革靴のお手入れ、していますか?
一言で革靴のお手入れといっても、靴の部位ごとにケア方法は違います。
靴磨きでアッパー(甲革)のケアは万全!
とう方も、靴の内側(インソール・ライニング)や靴底(レザーソール)までは手が回っていないこともあるのではないでしょうか?
革靴を長く履くためには、靴の外側だけでなく、内側や靴底のケアも必要です。
そして、各部位ごとに、それぞれ適した手法や道具があります。
本記事では、革靴の外側(アッパー)、内側(インソール・ライニング)、靴底(ソール)の3箇所のお手入れ方法についてまとめました。
- 部位ごとの革靴のメンテナンス方法を知りたい!
- 普段の靴磨き以外のお手入れ方法を試したい!
- 革靴の部位ごとにどんな道具がお手入れに必要なの?
革靴の外側(アッパー)のお手入れ方法
革靴の外側、つまりアッパー(甲革)のお手入れは、もっとも一般的な革靴のケア手法です。
一般的に「靴磨き」といえば、革靴のアッパーをお手入れすることを指しますよね。
靴のアッパーが汚れていると、見た目の美しさが大きく損なわれます。
また、革が乾燥すると、ひび割れ等の革トラブルの原因にもなります。
だからこそ、革靴を磨くこと、つまりはアッパーのお手入れが大事なのです。
アッパーのお手入れ方法は基本的に以下の通り。
- ホコリ落とし
- 汚れ落とし
- 保革クリームで栄養補給
- 保革クリームをなじませる
- 保革クリームをふき取る
- 磨き上げる
実際に手順を追っていってみましょう。
では、今回磨く靴に登場してもらいましょう。

アッパーに国産カーフを使用した革靴です。

作業の前準備として、靴紐を外しておくと靴磨きがしやすくなります。

ホコリ落とし
まず始めに、馬毛ブラシでブラッシングしてホコリを落とします。

ホコリを払うことを意識して、手首のスナップを利かせてブラッシングしていきます。
丁寧にブラシ掛けをして、しっかりとホコリを落としましょう。
汚れ落とし
ホコリ落としの次は、汚れ落としです。
靴用クリーナーで靴に付着した汚れや古い靴クリーム・ワックスを落とします。


革靴をいつまでも美しく保ち、長持ちさせるには汚れを落とすことはとても重要です。
靴の表面の汚れや古いクリームを落とすことで、新しく塗布するクリームの浸透性が向上し、表面の通気性が維持されやすくなります。
保革クリームで栄養補給
続いては、保革クリームを靴へ塗布する工程です。
保革クリームをクリーム塗布用ブラシである「ぺネトレイトブラシ」に米粒1、2個程の量を取ります。

靴クリームの塗布には「ペネトレイトブラシ」を使用すると、以下の恩恵を受けることができるのでおすすめです!
- 手やクロスよりも、クリームを全体的にまんべんなく伸ばすことが可能
- 手が汚れない
- コバや靴の模様(メダリオン)、革のシワ部分といった細かい部分までクリームを塗れる
- 靴クリームの分量が分かりやすい(クロスを使用すると、クロス自身にクリームが吸収されてしまい、分量が分かりづらい)
ペネトレイトブラシで革靴にクリームを塗っていきます。

アッパーとコバの間も入念にクリームを塗ります。

両足に靴クリームの塗布したら、次の工程に移ります。
保革クリームをなじませる
この工程では塗布した保革クリームを豚毛ブラシでブラッシングし、なじませます。

保革クリームを均等に革へとなじませることが目的です。
豚毛は硬く、コシがあるためクリームを伸ばしやすい特長があります。
靴クリームを塗り広げるにはにピッタリというわけなんです。

ブラッシングは動作を大きく、塗布したクリームを靴全体へと行き渡らせるイメージで行います。
クリームをふき取りつつ、磨き上げる
豚毛ブラッシングで靴クリームをなじませた後は、クロスを使って余分なクリームを拭き上げつつ、靴を磨き上げます。
指にクロスを巻いて靴を拭きます。

力を加えずに優しく。
なぜ余分なクリームを落とすのかというと、余分なクリームが残っていると革がベタついてホコリが付着しやすくなります。
クロスが革の上をスルスルと滑るようになるまで拭き上げましょう。
クロスでクリームを拭き取った後がこちらの状態。

ここまできたらあと少し。
磨き上げる
最後に、山羊毛ブラシでのブラッシングとグローブクロスでの磨き上げを行います。
いずれも、靴のツヤ出しが目的です。
まずは山羊毛ブラシの出番。
山羊毛ブラシにハンドラップで極々少量の水を付けて…

ブラッシングします。

このブラッシングは優しく、クルクルと円を描くように行います。
山羊毛は繊細ですが、その分非常に柔らかく、毛の密度も高いです。
靴クリームと革をなじませる効果がとても高く、クロスで拭き上げたときの微小な跡を完全にならすことができます。
山羊毛でのブラッシングの後は、グローブクロスでの磨き上げです。
グローブクロスを手にはめて、靴を磨きます。

グローブクロスは手を入れて使えるタイプなので、通常のクロスよりも感覚的に使いやすい仕様となっています。
山羊毛ブラシと磨きクロスの使用順序は逆でも構いません。
ご自分が納得のいく仕上がりになる順番で行ってみてください。
かくいう僕も、気分によって山羊毛ブラッシングが先か、磨きクロスの磨き上げが先かは気分次第です。
靴磨き終了
最後に、冒頭に外した靴紐を改めて通したら…

作業終了。

こういった靴の仕上がりを見ると、ますます靴磨きが楽しくなります。

革靴のお手入れはアッパーに目が行きがち…ですが!
アッパーのお手入れの目的は、汚れを落として美しさを保ちつつ、革に潤いや栄養を与えて乾燥を防ぐことです。
実はこれ、アッパーだけではなく、革靴の内側や靴底にもいえることです。
革靴の内側(インソールやライニング)、あるいは靴底(ソール)にも汚れは蓄積します。
それらが革製ならば乾燥も進みます。
そのため、靴磨きでアッパーの保革をすることはもちろん、靴の内側や靴底をケアすることもまた、重要なのです。
次の項目では革靴の内側のお手入れ方法をご紹介していきます。
革靴の内側(インソール・ライニング)のお手入れ方法
革靴の内側のお手入れは意外と忘れがちではないでしょうか?
革靴はどうしても外側の革の汚れの付き具合や乾燥に注意がいきがち。
ですが、革靴の内側、つまりインソールやライニングにも汚れは溜まっていきます。
そして、靴の内側ならではの心配事もあります。
それはカビの発生です。
蒸れやすい靴の内側はカビが繁殖しやすい環境…。
靴の内側に汚れやホコリが溜まっていると、それらを栄養としてカビが繁殖してしまいます。
靴の外側同様に、内側もしっかりとお手入れすべき箇所なのです。
靴の内側のお手入れ方法は以下の通り。
- ホコリをかき出す
- 汚れを落とし、革製の場合は栄養を与える
では、実際に靴の内側のお手入れをやっていきます。
お手入れするのはこちらの革靴。

シューキーパーを外して靴の中を見てみますと…


つま先部分にホコリが溜まっているので、ここから対処していきます。
ホコリをかき出す
まずは靴の中のホコリを取り除きます。
特につま先部分にはホコリが蓄積されやすいので、しっかりとかき出すことが重要です。
そのために、竹ブラシを使います。

竹ブラシは柄が長くとられており、靴の奥まで入り込ませることが可能。
先端はブラシになっているのでホコリを払ったり、絡めとることも簡単です。

竹ブラシの柄でホコリを浮かせて、ブラシで絡め取れば…

ごっそりとホコリが取れます。
靴の中は…

つま先に溜まっていたホコリを取り除けました。
汚れを落とし、革製の場合は栄養を与える
靴の中のホコリを取り除いた後は、ブラシでは落としきれない汚れを落とす工程に移ります。
使うのはこちらのローション。

コロンブスのレザリアンローションです。
レザリアンローションは革用の汚れ落とし。
革についた汚れを水性・油性問わず、取り除いてくれます。
革用クリーナーは数あれど、その中でもレザリアンローションはベタつきが少ないため、靴の中のお手入れにも安心して使えます。
しかも、レザリアンローションは汚れ落としだけでなく、保湿効果もある優れもの。
別の保革クリームなどで新たに油分を足す必要がないので、お手入れが手軽に行えます。
カビ止め剤も配合されており、カビの発生も抑えることが可能なのも嬉しいポイント。
蒸れやすくカビが発生しやすい靴の中も、レザリアンローションでケアしておけば、カビに悩まされるリスクも軽減できます。
レザリアンローションをクロスにつけて…

靴の内側を優しく拭いていきます。

ライニングの側面もフキフキ。

ですが、つま先までは指が届かないですよね?
そんな時は先程ホコリ取りに使った竹ブラシを活用しましょう。
柄にクロスを巻きつければ、簡易のクリーナーバーになります。


先端にレザリアンローションを染み込ませ…

靴のつま先部分まで汚れ落としをキッチリ行います。

靴中の深いところまで汚れ落としができ、同時に保革・防カビ成分を行き渡らせることができます。

両足ともレザリアンローションでのケアが終わったら、数十分程度時間を置き、ローションの乾燥を待ちます。

以上でインソールとライニングのケアは終了です。
定期的にホコリを除去して、保革すれば、靴の内側も美しく清潔な状態に保てます。

革靴の靴底(ソール)のお手入れ方法
靴底もまた、メンテナンスすべき箇所です。
革靴の靴底として、革底(レザーソール)が使われている靴は結構あります。
一般的に高級といわれている革靴ほど、レザーソールの場合が多いと思います。
レザーソールはその名の通り、革製。
履いていくうちに汚れは溜まるし、乾燥もします。
レザーソールにもケアが必要ということです。
特に、レザーソールは地面と直に接するため、乾燥は厳禁。
乾燥したレザーソールはしなやかさがないために、地面との摩擦でガリガリ削られやすくなります。
ソールを保護する意味でも、お手入れすることが大事です。
少し特殊な道具を使ってお手入れすると仕上がりが良くなるので、その点についても詳しくご説明しますね。
- ホコリ・小石落とし
- 汚れ落とし
- 保革クリームを塗る
- ソールの毛羽立ちを寝かせる
では早速、ケア方法のご紹介へ。
こちらのレザーソールをお手入れしていきます。

革底の靴は履いていると地面との接触で削られ、写真のように毛羽立ってきてしまいます。
それによって地面との摩擦がより発生しやすくなり、連鎖的にレザーソールが削れていく現象が発生します。
地面との摩擦を抑えるためにレザーソールの毛羽立ちを解消することが必要です。
そのためのレザーソールケア。
ホコリ・小石落とし
まずは革底に付いたホコリや、ソールに埋もれた小石をブラシでかき出します。

タワシである程度ブラッシングしたら、再度、馬毛ブラシでブラッシングします。

タワシで小石やゴミ、馬毛ブラシでホコリを落とします。
ちなみに僕の場合は、レザーソール専用の馬毛ブラシを用意しています。
気分的にアッパーのホコリ落とし用の馬毛ブラシとの共用は避けたい思いがあります。
汚れ落とし
一連のブラッシングが終わったら、クリーナーでレザーソールの汚れを落とします。
汚れ落とし用クロスにクリーナーを染み込ませ、ソールをふきふき。

毛羽立っているので液が染み込みやすく、クリーナーが伸びにくいです。
クリーナーはアッパーを手入れする時よりも少し多めに取るようにしましょう。

ソールは靴のあらゆる部分でダントツで汚れやすい箇所。
ガッツリ汚れが取れています。

クリーナーで汚れ落としが完了しました。
保革クリームを塗る
続いて、保革クリームでレザーソールに油分を与えます。
今回、保革クリームとして使うのはM.モウブレィのソールモイスチャライザー。

外から油分を与えることで乾燥から革を守る効果があり、同時にソールにしなやかさを与えて靴の返りを良くする効果もあります。

ソールモイスチャライザーをペネトレイトブラシに適量取り、靴底全体にクリームを塗り込んでいきます。

塗布後の状態がこちら。

この段階でも潤い補給という点では十分ではあるんですが、もうひと手間加えます。
ソールの毛羽立ちを寝かせる
最後に、ソールの毛羽立ちを寝かせます。
…その前に、使用する道具をご紹介します。

こちらは「アビィ・レザースティック」というケア用品。
水牛の角から作られたものです。
本来、馬革(コードバン)をこのスティックで押し込んで「銀浮きを解消する」という物なんですが、レザーソールの手入れにも使用することができます。
レザースティックでソールを押し込むことで毛羽立ちを寝かせるわけです。

ただ、このまま使うとソールのデコボコでスティックの表面が傷ついてしまいますので、布で包んで傷が付くのを防ぎます。

そして、少し力を入れながらソールを押し込むようにこすります。

縦に、横に、円を描くようにこすっていきます。
あらゆる方向から毛羽立ちを寝かせていくイメージです。
革の毛羽立ちを寝かせた後の仕上がりはこんな感じ。

寄ってみると…

光を反射しています。
革が詰まって、引き締まっている証拠です。
新品の美しさとは違いますが、このツヤもまた美しく、魅力を放っているように思います。
これにてレザーソールのお手入れは終了。
毛羽立ちを抑えて削れを防止、かつレザーソールに栄養補給も行えました。



革靴をトータルケアして長持ちさせよう!
本記事では革靴の部位ごとに3種類のケア方法をまとめました。
革靴は外側(アッパー)・内側(インソールやライニング)・靴底(ソール)でそれぞれお手入れ方法が異なります。
それに伴い、使う道具にも違いがあります。
各部位でのケア目的を意識しながら、革靴のトータルケアを行えばお気に入りの靴をより長持ちさせることができます。
普段から靴磨き、つまりはアッパーのお手入れのみ行っている方も、靴の内側や靴底のケアもあわせてやってみてください。
それでは、今回はこの辺で。
少しでもご参考になれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました!










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