「アビィ・レザースティック」ってご存知ですか?
靴磨きや靴のお手入れ時に活躍する、シューケア用品の一種です。
水牛の角から作られたアビィ・レザースティックは、表面が非常に滑らか。
そのため、繊細な革であるコードバンの毛羽立ちを抑えるために使われます。
また、レザーソールのケアの際にもその効果をいかんなく発揮し、レザーソールの繊維を引き締め、革底を長持ちさせる効果もあります。
この記事では、アビィ・レザースティックとは何か、そして、どのように使うのかをご紹介していきます。
アビィ・レザースティックとは
アビィ・レザースティックは、水牛の角から作られるスティックです。
外観はこんな感じ。

アビィ・レザースティックは、アビィ・ホーンワークス社が製造している革靴用のシューケア用品です。
アビィ・ホーンワークスはイギリスの伝統ある企業の一つで、天然の角製品にこだわり、職人の伝統的な手法でものづくりを行なっています。
アビィ・レザースティックの「アビィ」とは企業の名前から取られているのです。
ちなみに、外箱と梱包の様子はこのように。


ちなみにサイズ感はこんな感じです。

アビィ・レザースティックを使うと得られる効果
では、アビィ・ホーンワークスで作られたアビィ・レザースティックの効果とは、どのようなものなのでしょうか?
その点は、アビィ・レザースティックに付いている取り扱い説明書に記載があります。

得られる効果は大きく以下の2点。
- コードバンを含むスムースレザーの毛羽立ちを抑えられる
- レザーソールの繊維を引き締められる
具体的な内容はというと…、
銀浮きしている箇所をレザースティックでやさしくこすり、表面を滑らかにします。
ブラシでソールの汚れを落とした後、別売のソールモイスチャライザーを塗り込み、全体的に乾拭きします。レザースティックに柔らかい布を巻き、やさしくすりこみます。
コードバンの毛羽立ちを抑えられる
アビィ・レザースティックの効果その一、コードバンの毛羽立ちを抑えられるという点です。
アビィ・レザースティックの表面は非常に滑らか。
その滑らかな表面で革を押し込むことで、コードバンの水膨れやスムースレザーの銀浮きを解消することができます。
水に濡れたり、こすれることで浮き上がってしまった革の繊維をアビィ・レザースティックでならし、毛羽立ちを抑えられるのです。

レザーソールの繊維を引き締められる
アビィ・レザースティックの二つ目の効果、それはレザーソールの革の繊維を引き締められること。
革靴の部位の中でも、アウトソールは地面と直接接触するため、最もダメージが蓄積されやすい部位です。
革製であるレザーソールなら、なおさら。
履いていくうちにレザーソールは削られ、革繊維の毛羽立ちが目立つようになってきます。
毛羽立ちが進んだレザーソールの表面はカサカサとして乾燥した状態です。
その状態がますます地面との摩擦を強くし、レザーソールの削れを加速させてしまうのです。
そんな悪循環を防ぐことができるのがアビィ・レザースティック。
レザーソールの表面をアビィ・レザースティックで押し込むことで、革の毛羽立ちを抑えることができます。
レザーソールの毛羽立ちを抑えられれば、ソールと地面との摩擦も軽減され、ソールが削れにくくなります。
結果として、レザーソールがより長持ちするのです。
アビィ・レザースティックを使ってみる
ここからはアビィ・レザースティックの使い方について、実践を交えながらご紹介します。
レザーソールの毛羽立ちを抑えるべく、アビィ・レザースティックを使ってソールのお手入れを行います。
アビィ・レザースティックでレザーソールのケアを行う手順は以下の通りです。
- レザーソールの砂利やホコリを落とす
- レザーソールの汚れを落とす
- レザーソールに保革クリームを塗る
- アビィ・レザースティックでレザーソールをこする
アビィ・レザースティックを使ってレザーソールをお手入れするのは、こちらの靴。

アメリカのシューズメーカー「オールデン(Alden)」のコードバン靴であるロングウィングチップ。
型番は「975」。

普段ガシガシ履いているので、レザーソールはかなり削れています。

レザーソールの砂利やホコリを落とす
まずはレザーソールの砂利やホコリを落とす作業です。
タワシでレザーソールに食い込んだ砂利や小石をかき出します。

レザーソールは革製なので柔らかく、地面に落ちている小石などが食い込んでいることがあります。
ここでしっかりとかき出しておきましょう。
続いて、馬毛ブラシでホコリを払い落とします。

レザーソールに石やホコリが残ったままだと、この後に塗る保革クリームの浸透を阻害したり、アビィ・レザースティックに傷が付いてしまう原因となります。
レザーソールの汚れを落とす
次に、レザーソールの汚れを落とします。
靴クリーナーを使って、レザーソールにこびりついた水汚れや油汚れを除去します。
クリーナーとして使用するのは、ブートブラックシルバーラインのツーフェイスローション。
ツーフェイスローションをクロスに染み込ませ…

レザーソールを拭きます。

毛羽立つことでカサカサになってしまったレザーソールなので、靴クリーナーがグングンと吸い込まれていきます。
靴クリーナーをつぎ足しながら、レザーソールが全体的に湿り気を帯びる程度に拭きましょう。
レザーソールの汚れがクロスに移っています。

レザーソールに保革クリームを塗る
靴クリーナーで汚れを落とした後は、レザーソールに保革クリームを塗ります。
いわゆる「革への栄養補給」です。
保革クリームには、先ほどアビィ・レザースティックの取扱説明書でも記載のあった、M.モウブレィのソールモイスチャライザーを使います。


ソールモイスチャライザーをクリーム塗布用ブラシの「ペネトレイトブラシ」に取り分けて、レザーソールに塗ります。

偏りがないようにソールモイスチャライザーを点々と付けて、ブラシで満遍なく塗り広げます。

靴クリーナーと同様、レザーソールへのクリームの浸透具合を確認しつつ、少量ずつ継ぎ足していくと、クリームの付け過ぎを防げます。
ソール全体にソールモイスチャライザーを行き渡らせると、このような状態になりました。

当初は革がかさついて白っぽくなっていたレザーソールが、水分や油分を含むことで色が濃くなっています。
レザーソールがしっとりとして、潤いが与えられていることが分かります。
アビィ・レザースティックでレザーソールをこする
ここからはアビィ・レザースティックでレザーソールをこすって、革の繊維を引き締める工程です。
早速アビィ・レザースティックを使っていきたいのですが、ここで一つ注意点が。
レザーソールにアビィ・レザースティックを使う場合には、クロスで巻く必要があります。
というのも、レザーソールの表面は毛羽立ち、ざらついています。
アビィ・レザースティックを裸のままレザーソールに使ってしまうと、せっかくの滑らかなスティックの表面が傷付いてしまいます。
アビィ・レザースティックをレザーソールに使う場合は、スティックをクロスで覆って傷が付かないようにしましょう。

アビィ・レザースティックをクロスでクルクルと覆って…、
こう!

そして、クロスで巻かれたアビィ・レザースティックを使って、レザーソールをこすります。

革の毛羽立ちを寝かせていくイメージを持って行いましょう。
こすっていくにつれて、徐々に革が光沢を帯びていくのが分かるはず。
仕上がりはこのように。

時間をかけてこすってもマットな質感のまま光沢が出ない場合は、ソールモイスチャライザーの塗りすぎが考えられます。
次回はもう少しソールモイスチャーライザーの量を減らしてやってみると、上手くいくかもしれません。
ソールをより近くで見てみます。

テカテカと輝きを放っています。
お手入れ前のカサカサしたレザーソールの状態はどこへやら。
水分や油分が補給され、みずみずしい質感になりました。
アビィ・レザースティック使用前後でソールの状態を比較
ここでは、アビィ・レザースティックを使うことで、レザーソールの状態がどのように変わったかをみてみます。
アビィ・レザースティックを使わない場合と使った場合とで比較を行い、その効果を確認します。
まずは比較図をどうぞ。

上の図がアビィ・レザースティックを使っていない状態のレザーソール、つまりソールモイスチャライザーを塗っただけの状態。
下の図がソールモイスチャライザーを塗った後に、アビィ・レザースティックでこすった状態です。
その違いたるや、一目瞭然。
アビィ・レザースティックを使用したレザーソールは光を反射しています。
光を反射するのは、表面が滑らかである何よりの証拠。
アビィ・レザースティックを使うことでレザーソールが均一にならされ、革の毛羽立ちが抑えられていることがわかります。
素晴らしきかな「アビィ・レザースティック」
この記事ではアビィ・レザースティックの効果と使い方についてご紹介しました。
スムースレザーやレザーソールに使用することで得られる効果は、とても大きいものです。
アビィ・レザースティックは、革の毛羽立ちを抑えることで、革の美しさを整えることができます。
レザーソールに使えば、ソールのすり減りを軽減することも可能。
革靴と長く付き合っていくため、アビィ・レザースティックを1本持っておくと非常に重宝します。
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧頂き、ありがとうございました!







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