新品の革靴を履き下ろしたとき。
アッパー(甲革)に思いのほか深い履きジワが入ってテンションが下がったときがありませんか?
それ、革の乾燥が原因の1つです。
もちろん、革質の影響もありますが、基本は革の過度な乾燥によるもの。
というのも、革に水分や油分が不足して、しなやかさが低下。
いざ履き下ろして歩いたときの、
- 革が屈曲した負荷
を受け流しきれず、シワが深くなるのです。
深いシワはお世辞にもきれいとは言えません。
できることなら入れたくないわけです。
革のシワを完全に抑えることはできませんが、被害を最小限に抑えることはできます。
深い履きジワを抑えて最小限に被害をとどめるためには、予防が大事です。
1度入った履きジワは元には戻りませんから、深い履きジワが入らないようにするのが重要。
履きジワの程度は革のしなやかさで決まります。
革がしなやかだと深いシワが入りにくいです。
革のしなやかさをキープするために必要なのは保湿。
革に水分や油分を絶やさないために、保湿が必要なのです。
革を保湿するには、
- 新品の革靴を履く前のお手入れ
がとても重要。
履く前に、あらかじめ革に潤いと栄養を与え、革のしなやかさを確保。
歩行時の屈曲による負荷を受け流せる万全の状態に整えておけば、シワを最小限に抑えられます。
本記事では新品の革靴に深い履きジワを入れないための事前お手入れ方法について解説します。
- 新品の革靴に醜い履きジワを入れたくない
- 革靴の深い履きジワを防ぐ方法を知りたい
- 買ったばかりの革靴をきれいなまま履き続けたい
新品の革靴はいつまでもきれいに保ちたい
新品の革靴はとても美しいです。
そんな相反する気持ちに心揺らぎます。
革靴の美しさは見ているだけでもテンションが上がりますから、履いて汚れた姿を見るのはしのびない…。
せっかく買った新品状態の革靴には、嬉しいながらも複雑な感情がわくものです。
新品の革靴は履くとシワが入る
新品の革靴をきれいに履く上で、真っ先に思い浮かぶ懸念点が汚れです。
ただ、汚れ以外にも革靴の見た目を大きく左右する要素があります。
それが革靴の履きジワ。
履きジワは革靴のつま先部分、指の足が曲がる部分にできます。
歩行時にかかとを上げた際、どうしても革靴が曲がるため、革が屈曲。
シワが入るというわけです。
原理を考えれば、革靴の履きジワは避けようがありません。
新品状態のツルっとした革の状態をキープすることは不可能です。
ただ、革靴に入るシワの程度は、ある程度の調整が可能です。
革の状態によって履きジワの大きさと深さは変わる
革靴に入るシワの程度は、以下の状態で変わってきます。
- 革のきめ細かさの程度
- 革の乾燥の程度
履きジワは革が屈曲したときにシワの跡が残ってできます。
そのため、
- キメの粗い革では大きく目立つ
- キメの細かい革では小さく目立ちにくい
上記の傾向があります。
上質なカーフレザーを使った高級革靴の場合、革はきめ細かいです。
そのおかげで、キメの粗い革に比べて履きジワが小さく抑えられます。
革靴の履きジワの問題点
さて。
1度入ったシワを消すことはできません。
もちろん、目立たなくすることはできますが、あくまでも対処法。
根本的な解決ではないわけです。
履き下ろしてシワが入った革靴とどう付き合っていくかが大事。
愛着を持って履き続けるには、深い履きジワは障害になります。
というのも、履きジワは見た目を損なうだけでなく、足に痛みをもたらす部分があるから。
あまりに深い履きジワは屈曲した際に足の甲の皮を巻き込み、痛みをともないます。
いわゆる、
- 靴に嚙まれる
状態です。
履きジワは見た目の美しさを損ねるだけでなく、足への負担を高める現象なのです。
革の状態を整えれば履きジワは最小限で抑えられる
厄介な革靴の履きジワですが、どの程度の履きジワが入るかはコントロールできます。
カギを握るのは革の状態です。
革が含む水分や油分の量によって履きジワの程度は変わります。
というのも、水分や油分によって革のしなやかさが違ってくるからです。
水分や油分をたっぷり含んだ革は柔らかでしなやか。
しなやかな革は歩行時の靴の屈曲のストレスを受け流してくれます。
一方、水分や油分がなくなった革は乾燥して硬くなっています。
乾燥して硬くなった革は、靴が曲がったときのストレスを受け流せず、革の屈曲部分に負荷が集中。
結果として、乾燥した革にはシワが入りやすく、深いものになってしまうのです。
裏を返せば、潤い十分なモチモチの革の場合、
- 履きジワは最小限に抑えられる
ということ。
革靴を美しく保つためには、新品の革靴を履き下ろす際、革に水分と油分をしっかり補給することが肝となります。
新品の革靴を買った後のお手入れ方法
新品の革靴を履き下ろすにあたって、履きジワを最小限に抑えるべく、購入直後のお手入れをしていきます。
お手入れするのはこちらの革靴。
買ったばかりの新品。
ダークブラウンのウイングチップでエレガントな印象の1足。
見ているだけで気分が上がり、今すぐ履きたい気持ちが高まります。
ただし、ここで注意点が。
買ったばかりの革靴は革が乾燥していることがほとんどです。
というのも、お店にディスプレイしている間にだんだんと潤いが抜け、乾燥が進むから。
乾燥した革は硬くなり、履きジワが深く大きくなります。
上品で美しい革靴だけに、醜い履きジワは入れたくないです。
きれいに履き下ろすためには、履く前にお手入れして革をしなやかにモチモチとした質感にしておくことが大事。
ということで、早速お手入れしていきます。
手順は以下の通りです。
- ホコリ落とし
- 汚れ落とし
- 保革
- 磨き上げ
革靴を美しいまま履き続けるため、履き下ろし前の最初のケアはとても大事です。
履き下ろし前のお手入れをするときは、靴ひもを外しましょう。
羽根の下までケアが行き届きます。
ホコリ落とし
まずは革靴のホコリを落とします。
新品の革靴とはいえ、お店で保管している間に革にホコリやごみが乗っているかもしれません。
馬毛ブラシでホコリやごみを払い落とし、革をきれいにしていきます。
羽根の裏側もしっかりとブラッシング。
馬毛ブラシを使う理由は、毛先が細く柔らかだから。
革靴の細かなところまで毛先が入り込み、ホコリをしっかり払い落とせます。
汚れ落とし
続いて、革靴の汚れを落とします。
新品の革靴には汚れという汚れは付いていないですが、靴クリームは塗ってあります。
革靴製造時に靴クリームやワックスで美しく仕上げているからです。
しかし、靴クリームは時間とともに酸化して劣化。
革の風合いを損ねる原因になります。
購入したタイミングで古い靴クリームを落としてあげましょう。
クリーナーを布地に浸み込ませて…
革靴を拭きます。
新品の革靴とはいえ、古い靴クリームが付いているのでクロスには汚れが移っています。
新品の革靴であろうと、気を抜かず汚れ落としをしておきましょう。
両足ともクリーニングしたら次の工程へ進みます。
保革
この工程は非常に大事。
革へ潤いと栄養を補給する保革作業です。
保革に使うのは以下の道具。
名称 | 用途 |
リッチモイスチャー | 潤い補給特化型のケアクリーム |
クレム1925 | 革にツヤを与える靴クリーム |
2種のクリームです。
リッチモイスチャーで革に水分を与えてから、クレム1925で油分を与えるとともに革の見た目を整えます。
リッチモイスチャーを指に取り…
革にヌリヌリ。
アッパー全体にまんべんなく塗り込んだら、豚毛ブラシでブラッシング。
クリームをなじませます。
続いて、クレム1925を重ね塗り。
クリーム塗布用のペネトレィトブラシに靴クリームを取り分けて…
アッパーに塗っていきます。
リッチモイスチャーのときと同様に、豚毛ブラシでブラッシング。
靴クリームを革にすり込むイメージで。
これにてアッパーへの保革は終了なのですが…。
こちらの靴はライニング(靴の内側)が革製です。
そのため、アッパーと同じくライニングにも水分と油分を与えていきます。
ライニングの保革に使うのはサフィールノワールのスペシャルナッパデリケートクリームです。
柔らかなクリームを指に取ります。
そのままライニングに塗っていきましょう。
内側部分はブラッシングしにくいので塗りっぱなしでOK。塗り過ぎてべたついた場合は、クロスで拭き取りましょう。
内側の革への水分補給をしたら次の工程へ進みます。
磨き上げ
続いて、革に残った余分なクリームを拭き取りつつ磨き上げる作業です。
シューケアクロスで革靴を乾拭き。
革のべたつきを解消しつつ、靴クリームをなじませて控えめなツヤを出していきます。
アッパー全体を拭き上げた後は靴ひもを通して…
お手入れ完了です。
アッパーへの保革が完了。
革がモチモチとして風合いに奥行きがでました。
心置きなく履き下ろせる状態に。
履きジワを最小限に抑えて、革靴を美しくキープし続ける準備が完了しました。
新品の革靴を買った後のお手入れでシワは抑えられる
本記事では、新品の革靴に深い履きジワを作らないためのお手入れ方法を解説しました。
購入直後の革靴は革が乾燥しています。
乾燥した革靴をそのまま履き下ろすと、歩行時の屈曲のダメージが革を直撃。
深く大きな履きジワが入り、美しさを損ねます。
買ったばかりの革靴を履く際には、事前のお手入れが大事です。
保革クリームを塗って水分と油分を補給すれば、革に潤いが戻りしなやかになります。
歩行時に革靴へかかる負荷を受け流し、履きジワを最小限に抑制可能です。
革靴の美しい状態をキープしやすくなります。
上記を合言葉に、革靴ライフを楽しみましょう。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
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大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。