芯が入っているから。
先ほど、鏡面磨きを施すのはつま先とかかとが主流といったのには根拠がありまして…。
つま先やかかと付近には芯が入っているからなのです。
お手持ちの革靴を触ってみるとわかると思いますが、つま先やかかとは革が硬く、それ以外の部位は比較的柔らかいはずです。
これは革自体が硬い、あるいは柔らかいわけではなく、中に芯材が入っているからなのです。
芯材が入っている部位はたとえ負荷がかかっても革が屈曲することなく安定しています。
そのため、芯材が入ったつま先やかかとは歩いたときにも革が曲がらず、美しい鏡面をキープしやすいのです。
逆に、柔らかい部位に鏡面を施しても、革が曲がってしまうためワックスの層がすぐに割れてしまいます。
Uチップの場合、つま先部分は硬いですが…
Uの内側は柔らかく芯材が入っていません。
U字の縫い目に近い部分はまだ硬さがありますが、心許ないですね。
つまり、U字の内側に鏡面を施したとしても、いざ履いたときに割れてしまうため、すぐに美しさが損なわれてしまうことに。
せっかく鏡面にするのだから、エレガントな印象は長続きさせたいですよね?
だからこそ、Uチップの鏡面磨きはUの外側のみに施すべきなのです。
見た目がスッキリしている
とまぁ、理屈は先ほど述べた通りなのですが…。
Uチップの内側まで鏡面を施すと、見た目に違和感があるというのは無視できない大きな原因です。
とツッコミがきそうですが、実際、鏡面は見た目を美しく仕上げる手法。
- 見た目に違和感があるかどうか
は重要な問題です。
Uチップの革靴の場合、Uの外側だけを鏡面に仕上げると、見た目がスッキリとして洗練された印象になります。
逆に、U字の内側まで鏡面に仕上げると、くどいというか、イマイチ締まりがないというか…。
ぼやっとした印象になってしまいます。
とはいえ、
- イメージできないなぁ…
という人へ。
百聞は一見にしかず。
実際にUチップに鏡面を施して見た目の変化を検証してみます。
Uチップの革靴を鏡面磨きしてみた
ということで、先ほどご紹介したサントーニのUチップ靴を鏡面に仕上げ、見た目の変化を見てみましょう。
鏡面磨きに肝心なのはワックスです。
今回はM.モゥブレィのハイシャインプライマーとハイシャインワックスを使います。
ハイシャインプライマーで鏡面の土台を作り、ハイシャインワックスで仕上げの磨きをしていきます。
ハイシャインワックスだけでも鏡面に仕上げることは十分に可能です。
しかし、ハイシャインプライマーを併用すると早く美しい鏡面に仕上がるため、組み合わせて使う機会が多いアイテム。
早速、U字の外側を鏡面に仕上げるべく、ハイシャインプライマーを塗っていきますね。
ハイシャインプライマーをUの外側、つま先部分に塗っていきます。
せっせと土台を作っていきますよ。
ハイシャインプライマーは早く美しい鏡面を作り上げるのを強力にサポートしてくれるケア用品ですが、使いこなすためには少々コツが必要です。
もう片方の靴にも塗っていきます。
両足にハイシャインプライマーを塗ったら、ハイシャインワックスで磨き上げる工程へ。
磨きクロスを指に巻きつけて、ハンドラップで少量の水を付けます。
そして、ハイシャインワックスをクロスにほんのわずか、うす~く付くかどうかくらいを取り分けて…
優しく磨き上げましょう。
ハイシャインプライマーで土台を作っているので、輝きが出るのが早いです。
片方を磨いたら、もう片方を磨いて。
交互に磨いて鏡面を仕上げていきます。
くもりなく磨いたら、山羊毛でブラッシング。
クロスと同じく、ブラシに水を付けましょう。
優しく仕上げ磨き。
以上で作業完了。
磨き終わりがこちらです。
きれいに仕上がりました。
美しい輝きを放っています。
とはいえ、気になるのが、
ということ。
てなわけで、検証していきましょう。
U字の内側を鏡面磨きしてみた
Uチップの内側に鏡面磨きを施していきます。
やり方は先ほどと同じく、
- ハイシャインプライマーで土台を作ってハイシャインワックスでの磨き上げ
です。
土台を作って…
磨きます。
仕上がりはこんな感じ。
きれいに鏡面ができました。
ただ…。
う~ん…。
どうなんだこれは(迫真)。
U字の「外側だけ」と「外側と内側」を鏡面磨きした見た目を比較
U字の内側の鏡面は片足だけ仕上げたので、内側の鏡面仕上げをしていないもう片方の靴と比較してみます。
U字の外側だけ鏡面で仕上げた靴の方がスタイリッシュに感じます。
Uの内側の甲部分まで鏡面磨きした靴は、Uの縫い目が境目となって鏡面の連続性が途切れている感が否めません。
ごちゃごちゃしているというか、そんな違和感を覚えます。
逆に、つま先部分だけを鏡面磨きした靴は見た目スッキリ。
エレガントな中にも爽やかさを感じる見た目です。
好みは人それぞれでしょうが、僕は断然U字の外側だけを鏡面仕上げした靴の雰囲気が好きです。
メリハリがあって良い感じ。
ちょうど、Uの部位が革の風合いの切り替えポイントとして機能し、見た目がスッキリしています。
U字の内側のワックスを落とした結果
U字の内側まで鏡面に仕上げてしまうと違和感を覚えたので、鏡面を解消してみます。
鏡面はワックスの層ですから、溶剤多めのクリーナーでしっかりと落としていきましょう。
使うのはワックスクリーナー。
頑固なワックスの層を簡単にスッキリ落としきる優れものです。
ワックスクリーナーをクロスに付けて…
鏡面を落としたい部位を優しく拭きます。
すると、こんな感じに。
きれいにワックスが落ち、本来の革の風合いになりました。
こうしてみると、やはりスタイリッシュですね。
Uチップの革靴は外側だけを鏡面仕上げにすると見た目スッキリ
本記事では、Uチップの革靴はU字の外側のみを鏡面仕上げするべき理由について書きました。
Uチップはつま先にU字の縫い目が入った革靴。
鏡面磨きするときに、
の疑問が浮かびます。
結論としてはU字の外側、先芯の入ったつま先部分のみを鏡面にすると満足度の高い仕上がりに。
理由は以下の通り。
逆に、U字の内側に鏡面を施すのはおすすめしません。
試しにU字の内側まで鏡面に仕上げてみましたが、ごちゃごちゃしたくどい印象になってしまいました。
Uチップの革靴をスタイリッシュに履きたい人は、U字の外側だけを鏡面に仕上げて楽しんでみてください。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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