「サフィールノワール(SAPHIR NOIR)」というシューケア用品ブランドをご存知でしょうか?
靴磨き愛好家たちに限って言えば知らぬものはいないであろう、シューケア用品界の重鎮と言うべきブランドです。
多くの靴磨き職人の方々から絶大な信頼を得ている、「サフィールノワール」。
「靴磨き職人御用達」というと玄人好みのブランドかと思いきや、そうではありません。
むしろ、靴磨きを始めたばかりの方でも革靴にツヤを出すことができる、初心者にもオススメのブランドです。
- 靴磨きが上手くできない…
- 革靴を光らせることができない…
とお悩みの方はサフィールノワールの靴クリームとワックスをお試ししてみてはいかがでしょう。
本記事ではサフィールノワールブランドで靴磨きを実施する手法とその結果をご紹介します。
サフィールノワールについて
実際に靴を磨く前に、サフィールノワールのブランド紹介と靴磨き用品についてご説明しておきます。
サフィールノワール(SAPHIR NOIR)はフランスのアベル(Avel)社が手掛けるブランドで、アベル社の独自の製法で生み出されたシューケア用品を数多くラインナップしています。
アベル社のブランドとして、サフィールノワールの他に「サフィール」というブランドもあります。
ざっくり分類すると「サフィールノワール」はプロフェッショナルの方でも満足のいく仕上がりの良さを持っていて、無印の「サフィール」は比較的手が出しやすい価格でお手軽に靴磨きを楽しめる、というようなイメージです。
- サフィールノワール:最高品質の厳選した油脂を使用。価格高め。
- サフィール:天然原料にこだわったシューケア用品。価格安め。

アベル社のサフィールブランドは1925年のパリ万国博覧会での金賞受賞など、名門ブランドとして確固たる地位を築き上げ、今日に至っています。
このような実績によってアベル社では、サフィールブランドの製造だけではなく、世界中の多くの有名ブランドのレザーケア商品をOEM生産(他社ブランドの製品を製造すること)しているのです。
さて、では次の項目から今回の靴磨きで使用するサフィールノワール製品をご紹介していきます。

サフィールノワールのレノベイタークリーム
まずは靴クリームから。

使うのはサフィールノワールの「レノベイタークリーム」。
革に栄養を与え、革を柔らかくすると同時に保護膜をつくり、自然な光沢を与えることができる保革クリームです。
一般的な革はもちろん、カーフやボックスなどの繊細で上質なスムースレザーにも使用可能。
無色のクリームなので、どんな色の革靴・革製品にも使えます。
配合成分としては以下の通り。
- 蜜ロウ(ビーズワックス)
- ミンクオイル
- ラノリン
それぞれの成分の役割として、ビーズワックスが栄養と光沢を与え、ラノリンとミンクオイルが潤いと柔軟性を与えます。
革に潤いと栄養を与えつつ、光沢も得ることができる万能選手がサフィールノワールの「レノベイタークリーム」というわけです。

サフィールノワールのビーズワックスポリッシュ
続きまして、「ビーズワックスポリッシュ」の登場です。

サフィールノワールのビーズワックスポリッシュは高級なカルナバワックスとビーズワックスベースの伝統的な製法で作られたシューポリッシュです。
深みのある上質な光沢を与えて、革の風合いをより引き立てることができます。
それと同時に、優れた保革効果もあり。
カルナバワックスというのは、ブラジル産のカルナバ椰子の葉から年間一回だけ採取できるとても貴重なワックスです。
カルナバは空気に触れると硬くなり、薄く頑丈な皮膜を形成。
その薄い皮膜が汚れや雨水から革靴を守ってくれる効果もあります。

色はニュートラル。
今回磨こうとしているのが茶色の革靴なので、無色のワックスで革そのものの色を活かすのが目的です。

サフィールノワールで靴磨き
今回靴磨きの対象になるのはこちらの革靴。

リーガルの茶色のストレートチップ。
購入依頼、ヘビロテしている一足です。

ストレートチップでフォーマル度が高いにもかかわらず、茶色のためカジュアルファッションにも合わせやすく、履き回しやすい靴で気に入っています。
この革靴を磨く作業手順として、次のようにやっていきます。
- ホコリ落とし
- 汚れ落とし
- レノベイタークリームを塗る
- レノベイタークリームを馴染ませる
- 余分なレノベイタークリームをふき取る
- ビーズワックスポリッシュを塗る
- 磨き上げる
- ブラッシングで最終仕上げ
まずは古い鏡面落とし
では早速、お手入れ開始…、
といきたいところですが、実はこの靴、以前鏡面磨きをしています。

それからしばらく履いていたのですが、鏡面磨きを施した革靴の運命と言うべき現象が現れていました。

「鏡面の割れ」です。
歩く際に甲革には非常に大きな負荷がかかります。
そのため、鏡面がその力によって割れてしまうことがあるのです。
そして、汚れも。

この汚れは鏡面の上に付いているので、鏡面を形成しているワックス層を取り除けばそれと同時に落とせるでしょう。
というわけで、鏡面の割れ解消と汚れ落としのために、これまでの鏡面を落としてから新たに鏡面磨きをしようと思います。
使うのはコレ。

ブートブラックのハイシャインクリーナー。
古い鏡面被膜を落とすためのシューポリッシュ(ワックス)専用クリーナーです。
クリーナーで軽くなでるだけで鏡面の被膜がガッツリ落ちる優れもの。

ハイシャインクリーナーをクロスに取って…

鏡面の被膜を軽く拭いていきます。

するとどうでしょう。

鏡面被膜がガッツリ落ちて、マットな風合いとなりました。
よっぽどワックスを厚塗りしていない限りは2、3回クリーナーで拭くことを繰り返すと、鏡面被膜を完全に落とすことができるでしょう。
ホコリ落とし
ここからがサフィールノワールのケアグッズでのお手入れ本番です。
まずは、ホコリを落とします。
馬毛ブラシでブラッシングすることによって、革靴に付着したホコリや砂を払い落とすのです。

汚れ落とし
続いて、革靴に付いた水汚れや油汚れを靴クリーナーを使って除去します。
使用するのはブートブラックシルバーラインの「ツーフェイスローション」です。
溶剤の働きで汚れを落とすタイプの液体クリーナーで、靴上の汚れを溶解して取り込み、除去することができます。
ツーフェイスローションをクロスに付けたら…

靴を拭いていきます。
力をかけずに撫でるように拭くことを心がけます。

アッパー(甲革)全体を拭いて汚れを落としたら次の工程に移りましょう。
レノベイタークリームを塗る
汚れ落としの次は、保革クリームを塗って革に潤いと油分を与えます。
保革クリームとして使用するのは、先ほどご紹介したサフィールノワールのレノベイタークリームです。
クリームを塗るのにとても便利な「ペネトレイトブラシ」にクリームを取ります。

そして、ブラシを使ってレノベイタークリームを革靴へ塗っていきます。

ペネトレイトブラシを使うことで革靴の隅々まで、手を汚さずにクリームを塗ることが可能です。
履きジワの箇所は特に負荷がかかりやすく、革にダメージが入りやすいです。
ひび割れを防ぐため、しっかりとレノベイタークリームを塗り込みましょう。

レノベイタークリームをなじませる
ここでは、先ほど塗ったレノベイタークリームを革靴へよりなじませる作業を行います。
豚毛ブラシでブラッシングします。
ブラッシングすることにより、クリームをより均一に革上へと塗り広げると同時に、余分なクリームもある程度取り除くことができます。

シャッ、シャッとブラシのストロークを大きくすることで、均等な力で革靴をブラッシングすることができます。
余分なレノベイタークリームをふき取る
ブラッシングの後は、クロスでさらにダメ押しのクリーム除去です。
クロスで革靴上の余分なレノベイタークリームをふき取ります。

革に余分なクリームが残ると、
ベタつきの原因となってホコリを吸い寄せてしまう
しばらくすると酸化した保革クリームが革靴上で固化して革の風合いをそこねる
といった不具合があります。
保革クリームは最低限の量で充分です。
この工程で、抜かりなく余分なクリームを取り除いておきましょう。

ここまでで、革に潤いと油分を与えるという目的は果たされました。
次に行うのは、革靴を美しくするための「鏡面磨き」工程です。
ビーズワックスポリッシュを塗る
ここからは革靴を光らせる工程。
まずは、光沢を出すための下地づくりを行います。
先ほどレノベイタークリームと合わせてご紹介した、サフィールノワールのビーズワックスポリッシュを指に取ります。

そして、指に取ったワックスをアッパーのつま先部分に塗ります。

片方の靴にワックスを塗ったら、今度は反対の靴にワックスを塗りましょう。
そして、その靴もワックスを一通り塗ったら、再度もう片方の靴に戻り、先ほど塗ったワックスの上からさらにワックスを塗り重ねていきます。
それを二、三度繰り返してワックスの下地を作り上げていきます。
下地は鏡面磨きで得られる輝きのベースとなるものですので、しっかりと基礎を整えることが望ましいです。
ただし、ここでワックスをあまりに厚く塗りすぎると鏡面が割れやすくなるので、ほどほどにしておきましょう。
それと、これが意外と大事なのですが、下地を作ったら5分程度何もせずにワックスを乾燥させてください。
下地をしっかり乾燥させることも、鏡面に仕上げる上ではとても重要なことです。
磨き上げる
ワックスで下地を作り終えたら、鏡面磨きの醍醐味である磨き上げをします。
クロスを指に巻き付けてから、ハンドラップで少量の水を付けます。

それから、水を付けたクロスを1、2クッションほどワックスに軽く接触させ、クロスにほんのわずか、気持ち程度のワックスを付けます。

基本的には水研ぎで鏡面を磨き上げていくわけですが、ここでクロスにごく少量のワックスを含ませておくことで、下地のワックスとクロスのなじみが良くなります。
鏡面に仕上げやすくなる効果が得られます。
余分な水分をワックスに吸わせるという、クロスの水分調節にも一役買っている工程です。
さあ、ここからクロスで鏡面に仕上げたい箇所を磨いていきます。

力を入れずに革靴にクロスを沿わせます。
撫でるように優しく磨いていきましょう。
クロスに水を付けてからほんの少しのワックスを取り、磨く。
片方の靴をある程度磨いたら、もう片方の靴を磨く。
それを何度も繰り返していくと、徐々に革靴に光沢が現れてくるはずです。
このように。

少しわかりにくいかもしれませんが、うろこ状にワックスの線が浮き出ています。
こうなれば、あと少しの合図です。
気合を入れなおして、やさ~しくクロスで磨いていきましょう。
そして、ついに…。

鏡面磨き終了です。
美しい光沢をよみがえらせることができました。
僕はこれまで様々なシューポリッシュを使用してきましたが、サフィールノワールのビーズワックスポリッシュは、ひときわ鏡面に仕上げるまでの時間が短く済んでいると感じています。
ブラッシングで輝きをブラッシュアップ
最後の仕上げとして、山羊毛ブラシでブラッシングして革靴全体のツヤを底上げします。
山羊毛ブラシにハンドラップでごく少量の水を付けてから、革靴をブラッシングしていきます。

山羊毛ブラシは仕上げ用のブラシとして使うことが多く、その繊細な毛先で靴クリームやワックスを均一にして、より一層ツヤを強くすることができるのです。


山羊毛ブラシは、馬毛や豚毛のブラシを使うときのような手首のスナップを利かせたブラッシングではなく、優しく円を描くようにクルクルと力を加えずにブラッシングします。

作業終了!
これにて一連の靴磨き作業は終了です。
サフィールノワールのレノベイタークリームとビーズワックスポリッシュで仕上げた革靴の状態を確認してみます。
靴磨きによってこのようになりました。

そして、つま先の輝きが良い味出しています。
サフィールノワールは多くのシューシャイニストの方々が使われていることが裏付けているように、革靴をとても美しく、上品な雰囲気へと導いてくれます。
お手入れ方法自体も特に難しいことはなく、どなたでも簡単に革靴にツヤと栄養を与えることができるのです。
サフィールノワールを活用してどなたでも革靴の仕上がりが美しく!
今回はサフィールノワールのアイテムを使った靴磨き方法をご紹介しました。
レノベイタークリームは、革に栄養と柔軟性と自然な光沢を与えます。
そして、ビーズワックスポリッシュは上品な輝きを革靴へもたらすと共に大事な靴を保護する効果を持ちます。
特に、ビーズワックスポリッシュは靴磨きをはじめたばかりの方にありがちな、鏡面磨きがうまくいかないというお悩みも解決できる、
使いやすさ
と
輝きやすさ
という圧倒的なポテンシャルを持っています。
もちろんコツはいりますが、鏡面への仕上がりやすさは他メーカーのシューポリッシュと比較しても頭一つ抜けているのではないかと。
磨いた後の革靴の仕上がり方にはそれぞれその人のこだわりがあるとは思います。
しかし、まだサフィールノワールのシューケア用品を使われたことがないのであれば、一度お試し頂きたいブランドです。
信頼と実績の「サフィールノワール」
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧頂き、ありがとうございました!










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