革靴は履いていくうちに、徐々に汚れていきますよね?
汚れているのが最も目立つところといえば、アッパー(甲革)ですが、実はそれと同じくらい革靴の印象を左右する箇所が他にもあるのです。
その箇所というのが、「コバ」。
コバは「エッジ」とも呼ばれる、靴の側面にあるアッパーとソール(靴底)の間の箇所を指します。
靴のデザインとしては見落としがちな箇所ですが、コバは革靴の輪郭を際立たせるには重要なポイントです。
コバが汚れていると、革靴の雰囲気がボヤっとしたものとなってしまって、スタイリッシュな印象を持たれなくなってしまいます。
革靴の側面にあるため、周囲の方の目にも付きやすく、汚れていると意外にも目立ってしまうのがコバ。
ですが、きれいにする方法はあります。
それはコバインキを塗って「コバを染色する」という方法です。
この記事では以下の2点について、ご紹介していきます。
- コバインキとは何なのか?
- コバインキで革靴のコバを綺麗にする方法は?
コバインキとは何ぞや?
「コバ」は冒頭でも述べたように、アッパーとソールの間の部分を指します。

「アウトソールの側面」といった表現が分かりやすいかもしれません。
コバは汚れやすい
コバは革靴の底面部分です。
靴を履いて歩くと、当然汚れていきます。
その中でも特に汚れやすいのは、直接地面と接する底面です。
既にお察しのことかと思いますが、コバは靴の底面を構成する要素の一つであり、汚れやすいのです。
おまけに地面との接触による摩擦で、削れやすり減りも起こってきます。
削れや、すり減りといった物理的な損傷は、パテで埋めてあげれば目立たなくすることができます。

ただ、すり減りや他のものとの接触によって起こってしまった色の変化は、パテではどうにもできません。
ということは、コバを交換するしかないのか…、と思いきや、そういうわけではありません。
色に変化が起こってしまった箇所は、補色してあげればよいのです。
つまり、色あせた箇所に新たに色を塗って、リニューアルしてあげれば良いということ。
そして、コバの補色に使用するものが「コバインキ」というわけなのです。
コロンブスのコバインキ
今回の主役、コバインキとはこういうもの。
日本のシューケア用品メーカーであるコロンブスから販売されていて、革靴のコバやかかと(ヒール)部分の補色ができる専用インクです。
耐候性の高い染料を使用しているので、色あせが少なく、コバ・かかとというダメージが入りやすい箇所でも鮮明な色を保つことができます。
色は「黒」、「濃茶」、「茶」と3色展開。
この3色があれば、多くの革靴のコバをカバーできるでしょう。
また、革製のコバ用インキと合成ゴム製のコバ用インキがラインナップされているので、お持ちの靴のソールの種類によって適したコバインキを選べます。
あくまでコバ・ヒール用なのでアッパー(甲革)の染色には使用できません。

コバインキで革靴のコバを綺麗にする方法
ここからはコバインキを使用して実際にコバをきれいにしてみます。
コバのお手入れをするのはこちらの靴。

オールデンのロングウィングチップ。
この靴、コバのこすれと色落ちが目立ち始めてきました…。

黒のコバがこすれて、その下の革の色が見えてしまっています。
真横から見ると接地面の削れが進行して、コバが摩耗しているのが分かります。

それに伴って、茶色い革本来の色が顔を出していますね。
このままでは見映えが悪いので、コバインキを使って補色していきます。
コバの補色手順はこのように。
- コバを紙やすりで削る
- コバの汚れを落とす
- コバインキでコバを補色する
- コバを油性ワックスでコーティングする
- コバをクロスで磨き上げる
コバを紙やすりで削る
コバの補色の前にまずは下準備。
コバを紙やすりで削って、コバの毛羽立ちを抑えます。
コバの形を整えてきれいにすると同時に、コバを滑らかにしてコバインキを塗りやすくする効果があります。

僕の場合、紙やすりの番手は200-400番くらいのものを使い分けています。
使い分けの基準ですか?
気分です(爆)。
手法にこだわりすぎないというのも、靴磨きやお手入れを楽しむ秘訣だと感じています、個人的に。
紙やすりでコバを整えたら、次の工程に移ります。
コバの汚れを落とす
ここからはコバに付いた汚れを落としていきます。
コバはアッパーに比べて接地面に近く、水汚れやチリ・ホコリが付着しやすい箇所。
そのような汚れやホコリが付いたままだと、コバインキの乗りが悪くなってしまい、補色が上手くいかなくなってしまいます。
先ほどの紙やすり工程で発生した削りかすを除去する意味も込めまして、靴クリーナーでコバを拭き、汚れ等を除去していきます。
使うのはブートブラック(Boot Black)シルバーラインのツーフェイスローション。

油性の汚れを落とす成分と、水性の汚れを落とす成分の2種類が配合されているため、油性と水性、両方の性質の汚れを同時に落とすことができる万能靴クリーナーです。
このツーフェイスローションをクロスに取り…、

コバ部分を拭きます。

コバを1周、ぐるりと拭いて汚れを落としたら、次はいよいよコバインキの登場です。
コバインキでコバを補色する
満を持しての登場、コバインキです。

革製コバ用の黒色。
これを使ってコバの補色をしていきます。
「革製コバ用」というくくりではありますが、合成ゴムのコバにも補色は可能です。
というか、僕は「合成ゴム製のコバ」にも「革製コバ用のコバインキ」を使っていますが、今のところ、特に問題なく使えています。
色の持ちはやはり、「革製コバには革用コバインキ」、「合成ゴム製のコバには合成ゴム用コバインキ」を使った方が良いと思いますが…。
コバインキの先端はフェルト(塗布綿)になっていて、ここにインクを染み込ませて使用します。

コバインキのキャップがそのまま持ち手になるので便利です。
フェルトにインクが染み込みすぎていると液だれが起こるので、容器の縁にフェルトを押し当てて、フェルトに含まれるインクを絞って使うようにしましょう。
コバインキを塗る際はコバにフェルトを押し当てて、アッパーにインクを付けないように、ゆっくりと慎重に行うのが吉です。

ムラが出ないように均一に塗りましょう。
「正確・確実に」を念頭に置いて作業すると良いと思います。
アッパーにインクを付けてしまうと、革靴の見た目を損なってしまい、精神的なショックが襲ってきます!
コバインキを塗った後は、完全に乾燥するまで静置しておきます。

このときに乾燥が不十分のまま触ってしまうと跡が残るので、しっかりと乾燥させます。
インクが完全に乾燥すると、このような状態になります。

コバにしっかりと黒色のインクが乗り、補色が完了しました。
こすれによって跡のようになっていた変色部分もコバインキの補色によって、きれいで均一な色味となりました。
コバを油性ワックスでコーティングする
コバインキを塗り終わったら終わり、…でも良いのですが、もうひと手間加えることでコバインキの効果をより高めることが可能になります。
そのひと手間とは、「油性のワックスやクリームをコバインキの上から塗る」ということです。
コバインキは水性インクのため、雨に塗れたりすると、少なからず色落ちが起こってしまうことがあります。
いくら耐候性が高くて色あせしにくいといっても、水性ですから限界はあります…。
それを防ぐために、コバインキによる補色箇所の上から油性のワックスやクリームを塗り、油のコーティングを作るのです。
そうすれば、その油性のコーティング層が雨水を弾き、コバインキの効果を長持ちさせてくれるのです。
今回、コーティング層形成を任せるのはこちらのワックス。

サフィールノワール(SAPHIR NOIR)のミラーグロス。
ミラーグロスは短時間で強い光沢を出すために生み出された鏡面作りに特化したワックスです。

コバインキを雨水から守る、コーティング層の役割はもちろんのこと、コバに光沢を与えて見た目の美しさをより良いものとするため、ミラーグロスを使うことにしました。
ミラーグロスを指に付けて…、

指で直接、ミラーグロスをコバに塗っていきます。

鏡面磨きをする際は、ワックスを何層も重ねてワックスの土台を作っていきますが、今回は一層のみ。
一層でも十分な輝きが出るのがミラーグロスですし、雨水からのコバの保護という点からみても、コーティング層を厚塗りせずとも十分な効果が得られます。
コバをクロスで磨き上げる
ミラーグロスをコバ周りに塗り終わったら、次は磨き工程です。
ミラーグロスを塗ったコバをクロスで磨き上げます。
ハンドラップでクロスにごく少量の水を付けて…、

軽い力でコバを磨いていきます。

撫でるような力具合で充分です。
ミラーグロスの輝きはゴシゴシこすらずとも引き立ちます。
少し磨くだけでツヤが出てきます。

コバとは思えぬ輝きです。
ツヤを与える力はピカイチ。
これにて一連のコバの補色作業は終了です。
コバのお手入れ前後を比較
では、最後にコバインキの使用前後でコバの状態を比較してみましょう。

上がコバのお手入れ前、下がお手入れ後です。
コバインキを使用することでコバの色あせ箇所を補色することができました。
ミラーグロスで油のコーティング層を形成することで、補色効果もより長持ちしますし、輝きもかなり強めに出て、革靴の雰囲気が引き締まりました。
コバは革靴の輪郭を形作る要素の一つで、印象を左右する重要な部分です。
コバインキで革靴の輪郭を引き立てよう
今回はコロンブスのコバインキのご紹介と、コバインキを使った革靴のコバの補色方法をご紹介しました。
コバは意外にも、革靴の雰囲気を決定づける重要な部分です。
コバが汚れていたり、色あせていたりすると革靴全体の印象が締まらないものとなってしまいます。
逆に言えば、コバをきれいに保っておけば、革靴の雰囲気が引き締まるということ。
コバの状態の良し悪しが革靴の印象を決めると言っても過言ではありません。
コバインキは塗るだけでコバの補色を行えるため、簡単・お手軽に革靴の状態を整えることができます。
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧頂き、ありがとうございました!





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