起毛革の1種、スエード。
革の裏側である床面をバフ掛けして革の繊維を立たせ、風合い豊かな表情を与えている革種がスエードです。
スムースレザーとは異なる立体的な美しい革面は唯一無二。
起毛しているため水弾きが良く、ちょっとした雨くらいならへっちゃら。
そのため、スエードを使った革靴は、
という日でも気兼ねなく履ける気楽なシューズ。
そんな便利で美しいスエード靴。
購入したらすぐにでも履き下ろしたいわけですが、いったん落ち着きましょう。
そのまま履き下ろすと、
- 大きく深い履きジワが付く
- 水シミができる
なんてリスクがあります。
というのも、購入直後のスエード靴は乾燥しているから。
革が乾いているため、屈曲に弱くなります。
また、革繊維中の油分が乏しいため、水が吸収されやすくなりシミの発生リスクが高まります。
買ったばかりのスエード靴は、お手入れして革へ水分と油分をしっかり補給。
万全の状態で履き下ろしましょう。
プレメンテすれば、美しい状態で末永く愛用できるようになります。
というわけで、本記事ではスエード靴のプレメンテ方法を実践解説します。
- スエード靴を購入したらまず何をすれば良いの?
- スエード靴を履き下ろすときに気を付けるべきことは?
- スエード靴のプレメンテ方法を知りたい
スエードの革靴は風合い豊かな表情と水への耐性が魅力
スエードは起毛革の1種で、革の表面が起毛した素材。
革の床面をバフ掛けして革を毛羽立たせたのがスエードです。
- 革の裏側のこと
- 表側のなめらかな面を銀面と呼ぶ
スエードの特徴は起毛による立体的な革の表情。
風合い豊かな質感を存分に味わえます。
また、表面が起毛しているため表面張力が強く作用します。
そのため、水弾きが良い特徴も。
一般的なスムースレザーの場合、水に濡れると革に浸透して水シミになることがあります。
しかし、スエードの場合は毛羽立ちによって水が浸み込みにくいので水シミになりにくいのです。
とりわけ、スエードで作った革靴はちょっとの雨ならなんてことなく履けます。
スエード靴は通常の革靴の弱点を克服した、
- 高機能性と美しさを両立
した革靴です。
スエード靴を履き下ろす前に気を付けたいこと
さて、そんな便利なスエード靴。
気に入った1足を見つけて購入したときに気を付けておきたいことがあります。
それは、スエードの乾燥。
購入直後のスエード靴は革が乾燥しています。
というのも、スエード靴がいつ作られたかが分からないから。
1か月前にできたかもしれないし、10年前に作られたものかもしれません。
革は時間とともに水分や油分が抜けて乾燥が進んできます。
そのため、作ってから長い時間経過したスエードは乾燥しているのです。
そして、乾燥したスエードからはしなやかさが失われます。
スエードの革が硬くなるのです。
硬くなったスエードのまま靴を履き下ろすと、甲に思いのほか深い履きジワが入ってしまうことが…。
また、スエード内部に油分が不足しているため、水弾きが弱まり革内部にまで水分が浸透。
水シミができるリスクがあります。
加えて、革が色あせたようになり風合いが低下。
せっかくのスエードの豊かな表情が台無しです。
だからこそ、スエード靴は履き下ろす前にお手入れして、革に潤いと栄養を補給するのが大事。
あらかじめプレメンテしておけば、万全の状態でお気に入りのスエード靴を履き下ろせます。
スエード靴のプレメンテ方法を実践解説
スエード靴を履き下ろす前には事前のお手入れ、つまりは、
- プレメンテナンス
が重要です。
とはいえ、
との疑問が浮かびます。
そんなわけで、この項目ではスエード靴を履き下ろす前のプレメンテ方法を実践解説していきます。
お手入れするのはこちらのスエード靴。
チャーチのライダーです。
ところどころスエードの渇きを感じます。
どことなく色あせた印象を受けますよね?
スエードが乾燥している証拠です。
上質なスエードを使ったチャッカブーツですから、プレメンテをして良好なコンディションに整えてから履き下ろすことにします。
- 使う道具
- プレメンテ手順
上記を詳しく説明しますね。
作業に移る前に靴紐を外しておきましょう。
靴紐が付いたままでは、その下のスエードにまで栄養が届かないですからね。
スエード靴のプレメンテに使う道具
まずはスエード靴のプレメンテに使う道具を紹介します。
それが以下の道具です。
- スエードブラシ
- 栄養補給ミスト
- 防水スプレー
- 革用クリーム
スエードのアッパー(甲革)には、
- スエードブラシ
- 栄養補給ミスト
- 防水スプレー
を使用。
靴の内側の革には、
- 革用クリーム
を使います。
アッパーのスエードのみのケアをするなら道具は3つだけでOKです。
今回お手入れするチャーチのライダーは靴の内側(ライニング)が革のため、その部分には通常の保革クリームを使います。
スエード靴のプレメンテ手順
では、ここから実践編です。
スエード靴のプレメンテを実際にやっていきます。
アッパー(甲革)のスエードとライニング(靴の内側)の革の2種類のケアをしていきます。
手順としては以下の通り。
- ホコリを落とす
- 栄養補給ミストを噴きつけて乾燥させる
- 毛並みを整える
- 防水スプレーを噴きつけて乾燥させる
- 保革クリームを塗る
ソール(靴底)が革製の場合、レザーソールのお手入れ手順にしたがってお手入れしましょう。今回のスエード靴は靴底がクレープソールのため、手入れはしません。
スエードのお手入れ|ホコリを落とす
まずはスエードのホコリを落とすところから。
スエードブラシでブラッシングして、スエードの毛を立たせながらホコリをかき出します。
スエードの毛は互いに絡まりあい、その間にホコリが埋まっていることが多いです。
スエードの毛を立たせてホコリをかき出すイメージでブラッシングしましょう。
スエード用のブラシは毛先が硬い豚毛や真鍮でできているので、効率良く毛を起こしホコリをかき出せます。
手首のスナップをきかせてブラッシング。
ブラッシングだけでも毛の流れが整い、スエードが美しくなります。
さすがはチャーチのスエードです。
革の豊かな風合いが表れています。
スエードのお手入れ|栄養補給ミストを噴きつけて乾燥させる
続いて、スエード用の栄養補給ミストで革に栄養を与えていきます。
なぜミストかというと、通常の保革クリームはスエードの毛で引っかかってしまうため、薄く塗り広げられないから。
どうしても塗りムラができます。
クリームが付きすぎた部分はシミになるため、よくありません。
効果的な栄養補給ができないのですね。
その点、ミスト状の栄養剤なら毛羽立ったスエード素材でも成分をまんべんなく届けられます。
そんなわけで、今回使うのはスエードリッチモイスチャー。
スプレータイプのスエード用栄養補給剤です。
靴から約20cm離れたところからスプレーして、ミストを噴き付けます。
アッパー全体にまんべんなく。
グルっと1周して噴き残しがないようにしましょう。
スエード全体に噴きつけたら、乾くまでしばらく待ちます。
ところどころシミになっていますが、乾けば消えるので安心してください。
ただし、スプレーしすぎてビショビショになるとシミができるリスクがあります。薄く全体にスプレーするのを意識しましょう。やりすぎ厳禁です。
スエードのお手入れ|毛並みを整える
栄養補給ミストでスエードの潤いを取り戻したら、毛並みを整えるためブラッシングします。
スエードブラシでブラッシング。
先程はホコリを落とすために毛を起こすのを意識しましたが、今回は毛並みを整えるのを意識してブラッシングします。
一方向にブラシ掛け。
起毛の乱れを正すのです。
スエードのお手入れ|防水スプレーを噴きつけて乾燥させる
仕上げに防水スプレーを噴きつけておくと、汚れが付きにくくなるのでおすすめです。
ただでさえ水弾きが良いスエードの防水性がアップします。
この記事では防水スプレーとして1909プロテクトスプレーを使います。
フッ素樹脂が革に浸透し、内部から水への耐性を高める便利な防水スプレーです。
離れた場所からスプレーします。
アッパー全体にまんべんなくスプレーしたら乾燥を待ちます。
これにてスエードのお手入れは終了です。
ライニングのお手入れ|保革クリームを塗る
続いて、ライニングのお手入れへ移ります。
靴の内側のケアですね。
チャーチのライダーはライニングも革製。
そのため、革用クリームで潤いと栄養を補給することに。
ライニングをプレメンテすれば、革が柔らかくなって靴の返りが向上。
歩きやすい靴に仕上がるのでおすすめです。
さて、まずは保革クリームを塗っていきます。
デリケートな革でも安心して使える上に高い保湿力を誇る、スペシャルナッパデリケートクリームを使います。
クリームを手に直接取って…
革クリームを靴の内側に薄く塗り伸ばしていきます。
側面にも薄く塗り広げましょう。
左右両方のライニングにクリームを塗ったら5分程度時間を置き、革へクリームが浸透するのを待ちます。
これにてプレメンテは終了。
靴紐を取り付けて靴の外観を見てみます。
スエードの色が均一に。
革がしっとりとして乾燥が解消。
豊かな表情に仕上がりました。
スエードの美しさを際立たせることに成功しましたよ。
スエード靴のプレメンテのビフォーアフター
スエード靴のプレメンテの効果はどれほどのものなのか、わかりやすいようにお手入れ前後で靴の見た目を比較してみますね。
プレメンテ前はスエードの色味が不均一。
- 濃いところ
- 薄いところ
がまちまちでしたが、ケア後はスエードの見た目が均一できれいに。
スエードの毛並みが整い、フワッとした印象。
柔らかな表情で上品に仕上がりました。
エレガントな雰囲気を引き出すのに一役買っていますね。
当然、栄養補給もバッチリなので、履き下ろしても必要以上にシワが入りません。
革への負荷を最小限に抑制できます。
プレメンテ後の状態なら、履き下ろしても何ら問題ありません。
スエードの独特で上品な空気感を思う存分楽しめますよ。
買ったばかりのスエード靴をプレメンテして気持ち良く履き下ろそう
本記事では買ったばかりのスエード靴をプレメンテする方法について書きました。
購入直後のスエード靴は革が乾燥しています。
そのまま履き下ろすと、乾燥してしなやかさを失った革への負担が大きく、大きな履きジワの原因に。
せっかくのスエードの風合いが台無しです。
スエード靴を履き下ろす前には、プレメンテをして革に潤いと栄養を与えましょう。
プレメンテすれば、いざ履き下ろしたときにスエードへ過度なダメージを与えず、寿命がのびます。
見た目が美しくなり、履いていて気分が良いスエード靴になりますよ。
新しくスエード靴を買ったら、プレメンテして万全の状態で履き下ろしましょう。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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