買ったばかりの革靴をすぐダメにしたくない
それならば、事前のお手入れは必須です。
新しい革靴を買ったら、必ずしておきたいのが履き下ろす前のお手入れ。
いわゆる、
- プレメンテ
です。
プレメンテには革の状態を整え、履きジワが必要以上に深く入らないようにする効果があります。
長く履きたい革靴であればあるほど、履き下ろす前のプレメンテは大事です。
そして、革靴のプレメンテをするとき、意識しておきたい3つのポイントがあります。
それが以下の3点です。
各ポイントを意識したプレメンテをすれば、いざ履き下ろすときに革靴の状態が万全になり、気持ち良く履き下ろせます。
今回、イタリアのシューズブランド「サントーニ」の革靴を新たに購入したので、プレメンテをすることにしました。
ということで、本記事では革靴を履き下ろす前のプレメンテ方法を意識したい3つのポイントとともに解説します。
- 新しく革靴を買ったけど、履き下ろす前って何かすることある?
- 革靴のプレメンテってどうやるの?
- 革靴のプレメンテで気をつけることは?
新しい革靴を買ったら
新しく革靴を買ったとき、めちゃくちゃ嬉しいですよね?
筆者はテンションマックスになります。
そのままの勢いで履き下ろして出掛けたくなりますが…。
それはちょっとストップ。
まずは深呼吸。
買ったばかりの革靴にはリスクがあります。
革靴のリスクとはどのような問題なのか、次の項目で詳しく見ていきます。
買ったばかりの革靴の問題点
買ったばかりの革靴が持つリスクは、
こと。
というのも、革は自然と乾燥が進みます。
時間とともに、革内部の水分や油分が失われていくのです。
そして、革靴が店頭に並んでいる間にも革の乾燥は進んでいきます。
もっといえば、その革靴が作られてからどのくらいの時間が経っているのか分からず、その間、どれほどの潤いや栄養が革から失われたのかまったく見当がつかないです。
上記がまさに、買ったばかりの革靴が持つ問題点。
そして仮に、革が乾燥していた場合、とんでもない重大なトラブルを引き起こします。
それは、履き下ろしたときの履きジワの刻まれ方。
買ったばかりの革靴は、当然ですが履きジワが入っていない状態です。
ですが、実際に履いて歩くと足の動きに合わせて革靴が屈曲するため、履きジワが入りますよね?
履きジワは必ず入るもので、避けることはできないのですが…。
革の乾燥が進んでいる場合、履きジワが深く刻まれ過ぎてしまうのです。
歩行時に革靴に掛かる負荷は意外と大きいですからね。
革は乾燥すると、しなやかさが失われ柔軟性が低下します。
硬くなってしまった革に負荷がかかると、力を受け流せずにダイレクトに伝わることに…。
革靴に深く広範囲の履きジワが入ってしまいます。
そして、それは革のひび割れに繋がり、修復不可能なダメージとして永遠に残ることに…。
革靴を履き下ろす前のお手入れが大事
だからこそ、深く大きな履きジワを作らないため、革に水分と油分を与え、しなやかな状態にすることが大事。
健全な状態の革であれば、歩行時のテンションをしなやかな革が受け流し、最低限の履きジワが入るだけですみます。
刻まれる履きジワがどことなく美しく上品な印象に。
履きジワはその靴を履き続ける以上、ずっと付き合っていくもの。
だからこそ、できることならきれいに刻みたいです。
新しく買った革靴はプレメンテで革にしなやかさを与え、履き下ろしの儀式に備えましょう。
革靴のプレメンテで意識すべき3つのポイント
さて、革靴のプレメンテの必要性が分かったところで…。
実際のプレメンテの際には以下の通り、意識したい3つのポイントがあります。
- 古い靴クリームを取り除く
- 革に潤いと栄養を与える
- 革にツヤを出す
上記は革靴を乾燥から守り、気分良く革靴を履き下ろすために必要なこと。
次の項目から詳しく解説しますね。
古い靴クリームを取り除く
プレメンテで意識すべきことの1つめは、
- 古い靴クリームを取り除く
こと。
革靴は完成した後、靴クリームやワックスで美しく仕上げられてから出荷されます。
つまり、店頭に並ぶ革靴には、すでに靴クリームやワックスが塗ってある状態です。
ただ、先ほども述べたように、革靴ができてからどれだけの時間が経っているかは分かりません。
革の乾燥と同じく、靴クリームが時間とともに酸化して劣化しているかもしれないのです。
また、古い靴クリームは革に潤いを補給するために使う保革クリームの浸透を妨げます。
革にしなやかさを与えるための前準備として、買ったばかりの革靴に塗られている古い靴クリームはきっちり取り除きましょう。
古い靴クリームを取り除くために使うのは靴用クリーナー。
クリーナーを含ませたクロスで革を優しく拭き、表面の靴クリームを落としてあげましょう。
革に潤いと栄養を与える
革靴のプレメンテで意識すべきことの2つめは、
- 革に潤いと栄養を与える
こと。
プレメンテでもっとも大事なポイントです。
乾燥した革に潤いと栄養を与え、革にしなやかさを取り戻し、履きジワを必要以上に大きくしないようにします。
革への栄養補給に特化した保革クリームを塗れば、革の乾燥を防ぎ、モチモチとした、
- しなやかで風合い豊かな革
に仕上がります。
しなやかな革は歩行時の屈曲による負荷を受け流し、力を分散。
履きジワを軽減し、革をクラック(亀裂)から保護します。
長く履き続けたいなら、プレメンテで革に水分と油分をギューンと補給しましょう。
革にツヤを出す
プレメンテ時に意識したいポイント3つめは、
- 革にツヤを出す
こと。
油分の多い靴クリームや靴用ワックスを使って革の表面に油膜を張り、光沢を与えるのです。
ツヤを出すのは、
- 革靴を美しく仕上げ、履くときのテンションを上げるから
という理由だけではありません。
もちろん、美しいツヤで気分を高揚させるのも大事なのですが、実は機能面でも意味のあること。
というのも、革にツヤを与えるということは…。
要は、
- 革の表面にロウの膜を張る
ということ。
革に潤いと栄養を補給した後、ロウの成分でフタをして、革内部に浸透した水分や油分を逃さない役目を果たします。
人間のお肌でも、化粧水や美容液を塗った後に乳液を重ねて、潤い成分を閉じ込めますよね?
それと同じです。
せっかく保革クリームで革に栄養を与えたのだから、その上から油膜を張って、モチモチした革の風合いをキープしようという魂胆。
保革クリームを塗った後は、ツヤ出しに重点を置いた靴クリームやシューポリッシュを塗って、潤いを逃がさない処置を施しましょう。
革靴のプレメンテ方法を解説
では、ここからは実践編。
先ほど紹介したプレメンテで意識すべき3つのポイントを踏まえ、購入したばかりの革靴のお手入れをしていきます。
今回、ケアするのはこちらの革靴です。
イタリアのシューズブランド「サントーニ(Santoni)」のダブルモンクストラップ。
キメ細かい、深い風合いが美しい上質な革を使ったレザーシューズです。
しなやかな革質ですが、乾燥がどの程度進んでいるかは中々判断しにくいので、このまま履き下ろさずにプレメンテします。
プレメンテの前にストラップを外しておきます。
靴ひもの革靴の場合は、紐をほどいて外しておくと革を満遍なくケアできます。
ここで、プレメンテに使う道具を一覧にまとめます。
- 馬毛ブラシ
- 汚れ落としクロス
- 靴クリーナー
- 豚毛ブラシ
- 保革クリーム
- クリーム塗布用ブラシ
- 靴クリーム
- レザースティック
- レザーソールケアクリーム
- 山羊毛ブラシ
- 磨きクロス
- ハンドラップ
レザースティックとレザーソールケアクリームは革靴がレザーソール(革底)の場合にのみ使います。ゴム製ソールの場合は不要です。
プレメンテの作業手順は以下の通り。
- ホコリを落とす
- 古い靴クリームと汚れを落とす
- 水分と栄養を補給する
- 靴クリームを塗る
- 磨いてツヤを出す
早速、プレメンテ開始です。
ホコリを落とす
まずは、革靴のホコリを落とすところから。
ホコリはいたるところに存在。
革靴を置いておくだけでもホコリは付きます。
まだ履き下ろしていないからといって、油断は禁物。
馬毛ブラシでしっかりブラッシングして、ホコリを払い落としましょう。
ストラップを開いて、タンの部分も抜かりなく。
毛先が柔らかく細い馬毛は革靴の細かな箇所にも入り込み、ホコリをかき出せますよ。
ホコリが残っていると、この先に控えている作業の汚れ落としや栄養補給の効果を引き下げてしまいます。
ホコリはしっかり取り除いておきましょう。
古い靴クリームと汚れを落とす
続いて、古い靴クリームや汚れを落とします。
革靴は作られた時点で靴クリームやポリッシュで仕上げられていますから、古い靴クリームを落とす必要があります。
古い靴クリームが残っていると、ホコリ同様、革への栄養補給を邪魔しますからね。
また、自分が購入する前に試着した人がいたり、手に取って眺めたりしている人がいると、汚れや皮脂が付いている可能性があります。
店頭に並んでいる間にも汚れが付くかもしれないですよね?
古い靴クリームを落とすだけでなく、汚れを落とす意味合いでも汚れ落としは大事です。
革靴を優しく拭きます。
力を込めず、なでるように。
力を入れすぎると、革の色が落ちてしまったり、革に必要な油分さえ取り除いてしまいます。
お手入れで革を傷めたら本末転倒。
繊細なタッチで汚れ落としをしましょう。
革を満遍なく拭いた後のクロスの状態はこちら。
予想以上に古い靴クリームが付きましたね。
サントーニの職人の方々がきっちり仕上げてくれた証拠でしょう。
僕の手元に届くまで、この革靴を守ってくれた靴クリームです。
感慨深いものがあります。
靴クリーナーで拭き続けると、色を落とし過ぎることがあるので、革全体を1~2回程度拭けばOKです。
クロスに付いた靴クリームに思いをはせながら、コバもついでに拭いておきます。
この靴を作ってくれた人に感謝しながらクリーニングしましょう。
水分と栄養を補給する
次は、最も大事な工程。
革に水分と油分を与えます。
使うのは、ブートブラック(Boot Black)のリッチモイスチャー。
アルガンオイル配合の革への潤い・栄養補給に特化した革用ケアクリームです。
革に塗るとグングン吸収され、栄養補給効果抜群なのが目に見えてわかります。
価格は決して安くないですが、実際に使うと、それ以上の価値があると実感します。
ファンが多い保革クリームです。
ということで、リッチモイスチャーを革に塗っていきます。
直接指にとって…
ガッツリ塗り込みましょう。
手のひら全体を使って、押し込むようにクリームを塗ります。
手の温度が革への浸透を助けます。
両足に塗り終わったら、5分程度待ち、クリームが革になじむのを待ちます。
その後、豚毛ブラシでブラッシング。
馬毛よりコシの強い豚毛は、クリームを塗り広げて革になじませる効果が高いです。
大きなストロークで革にクリームを押し込むイメージでブラッシングします。
磨きクロスで余分なクリームを拭き取って…
これにて潤いと栄養を与える作業は終了。
次はツヤ出し作業です。
靴クリームを塗る
この工程では、油分多めの油性の靴クリームを塗ってツヤのベースを作ります。
美しいツヤの正体はロウ分。
ロウ分が革表面に油の膜を張り光沢が生まれます。
革の上にできる油膜は、先ほど塗った栄養成分をしっかり閉じ込める効果を発揮。
革を良好なコンディションにキープしやすくなります。
今回は油性クリームのクレム1925を塗ることに。
クリーム塗布用ブラシにクレム1925を米粒1つ程度取って…
塗ります。
この工程で塗る靴クリームはごく少量でOKです。
ものすごく薄い油膜を表面に作るイメージで。
クリームの塗り過ぎは革のべたつきの原因になりますからね。
特に、油性のクリームの場合はべた付きやすいですから注意が必要です。
小型のクリーム塗布用ブラシを使うと、コバの隙間の革にまでクリームを行き渡らせることができるので便利。
両足に靴クリームを塗った後は、豚毛ブラシでなじませる作業へ。
先ほどの保革クリームを塗った時と同様に、大きなストロークでブラッシングします。
革の上に残った余分な靴クリームを取り除く効果もありますので、アッパー(甲革)全体を満遍なくブラッシングしましょう。
これで、革の上にロウの膜を張れました。
いまいちツヤが出ていないので、次の工程で光沢を強めます。
磨いてツヤを出す
クロスで磨くと革表面のロウ分が均され、ツヤが生まれます。
ツヤは革靴の美しさを引き立て、履く人の気分を高めますから、積極的に磨いていきたいですね。
ということで、磨きクロスでアッパー全体を磨き上げます。
指に巻き付けたクロスを革の上で滑らせていきます。
基本、クロスがスルスル滑るはず。
クロスが引っかかる感覚があるなら、靴クリームの塗り過ぎです。クロスできっちり取り除きましょう。
アッパーを拭き上げると、すぐに控えめなツヤが出てきます。
さらに山羊毛ブラシでブラッシングすると、クロスで磨く以上に奥行きのある深いツヤが得られます。
山羊毛ブラシにハンドラップで水を付け…
優しくブラッシング。
馬毛よりも細く繊細な山羊毛は、靴クリームの油分を粒子レベルで均一にならし、ツヤの質を高めてくれるのです。
全体を拭き上げたら、プレメンテ終了。
ストラップを取り付ければ作業完了。
保革で革がモチモチに。
革の風合いに、より奥行きが出ましたよ。
きめ細かい革の美しさが引き立ちました。
レザーソールのプレメンテも忘れずに
以上はアッパー(甲革)のプレメンテ。
革靴がレザーソール(革底)仕様の場合、アッパーと同様にソールもプレメンテするのをオススメします。
ソールは地面と直接触れ、削れやすい箇所です。
レザーソールが乾燥していると、地面との摩擦が生まれやすく、削れやすくなります。
対して、レザーソールに十分な潤いがあり、しなやかだと、乾燥した状態よりも削れにくく、ソールの寿命がのびます。
また、ソールがしなやかになると、靴の返りが良くなるため、歩行時の快適さがアップ。
足に靴がピッタリ付いてくる感覚が味わえます。
レザーソールのプレメンテはやらなきゃ損です。
アッパーのプレメンテついでに、レザーソールのケアをしておきましょう。
お手入れ方法はまず、汚れ落としから。
クリーナーの水分をソールに含ませ、これから塗るケアクリームの浸透を補助させる目的もあります。
さて、レザーソールにはソール用のケアクリームを使います。
ソールモイスチャライザーはレザーソール専用の保革クリームです。
ソールに栄養を与え、しなやかにすると同時に、防カビ剤配合でカビ発生のリスクを抑えるケアアイテム。
クリーム塗布用ブラシにソールモイスチャライザーを付けて…
ソールに塗りこみます。
この靴のように淡い色のソールだと、クリームを塗った後に変色します。
ただ、履いたら削れるので、変色はあまり気にならないですね。
クリームを塗った後はレザースティックの出番。
革をスティックで押し込むことで革の繊維をギュッと圧縮し、摩耗に強くするため。
ソールの寿命を延ばす手法の1つです。
レザースティックをソールに使うときは、滑らかな表面に傷が付かないようにレザースティックをクロスで巻いて保護しましょう。
レザースティックでソールを押し込みます。
360度、あらゆる方向からこすり、革の繊維をつぶしましょう。
革部分を全体的にこすったら作業終了です。
摩耗に強いレザーソールに仕上がりました。
革靴のプレメンテ効果で革がモチモチに
では、最後にプレメンテの効果を確認します。
アッパーがしなやかになり、控えめな光沢が出ました。
触るとモチモチ。
気持ちの良い感触です。
しなやかな触り心地で、履いたときの負荷も受け流してくれることでしょう。
履き下ろしたとき、必要以上に深く履きジワが刻まれるリスクを解消できました。
革靴を末永く履くための準備が完了。
実際に履き下ろすのが楽しみです。
履き下ろした後の履きジワはどうなった?履き下ろし前後を比較
では最後に。
プレメンテの効果を確かめるべく、履き下ろし前後で本当に履きジワが深く刻まれ過ぎないかを見てみましょう。
まずはプレメンテ後の履き下ろし前の状態がこちら。
革がツルっとしていますね。
…で。
履き下ろした後の革靴の履きジワがこちら。
履きジワはできていますが、比較的穏やかな入り方。
当然、クラックは入っていません。
履きジワが深くなりすぎず、プレメンテの効果が実感できる仕上がりに。
革靴を長く愛用するため、プレメンテは欠かせない作業です。
プレメンテしておけば、履き下ろしても革靴に醜い履きジワが入らず、きれいに履き続けられます。
革靴を買ったらプレメンテを忘れずに
本記事では購入したばかりの革靴にプレメンテが必要な理由と意識すべきポイントを含め、実際のお手入れ方法を実践解説しました。
店頭に置かれていた革靴は乾燥が進んでいるかもしれません。
その状態で履き下ろすと履きジワが深く刻まれ、革のひび割れが起きてしまうリスクがあります。
ひどい履きジワを作らないためには、革をしなやかにし、歩行時の靴の屈曲の負荷を和らげるのが重要です。
- 古い靴クリームで革へ栄養を浸透させる準備を整える
- 革に水分と油分を補給する
- 与えた栄養成分を油分でしっかりフタをしつつ光沢を与える
上記3つのポイントを意識してプレメンテをすれば、革がしなやかで美しく仕上がります。
末永く付き合っていくための準備ができますよ。
革製ソールの場合は、摩耗を防ぎ靴の返りを良くして歩行をサポートする効果もあるプレメンテ。
履き下ろす前のお手入れをして、お気に入りの1足を長く楽しみましょう。
それでは、今回はこの辺で。
少しでも参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!
靴磨きを始めたい。けれど道具をそろえるのが面倒…。
そこでおすすめしたいのが靴磨きセット。1セット買うだけで必要な道具がまるっと揃います。道具選びの手間が不要。今すぐ靴磨き可能に。
大事な革靴を劣化させないために靴を磨いてコンディションを整えるのがおすすめです。