普段、革靴のお手入れはどのくらいの頻度で、どのようにしていますか?
- まったくしない人
- 履いた後は必ずお手入れする人
- 数回履いたら手入れする人
人それぞれです。
また、靴磨きの方法も自らのこだわりがあったり、独自に開発した手法があったり…。
色々なお手入れ法がある中で僕が1足につき年に1度している革靴のお手入れがあります。
それは、革靴のワックスを落として保革すること。
ワックスで美しく仕上げた鏡面磨きを落とし切り、革に栄養を与える手法です。
いつまでもワックスが乗ったままだと、革への栄養補給効率が落ちます。
ワックスに栄養成分が阻まれますからね。
というわけで。
本記事では鏡面落とし方法と栄養補給方法について、実践解説しながら紹介します。
革靴のメンテナンス頻度は人それぞれ
革靴のメンテナンス頻度、これは人によって様々。
2週間に1回のペースで靴クリームを塗っている人もいれば、3ヶ月に1回程度の人もいます。
はたまた、日頃のブラッシングだけで革の乾燥は防げるから、明らかに見た目が乾燥していない限りは靴クリームは使わないという方まで様々。
もちろん、上記の感覚は革靴を履く頻度や保管場所に大きく左右されますので、一概には言えません。
ケアしすぎると革が柔らかくなり過ぎたり、カビが生えたりすることもあります。
逆に、ずっとケアをしないで革が極端に乾燥すると、ひび割れを起こすこともあります。
そのため、自分の持っている革靴の様子をじっくりと観察して、その靴にはケアが必要かどうかを見極める必要があります。
かくいう僕は、10回程度履いたら靴に靴クリームを入れるようにしています。
残りの9回はホコリ落としのブラッシングのみです。
個人的には、たびたびケアするのは過保護かなと思いつつも、持っているシューケア用品を使いたいという欲求もあり、折衷案で10回程度と目安を決めました。
メンテナンス時にワックス層が残っていると革の通気性を阻害する
ただ、ケアをしないというのもそれはそれで問題です。
特に鏡面磨きを施した部分は表面にワックスの層があることで、革の通気性を阻害しがちです。
それによって革の乾燥を促進してしまうのです。
そのため、定期的にワックスの層を落として革へ潤いを与えることが必要となるのです。
ただ、このワックス層は水溶性のクリーナーでは落としにくいのが難点。
水と油は混ざりにくいですから、油のワックスは水をベースとしたクリーナーには溶けにくく、除去しにくくなっています。
まったくワックス層が除去できないというわけではないのですが…。
そのためには何回もクリーナーをかけなければならず、非常に手間がかかります。
これは裏を返せば、油、つまり有機溶剤にはワックスはよく溶けるということ。
そのため、除去が容易であるということを意味します。
今回は有機溶剤系のクリーナーを使ってワックスをしっかり落とし、革靴へ栄養を補給していきます。
革靴の乾燥防止
メンテナンスするのはこちらの靴です。
スコッチグレイン(SCOTCH GRAIN)のアシュランス。
先ほど述べた通り、この靴も定期的に手入れしているのですが、トゥ(つま先)部分に鏡面仕上げを施してから1年程度経過しています。
ワックス層に傷がついたらワックスを重ね塗りして…。
上記を繰り返して1年が経過。
この間、靴クリームを塗っても、ワックスが乗っているのでトゥ部分にクリームが浸透しにくくなっていて、アッパーの他の部分に比べて乾燥が進んでしまっているはずです。
そこで、トゥ部分のワックス層を落として栄養を与えていきます。
何はともあれブラッシング
まずは靴のブラッシングです。
靴ひもを外した靴を馬毛ブラシでブラッシング。
タンの部分もすみずみまで。
靴のお手入れは何はともあれブラッシング。
ワックス層の除去
続いて、頑固なワックスを除去します。
使用するクリーナーはこちら。
サフィール(SAPHIR)のレノマットリムーバーです。
液体が白い層と透明の層に分かれていますね。
化学系の方は分液漏斗を思い出すのでは?
こちらは有機溶剤系のリムーバー。
油落としには強力な効果を発揮します。
古いワックスはもちろんのこと、革の潮吹きやカビも除去できます。
溶剤系ならではですね。
反面、溶剤系ゆえに、革に含まれている必要な油分まで吸い取ります。
したがって、レノマットリムーバーを使用する際は革への栄養補給が必ずセットになります。
レノマットリムーバーだけ使用して後は放置、なんてことは絶対にしてはいけません。
今回は栄養補給をしっかりとするために、あくまで前準備としてレノマットリムーバーを使います。
さて。
レノマットリムーバーを汚れ落とし用クロスに取って…
柔らかいタッチで拭きます。
ゴシゴシこすると、革へのダメージが深刻になりますので気を付けましょう。
すると…
クロスにワックスが移りました。
さすが溶剤系、強力な落ちです。
汚れやワックスが付いたクロスは定期的に洗うと使いやすくなりますし、なによりエコです。
ワックスが完全に落ちるまで、優しさを忘れずに新しいクロス面で数回繰り返します。
そうすると、下の写真のようになります。
ワックスが落ちて鏡面が消えました。
アッパーの他の部分にもレノマットリムーバーを使用して、汚れと古い靴クリームを除去します。
あ、そうそう。
リムーバーを使用した後は15分ほど時間を置きます。
溶剤系ですから、革から完全に溶剤を揮発させるために少し時間を置くのです。
(待つこと15分…。)
OKです!
レノマットリムーバー以外でも鏡面落とし専用クリーナーのハイシャインクリーナーや靴クリームのクレム1925でもワックスの除去は可能です。
ということで、次の工程へ移ります。
栄養補給
いよいよメインの栄養補給です。
トゥをはじめ、アッパー全体にレノマットリムーバーを使用したので、栄養の浸透を邪魔するものは何もありません。
そこで次に登場するのがサフィールノワール(SAPHIR NOIR)のレノベイタークリーム。
柔らかな革用クリームです。
レノベイタークリームは革へ十分な栄養と潤いを与えるとともに、光沢も与えられる万能クリーム。
似た用途の、同じくサフィールノワールのスペシャルナッパデリケートクリームは、光沢を与えないタイプのクリームですので、使い分けられます。
僕は専ら、革靴へはレノベイタークリームを使用しています。
ミンクオイル配合なので、付けすぎると革が柔らかくなりすぎてしまうので、少しだけ注意が必要です。
しかし、伸びが良く塗りやすいのでとてもオススメですよ。
このクリームをペネトレイトブラシにとって、靴へ塗りこみます。
通常の靴クリームよりも多めに取るのがポイントです。
レノマットリムーバーを使用したので革の油分が抜けています。
通常よりも少し多めにとって、潤い補給を重点的にするわけです。
履きジワのところは特に入念にクリームを塗りこみ、革の柔軟性を確保。
ひび割れを防止しましょう。
ブラッシング
ペネトレイトブラシを使用した後は、豚毛ブラシですみずみまでクリームを行き渡らせます。
こちらのブラシを使って、このようにブラッシング。
ここでも履きジワのところは特に入念に。
手首のスナップを効かせて、大きくブラッシングします。
磨き上げる
ブラッシングが終わったら、クロスで余分なクリームを拭き取るとともに、磨き上げます。
クロスを動かした際に抵抗がなくなってスルスルと滑るようになってきます。
逆に、いつまでも抵抗が残るようだとクリームの付け過ぎ。
その場合は、少し乾燥させて水分を飛ばすと良いです。
次回は少し量を抑えてやってみてください。
慣れてくると感覚で分量がわかるようになります。
さて。
さらに今回は、グローブクロスを使用してさらにツヤを出していきます。
アッパー全体をまんべんなく拭きます。
グローブクロスは手にかぶせるタイプ。
手にダイレクトに磨き感覚が伝わってくるため、扱いやすいです。
革靴への栄養補給終了
ということで、靴への栄養補給が終わりました。
最後に靴ひもを付けてフィニッシュ。
レノマットリムーバーを使用した直後はマットな質感だったトゥですが、見事にツヤが出ています。
ワックス層があると、その部分にはクリームを入れにくくなります。
しかし、レノマットリムーバーを使えば、ワックス層を除去して確実にクリームの浸透が可能。
長らくワックスで仕上げた鏡面を落としていない人は、ぜひ試してみてください。
それでは、今回はここまで。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。