革靴に美しい輝きを与える鏡面磨き。
- 鏡面が中々うまく作れない…
そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
鏡面の輝きは、ワックス層が革の上に平滑に形成されることで現れます。
そこで重要になるのが、水研ぎ。
ワックス層を水で研いで滑らかに仕上げるのですが、水の分量や磨き方次第では鏡面にならないことも…。
そんなお悩みを解消してくれるのが、
- ポリッシュウォーター
です。
鏡面磨き専用の水研ぎ剤であるポリッシュウォーターは、ワックス層を滑らかに仕上げやすくする便利グッズ。
本記事はポリッシュウォーターの特長と使い方について書きました。
ポリッシュウォーターは水道水と比べて何が違うのか…。
一緒に見ていきましょう。
ちなみに、ハンドラップに移すと作業性が向上するのでおすすめです。
ポリッシュウォーターは靴磨き専用の水
ポリッシュウォーターは株式会社コロンブスが展開するブランド、ブートブラックの商品の1つ。
靴磨き専用の水です。
鏡面磨きの水研ぎ時に、水の代わりに使うことでワックス層を平らにならしやすくし、光沢を出しやすくする効果があります。
ポリッシュウォーターの成分として、精製水をベースに、20%のエタノールが含まれています。
ポリッシュウォーターの肝はエタノール。
エタノールは水にも油にもなじみやすい性質があります。
ワックスは油ですから、エタノールはワックスにもよくなじみます。
つまり、ワックスにエタノールがなじむことで、ワックスが柔らかく・滑らかになるのです。
ワックスが滑らかになることで、革の上でより平坦に層を形成できるようになり、革靴が輝きやすいのです。
また、エタノールは水よりも沸点が低く、より速く乾燥します。
ポリッシュウォーターを使うと、ワックス層の固化が早まり、鏡面磨きの時短にもなります。
ポリッシュウォーターは革靴の鏡面仕上げをより美しく・早く仕上げることをアシストしてくれる、素晴らしいサポートアイテムです。
ポリッシュウォーターが水道水と違う点を検証
ポリッシュウォーターが水と異なる点は、
- ワックスになじみやすい
- 水よりも早く乾く
という2つの点。
どちらも、エタノールが20%配合されているからこその効果です。
そこで浮かぶ以下の疑問。
ということで、実際に検証してみます。
ポリッシュウォーターと水道水のそれぞれで、液体の様子と乾きのスピードを比較してみることにします。
ポリッシュウォーターと水道水を比較する方法
まずは2つのガラス容器を準備。
水道水とポリッシュウォーターが判別できるよう、ラベリングして表示しておきます。
それぞれの容器に水道水とポリッシュウォーターを注ぎ入れ…
各容器に同じ量の水とポリッシュウォーターを投入完了しました。
ここで用意するのはストップウォッチ。
同じ量の水とポリッシュウォーターを用意したうえで蒸発の程度に差が生じるか、観察します。
ポリッシュウォーターと水の蒸発する速さを比較する
先ほど準備した、同量の水道水とポリッシュウォーターをワックスのフタに移し替えます。
ワックスのフタは鏡面磨きのとき、水入れとして使えるので便利です。
水道水を左のフタに。
ポリッシュウォーターは右のフタに注ぎます。
そして、ストップウォッチで時間の測定を開始。
水とポリッシュウォーターをフタに移し替えたばかりですが、この段階ですでに違いが現れています。
ポリッシュウォーターの表面張力は低い
お分かりでしょうか?
ポリッシュウォーターがフタ全体に広がりつつあります。
そこから、ものの数秒でフタをポリッシュウォーターが覆ってしまいました。
ポリッシュウォーターは表面張力が低いのです。
液体は、分子が比較的自由に動ける状態にあります。しかし、その表面積をできるだけ小さくしようとする傾向を持つので、重力などの外力の作用が無視できる場合は、球状になります。
※協和界面科学株式会社ウェブサイトより
コップに水をなみなみ注ぐと、上の部分がプックリ膨れる「例のアレ」です。
ポリッシュウォーターは表面張力が低いので、液が集まらず、球状になりにくいのです。
なぜ、ポリッシュウォーターの表面張力が水道水より低いのかというと、ポリッシュウォーターにはエタノールが含まれているから。
エタノールは水よりも表面張力が低く、そのエタノールがポリッシュウォーターには20%含まれています。
- 水:0.073 N/m
- エタノール:0.023 N/m
そのため、ポリッシュウォーターは水道水よりも球状になりにくく、フタ全体に広がったというわけです。
つまり、ポリッシュウォーターは実際の鏡面磨き時に液滴が球状になりにくく、革全体に広がりやすいということ。
鏡面仕上げの光沢はワックスを平らに・滑らかにすればするほど輝きを増します。
革全体に均一に広がりやすいポリッシュウォーターは平らなワックス層を作るのにはもってこいなのです。
ポリッシュウォーターは蒸発が速い
そうこう言っている間に、開始20分が経とうとしています。
ポリッシュウォーターに少し変化が見られてきました。
液が乾いて、フタの面があらわになり始めています。
水道水は特段、変化しているようには見えません。
さらに、そこから40分観察し続け、計1時間が経過しました。
水道水とポリッシュウォーターで違いは見られたのかというと…
水道水の液量は1時間前とあまり変化がないように見えます。
一方で、ポリッシュウォーターは1時間の間に明らかに乾燥が進み、液量が少なくなっているように感じます。
より視覚的に分かりやすいよう、再びガラス容器に液を戻してみますね。
水道水とポリッシュウォーターの液量はこのようになりました。
同じ液量で検証を行ったにも関わらず、1時間後にはポリッシュウォーターの液量が少なくなっています。
エタノールは水よりも蒸発しやすい性質を持ちます。
ポリッシュウォーターにはエタノールが20%含まれているため、水道水よりも蒸発しやすく、液量が減りやすいのです。
また、表面張力が低いことで、エタノールの表面積が大きくなり、蒸発面積が広いことも原因の一つでしょう。
ワックスとのなじみが良く、液が広がりやすいため、鏡面を広く均一にできる…。
加えて、乾燥が速く、ワックス層の形成を早めることができ、鏡面磨きの時短につながる…。
ポリッシュウォーターはただの水にはない、素晴らしい機能が備わっているのです。
- ワックスとなじみやすい
- 広がりやすく、ワックスを薄く・均一に伸ばしやすくなる
- 乾燥が速く、鏡面層を形成するまでの時間を短縮できる
ポリッシュウォーターを鏡面磨きに活用する
ここからは実際に、ポリッシュウォーターを使用した鏡面磨きをやってみます。
磨くのはリーガルのストレートチップ、色はブラウン。
この革靴のトゥ(つま先)部分を中心に、サイドやかかとをワックスとポリッシュウォーターで磨きます。
使うワックスはビーズワックスポリッシュ
使用するワックスはサフィール(SAPHIR)のビーズワックスポリッシュ。
色はニュートラル。
淡いブラウンの革の質感を楽しむため、この靴にはニュートラルのクリームやワックスを使い続けています。
ワックスを直接指にとり…
革靴のトゥや塗ります。
靴の芯が入った、アッパー(甲革)のサイド部分やかかとにもお好みでワックスを塗っていきましょう。
両足ともワックスを塗り終わった状態がこちら。
革がマットな質感になり、鏡面の土台を作ることができていますね。
ポリッシュウォーターで磨く
ここからポリッシュウォーターを使って水研ぎをしていきます。
水研ぎならぬ、ポリッシュウォーター研ぎです。
まずはワックスのフタにポリッシュウォーターを注ぎます。
ポリッシュウォーターをハンドラップに入れて使うのもオススメです。
入れようと思えば全量入りますが、6割くらいを投入。
こんな感じで。
ハンドラップにポリッシュウォーターを入れておくと使用量調節が容易なので、一気に使いやすくなります。
磨き用クロスを指に巻いて…
ポリッシュウォーターをクロスに染み込ませます。
ポリッシュウォーターは、水よりも「スッ」とクロスに浸透していく感触があります。
表面張力の低さが関係していますよ。
そして、ポリッシュウォーターが染み込んだクロスでワックスをポンポンと叩き、ごくわずかにワックスを付けます。
なぜ、少量のワックスを付けるのかといいますと。
- 革のデコボコをワックスでならすのが光沢を出すために必要なので、ベースとして塗ったワックスを平らにするのは重要
- 新たなワックスをほんの少し足し合わせて革の隙間を埋めていくと、より革の表面が平らになる
上記の理由があるからです。
そして、ワックスを塗ったところをクロスで磨いていきます。
円を描きながら、優しくなでるように磨きましょう。
力が強いとワックスがクロスに剥ぎ取られてしまい、鏡面に仕上げづらくなります。
磨き途中で気づいたのですが、やはりポリッシュウォーターは伸びがよく、水滴になりにくいです。
水道水の場合、クロスに大目に染み込ませると、磨いた時に水滴として靴の上に残ることがあります。
ですが、ポリッシュウォーターは靴の上には残るものの、水滴ではなく、靴にベタッと張り付いたような状態になります。
ポリッシュウォーターの表面張力の低さをここでも感じられますし、広がりやすいということは乾燥の速さにもつながります。
靴の上に残った水滴はワックスの均一さを損なわせ、くもりの原因となることもある厄介なもの。
ポリッシュウォーターはそんな不安要素の影響も受けにくいのです。
ポリッシュウォーターを使いつつ、磨き続けます。
徐々にツヤが出てきました。
このまま一気に、ですが、優しいタッチは変えずに一心不乱に磨き続けます。
鏡面の仕上がりはいかに!?
仕上りはこんな感じに。
バッチリ輝きが出ましたね。
ポリッシュウォーターを使った鏡面磨き前後での革靴の状態を比較してみましょう。
革の表情が全然違いますね。
みずみずしい上品な輝きが現れています。
ポリッシュウォーターを使うとワックスが滑らかに・平らになりやすくなるため、水を使ったいつもの鏡面と比べて輝きがより強く感じられる印象に。
磨いている最中も、ポリッシュウォーターが革上に水滴として残ることもなく。
無事、くもりない光沢を手に入れることができました。
ポリッシュウォーターで鏡面を確実に・より美しく
本記事ではポリッシュウォーターの効果の詳細と、使った感触について書きました。
鏡面磨きをアシストしてくれるポリッシュウォーターは、革靴を磨く際に水の代わりとして使うことで、鏡面を作りやすくしてくれます。
その秘密は、エタノールが配合されていることによる、ワックスとのなじみやすさと表面張力の低さ。
水よりも蒸発しやすいため、鏡面の光沢がくもることを抑える効果もあり。
靴クリームやワックスといった主役級のシューケア用品ではないものの、靴磨きをサポートしてくれるいぶし銀的な活躍をしてくれる、ポリッシュウォーター。
ポリッシュウォーターを活用して、靴磨きの幅を広げてみてはいかがでしょうか?
靴を磨くのがもっと楽しくなります。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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