コードバン。
それは馬のお尻の皮を使って作られた革です。
そして、そのコードバンで作られた革靴は非常に強い光沢を放ち、大変美しいものです。
ですが、そんな美しいコードバン靴も定期的に磨かないと徐々に革のツヤがなくなってきてしまいます。
そのため、コードバン靴を磨く必要が出てくるのですが…。
靴磨きのための靴クリームにはたくさんの種類があります。
「どの靴クリームを使おうか」と考えることも靴磨きの楽しみの1つ。
今回は、そんな数ある靴クリームの中の1種であるアーティストパレットを使ってコードバンの革靴を磨いてみます。
アーティストパレットってコードバン靴に使える?
コードバンは繊細な革であることは周知の事実です。
コードバン専用の靴クリームも出ています。
そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。
その答えとしては、
- 何の問題もなく使える
と言えます。
むしろ相性が良いです。
コードバンとアーティストパレットは。
というのも、コードバンは極端に水に弱いです。
水に濡れるとすぐに繊維が毛羽立ちを起こして、シミのようになってしまいます。
靴磨き時に、含まれる水分が比較的多い、
- 乳化性クリーム
を使うと、その点が不安要素となります。
しかし、比較的含まれる水分が少ない、
- 油性クリーム
ならば、水に弱いコードバンにも安心して使える、というわけなんです。
そして、アーティストパレットは油性クリームに分類され、水分を一切使わずに作られています。
水分を含まないアーティストパレットはコードバンの革靴にも問題なく使えるといえるのです。
油性クリームって伸びにくい!でも、アーティストパレットならば…
水分が少ない油性クリーム。
水分が少ないということは、相対的に油分である油脂やロウ分が多く含まれているということ。
油分が多いとクリームを革靴に塗った際、革表面に油膜を形成しやすく、ツヤ出し効果が強くあらわれます。
それにより、革靴の美しさが一層引き立つ、というメリットがあります。
一方で、靴クリームが伸びにくく、ハンドリング性が悪いというデメリットもあります。
一般的には。
なぜ、「一般的には」という言葉を強調したかといいますと。
勘の良い人はすでにお気づきかもしれません。
今回コードバン靴に使用するアーティストパレットは、一般的な油性クリームとは異なり、ハンドリング性の悪さを微塵も感じさせないクリームだから。
アーティストパレットは水を一切含まない油性クリームでありながら、乳化性クリームさながらの柔らかさ・伸びやすさを持っているため、とっても使いやすいのです。
その秘密はアルガンオイルが配合されていることにあります。
アルガンオイルとは植物性の希少な高級オイルの一種で、伸びが良く、浸透しやすいという特長から美容やスキンケアにも使用されることもあります。
伸びが良く、浸透しやすい…。
革靴を磨くのにピッタリなのです。
アルガンオイルを使用した伸びやすく、革へ浸透しやすい油性の靴クリーム…。
それがアーティストパレット。
アーティストパレットでコードバンを磨かない手があろうか…。
いや、ない!(謎の反語)
…はい。
そんな感じです。
オールデンの「バーガンディ」とアーティストパレットの「ルージュ」の組み合わせ
革靴を磨く際には、靴の色と靴クリームの色の組み合わせは重要。
特にアーティストパレットはその名が表す通り、色を楽しむために20色がラインナップされています。
また、顔料ベースの靴クリームのため、後で容易に靴から色を除去することが可能です。
染料ベースのクリームは靴を色で染める、顔料ベースのクリームは靴に色を乗せるというイメージ。
顔料ベースのアーティストパレットは簡単に色を落とせるため、色で遊ぶことができます。
今回、磨こうとしている靴はオールデンの975。
ロングウィングチップ。
色はNo.8。
いわゆる、ダークバーガンディです。
あえて言葉で表現するなら、茶色身の強い深い赤色といったところ。
オールデンはアメリカのシューメーカーで、オールデンの靴の色味の中で不動の人気を誇り、オールデンの代名詞とも言われるのが、
- No.8(ナンバーエイト)
と呼ばれるバーガンディ色なのです。
このバーガンディの革靴に何色の靴クリームを使うかは悩みどころ。
ですが、同じ赤系統の色ということで、先日購入したばかりのアーティストパレットのルージュを使ってみます。
鮮やかな赤色です。
アーティストパレットでコードバンの革靴を磨きます
では、アーティストパレットでオールデンのコードバン靴を磨きます。
手始めに、靴ひもは外しておきましょう。
手順は以下の通りになります。
- ホコリを払い落とす
- 汚れを除去する
- アーティストパレットを塗る
- 馬毛ブラシで馴染ませる
- クロスで磨く
- 山羊毛ブラシで仕上げ
初めてアーティストパレットを使用してから、色々と試行錯誤しましたが、現時点では以上の手順に落ち着きつつあります。
靴磨きをしているという実感が得られると共に、靴が輝きやすい気がするという点が理由です。
では早速、靴を磨いていきましょう。
ホコリ落とし
まずは靴に付いているチリやホコリを落とします。
靴は歩いていると、地面に落ちているホコリや風に乗って飛んでくるチリなどが付着します。
そのままにしておくと、チリやホコリが革の油分を奪ってしまうためよくありません。
また、靴を磨く際にも靴クリームの浸透を妨げたり、革に傷ができてしまう原因にもなります。
そんなホコリやチリを比較的柔らかな毛を持つ馬毛ブラシでブラッシングして払い落とします。
手首のスナップを効かせてサッサッと。
汚れ落とし
ホコリを落としたら、次は汚れ落としです。
靴に付いた水汚れや油汚れを靴クリーナーで除去します。
使用するのはサフィールノワールのレザーバームローションです。
革靴の汚れを落とすと同時に保革成分も供給してくれる優れもの。
先ほども述べたように、コードバンに過度な水分はご法度ですので、水分が主成分のクリーナーではなく、比較的油分の多いクリーナーを使用するのをおすすめします。
こちらのクリームをクロスに少量付けて…
靴を拭いていきます。
優しく、なでるように円を描きながら拭きましょう。
アーティストパレットを塗り込む
続いて、靴クリームであるアーティストパレットを靴に塗布します。
僕は通常、靴クリームの塗布にはクリーム塗布用ブラシのペネトレィトブラシを使用するのですが、今回は手で塗ることにします。
アーティストパレットはあたかも鏡面磨きを施したようなツヤを革靴に与え、美しい色を与えることができる靴クリーム。
その特性を存分に味わうためには、
- 多めにクリームを塗った方が良い
それが今の気分です。
そのため、ブラシよりも多くのクリームを塗布しやすい指にクリームを取り、手から直接革靴へクリームを塗り込むという方法を採用しました。
靴磨き方法を試行錯誤するのも楽しいです。
手に取ったクリームを革靴に塗ります。
1度に大量につけるのではなく、少量ずつ数回に分けて塗り重ねるようにすると、より均一にクリームを塗れます。
かかとの部分も忘れず、靴全体にまんべんなくクリームを塗布しましょう。
両足ともアーティストパレットを塗り終わったら次の工程に移ります。
アーティストパレットをブラシでなじませる
ここでは、塗り終わった靴クリームをブラシでなじませていきます。
しかし、この工程は靴の形状・装飾によっては不要の場合があります。
今回磨いている靴はブローグ(革靴上の穴飾り)があるため、下図のようにブローグ内部に靴クリームが残ってしまうことがあるのです。
このブローグ内部に溜まった靴クリームを馬毛のブラシでかき出してあげます。
馬毛ブラシを使うのは繊細なコードバンを傷つけないようにするため。
馬の毛は比較的柔らかいですからね。
この時、使う馬毛ブラシはホコリ落とし用のブラシとは別のブラシを使用して下さい。
ホコリ落とし用のブラシをそのまま流用すると、ブラシに付いているのホコリがクリームを吸ってベタつくため、ホコリがブラシの毛先に固着してしまいます。
それを避けるための措置です。
装飾などがない靴の場合はブラッシングしないほうが、クリームをより多く革靴上に残せるため、ツヤが出やすくなります。
好みでブラッシングの有無を選択してみてください。
クロスで磨く
続きまして、磨き工程です。
革靴に塗ったアーティストパレットをクロスで磨いて強いツヤを出します。
強いツヤを出すことができる…。
これが油性クリームの強みの1つ。
油膜でコーティング層を形成できるため、光の反射もより強いものとなるのです。
クロスにハンドラップで水を付けて…
革靴を磨きます。
こするのではなく、
- クリームをならす
イメージで。
水を付けては磨き、水を付けては磨き、たまにほんの少しの靴クリームを足しながら…。
ひたすら磨き上げましょう。
シューポリッシュ(ワックス)を使った鏡面磨きと同様の方法で作業します。
山羊毛でブラッシング
クロスでの磨き工程が終了したら、最後の仕上げ。
山羊毛でのブラッシングです。
用いるのはこちら、ブートブラックのフィニッシングブラシ。
山羊毛と馬毛が1:1の割合で植毛された靴磨き仕上げ用ブラシです。
非常に柔らかな毛先で、肌触りがとっても気持ちが良いです。
新品状態。
購入してから、今回が初の使用。
どんな仕上がりになるか。
楽しみです。
まずはハンドラップでブラシに水を極々少量付けます。
水を付けたら、革靴をブラッシングしていきましょう。
やさ~しく。
愛でるように…。
時間をかけてじっくり仕上げます。
僕の場合、気分によっては数十分くらいブラシ掛けをしていることがあります。
ブラッシングって本当に楽しいですし、山羊毛ブラシの仕上げはやればやるだけ輝くような気がします。
中毒性がある作業です。
そして、ブラッシングが終了しました。
ツヤが出ていますね。
初めて使用する山羊毛ブラシは思うようにツヤや光沢が出なかったりするもの…。
ですが、このブートブラックのフィニッシングブラシは圧倒的な毛先の柔らかさと繊細さ。
しっかりとクリームをならすことができるせいか、初回からとても仕上がりが良いです。
ここで、靴磨き前後での靴の状態を比較してみます。
光沢が増していることもさることながら、何よりも特筆すべきは色味が明るくなっていることでしょう。
元々のバーガンディ色により赤みが強い、アーティストパレットのルージュが乗ることで華やかな印象になりました。
アーティストパレットの威力をあらためて感じます。
靴ひもを締めたら、これにて靴磨きは終了。
充実した時間を過ごすことができました。
ちなみに、初回ブラッシング後の山羊毛ブラシの様子はこのような状態に。
まだまだ若いブラシです。
これからガシガシ使って、どんどん育てていきます。
コードバン靴を磨いた感想とまとめ
本記事では、オールデンのコードバンの革靴をアーティストパレットのルージュ色で磨いてみました。
水に弱いコードバンには油性クリームであるアーティストパレットは好相性。
かつ色味も変えることが可能で、革靴の印象を変化させることができます。
- コードバン靴を磨く際の良い靴クリームを探していた
という人はもちろん、
- 今の革靴の雰囲気に少し飽きてしまったから、気分転換に色味を変えてみたい
という人にもおすすめのアーティストパレット。
ぜひ試してみてください。
その素晴らしい効果と使い勝手の良さに驚くはずです。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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